不知火に落ち度はない　お正月スペシャル２０１５　その１

yamoto @yamoto

「なんとかなるわよ、なんとかね。陽炎さんに任せなさい」 「へーへー。頼りにするわ、秘書艦殿」 すっと手袋が外されて。 左手の薬指をこちらに向けている陽炎。 「ねえ」 「なんだ？」 すっと、指輪を陽炎の指にはめてやりながら言葉を返す。 #不知火に落ち度はない

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「えっと。次は、ちゃんと気持ちよくしてくれるんでしょ？ これで繋がればいろいろわかるんだから」 「……ぷっ」 ははははは。 おいおい、まさかこのタイミングでそれ言うか？！ 「あ、こら！！ 笑わないでよ！！」 無理だって マジ無理だって。 #不知火に落ち度はない

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「オッケーオッケー、じっくりたっぷりそんときゃ可愛がるさ」 「……むー」 むくれた。笑ってしまったのが良くなかったらしい。 「じゃ、言うぞ。俺の宣誓の言葉を復唱してくれ」 「うん、お願い」 これは儀式。キー解除のための祝詞。 #不知火に落ち度はない

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まあ、ここは略式でも十分なんだがな。 適当に並べた言葉を復唱し、最後の肝心の部分を告げる。 「死が二人を分かつまで」 「死が二人を分かつまで」 するとリングにすっと光が灯り。 そして── #不知火に落ち度はない

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24：00 「うーうーうーうーうー」 「ま、まあ。まあまあ。不良品かもしれんし」 先程からウーしか言わないおもしろ陽炎が居る。 「何で失敗しちゃったのよー」 「えーと、あれな……あれはな」 実は使用条件が結構厳しいのだ、このリング。 #不知火に落ち度はない

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陽炎の場合はおそらく練度不足。 それなりにがんばっちゃいるが届かなかったようである。 「せっかく勇気出して頑張ろうって思ったのにい……」 「まあ、まあ。感謝してるって、ホント」 実際こいつの行動がなきゃ指輪は捨ててたかもしれんし。 #不知火に落ち度はない

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「しょんぼりでがっかりー。可の印を押された感じだわー」 