四大聖戦:第一戦闘フェイズ【熱砂漠の間】

抗いしは光焔の勇者 @Kouen_Hi 対するは颶風の魔王 @DeathWaltz_doll
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颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「……あつい、…かしら」 茹だるような炎天下の中、人形少女は小さく呟きます。 誰にも見つからなかった、最後の扉。結論として、それはあの城の空にありました。 それは目立つ場所にあるにも関わらずその存在を消し、ひっそりと、ひっそりと、その不気味な姿を晒していたのです。

2014-09-28 19:11:34
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

美しい空にこんな仰々しい扉をこさえてしまうなんて本当に悪趣味な事だと、扉を見つけた時少女は真底うんざりしました。 けれども女神に対して悪態をついている暇はありません。勇者よりも早く先回りして、ふんぞりかえって待つのが魔王の使命だというよくわからない価値観が少女にはありましたから。

2014-09-28 19:12:34
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

ノブを捻り勢い良くそこに転がり込んで、暗闇の中を進むこと数分。 漸く見えてきた世界はそれまでの闇と違いあまりに眩しく、あまりに暑いものでした。 何処までも続く砂地、雲一つなく太陽だけが存在する空、それが辿り着いた世界の全てでありましたから、少女はまたもうんざりした気分になりました

2014-09-28 19:16:45
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…見晴らしはいいけど、これでは相手からも丸見えだわ。玉座もないし、勇者が来た時に万全の体制でお出迎えできないじゃないか」 これでは勇者からしてみてもわくわく感半減に違いありません。 せっかく自分の元に御足労してくれるのですから、せめて少しでも魔王っぽくあろうと少女は腰掛けました

2014-09-28 19:18:20
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

宙に浮く豪華な玉座に優雅に座り、威圧感を出しながら勇者を見下ろす……少女の中ではそんなかっこいい自分が演出されていましたが、もちろん玉座なんてないので空気イスです。 ふよふよと空気イスの状態で偉そうに浮かぶ姿は中々にかっこ悪いのですが、生憎少女はその事に気づきませんでした。

2014-09-28 19:18:34
光焔の勇者 @Kouen_Hi

とぼとぼと歩いてくる男性。 笑いかけ、名前は?などと気楽に話しかける。 「ずいぶんと暑いことだね」 太陽を軽く指差して小さく口をすぼめた。 「逃げまわっても無駄ってことかな、お互いに」

2014-09-29 00:34:51
光焔の勇者 @Kouen_Hi

うらやましいな、と苦笑して 「空を、飛ぶのか?……いい空だな、僕は嫌いじゃないよ  こういう何にも遮られずに見上げれる空ってのはさ」

2014-09-29 00:35:46
光焔の勇者 @Kouen_Hi

「……ああ、名乗っておく。雨海の勇者だよ、よろしくね」 軽く手を差し出して、引っ込める。 「親睦を深めるのもどうかと思った。ごめんごめん  じゃあ、初めようか。他に質問はあるかな、魔王さん」

2014-09-29 00:35:59
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「わっはっはー、よく来たな勇者よー。ご苦労ご足労であったぞー」 砂漠の隅から此方へと向かう小さな人影を目にした少女は、これとばかりにゴホン、ゴホン、と咳払いをしてから偉そうに言い放ちます。 けれどもやっぱり棒読み気味なので、少女の想像するような威厳はカケラほどもありません。

2014-09-29 09:04:33
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

現れた青年は見たところとても人当たりの良さそうな顔をしていたので、最近は勇ましい勇者よりもこういう優しい系が流行っている様です。そんな勇者から発された彼の名前に、少女は小さく首を傾げました。 「…うかい、…鵜飼?お兄さん、鳥さんを飼ってるのね」

2014-09-29 09:04:47
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

うんうん、と間違った方向へ納得してしまった彼女は、大好きな赫焉の魔王から借りているその外套を大きく広げます。 精いっぱいの、魔王らしさの演出。そして少女は再び偉そうに声をあげました。 「やぁやぁ我こそはー、ぐふーの魔王なるぞー。……質問は、そうね…ねぇお兄さん」

2014-09-29 09:05:11
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

静かな砂漠に、生き物と無機物が入り混じった歪な羽が広がる音が響きます。 黄昏色の瞳はまるでガラス玉の様に輝いて、小さな人間を見下すように。 「「縫い目の無いシャツを、私にくださるかしら?」」 たった一つの人形から発された筈の声は、何故か何重にも重なって聞こえてきました。

2014-09-29 09:05:34
光焔の勇者 @Kouen_Hi

子供のごっこ遊びのような演出にはくすりと笑い、 「鳥は隣の家の叔父さんが飼ってたよ  たしか、ニワトリとチャボだったと思う」 さて、どうだったかなと思い起こすように首をぐるりと回して、

2014-09-29 12:05:59
光焔の勇者 @Kouen_Hi

「愚かな風、でぐふーかな……うん、魔王という感じの名前だね」 大きく頷き、 「縫い目のないシャツ……音が、重なって……?」 それと同時。

2014-09-29 12:06:06
光焔の勇者 @Kouen_Hi

太陽が、降ってきた。 正確には、太陽に合わせ指差した時に出現した光の粒の塊。 熱を抱きそれは、広がりながら、降ってくる。 「同時に動いちゃいけないルールはないからね」 颶風に触れれば小さな火傷をする威力の光の粒が10層にも重なっている。それが、颶風の表面積分。

2014-09-29 12:06:14
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「「…そう、縫い目の無いシャツ。スカーバロの市へ行くんでしょう?縫い目の無いシャツを、水の枯れた井戸で洗ってくださいな」」 幾重にも重なる声で、少女は勇者にそう告げます。 不可能な願い。意味のない言葉。 それは悪魔との問答歌でした。 この場合は、魔王との問答歌となるのでしょうか。

2014-09-29 13:37:48
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

声高に問いを続ける少女に、ぐわり、と光が襲いかかります。 少女はそれをよけるより前に、大事な外套を守るように抱きしめて縮こまりました。 歪な羽たちが更にその小さな身体を包み込み、歪んだ球体のような形をつくると、その球を軸にするように、突風がおこります。

2014-09-29 13:38:08
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

空気の壁とも言えるそれは、襲いかかる光のうち、幾らかの軌道を逸らさせました。 火の粉の様に周りに飛び散る光。 けれどもそれは全てではありません。 軌道を逸らせず少女に降り注いだ光は、容赦無く少女の身体を焼きました。 「…お兄さん、嘘つきだね」

2014-09-29 13:38:26
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

熱でヒビが入ってしまった陶器の肌を歪めて、少女は笑いました。 真っ黒な外套は、大事に、大事に、抱きしめたまま。 「…雨海の勇者なんて、嘘ばっか。ブラフのつもり?それとも本当に、雨も降らせられるのかしら?」

2014-09-29 13:39:09
光焔の勇者 @Kouen_Hi

「嘘つきか。うん、勇者の僕は僕自身に嘘をついているからね  雨海の勇者は海の土地を耕したりもしないし  枯れた井戸には雨が降ったこともない」 頭の後ろを擦って言う。両目はしっかりと颶風の挙動を観察していた

2014-09-29 15:03:56
光焔の勇者 @Kouen_Hi

「……精霊様が魔王に奪われたせいで自然が荒れ、砂漠の大地には太陽すら降った  だから君には優しくできない  僕は、君だけは助けることができない」 瞳は何も、光すら映さず

2014-09-29 15:04:02
光焔の勇者 @Kouen_Hi

「改心して平和な世界と豊かな自然を取り戻してくださいな  どちらにせよ、僕は颶風の息の根を絶対に止めるけど」 後頭部に手を置いたまま、顎をついと上げる。 「この提案が僕自身無理に聞こえないのは、魔王の悪のほどを甘く見てるのかな、どうだろ?」

2014-09-29 15:04:06
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「貴方達っていつもそう、嘘、偽善、傲慢ばっか……だから嫌い。仲良しの時期もあったけど…先に裏切ったのはそっちの方だったわ」 勇者の言う平和な世界も豊かな自然も、少女にとっては興味も湧かない事です。それが叶うと言うことはつまり、自分達にとっての平和を捨てる事に他ならないのですから。

2014-09-29 16:01:23
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「お前好みの心を抱くつもりもないし、お前が勝手に決めた僕の悪がどれほどだろうと正直どうでもいいんだ。ただいちいち戯れてくるのは非常に煩わしいから、躾けてあげなきゃ」 轟々と轟くは風の音。 少女を中心に巻き起こったその風は砂を巻き上げ、視界を阻みました。 「…音楽は、お好きかしら」

2014-09-29 16:02:17
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

人形らしい無機質な笑みを浮かべて、少女はその小さな口を大きく開けました。その奥の喉から溢れ出したのは、音。 音とは、空気の波。振動。 声とも音ともつかないそれは、風の力で何倍にも膨れ上がり、揺れ、奏で。 幾重の層にもなり、脳を揺さぶるように辺りに響き渡りました。

2014-09-29 16:02:34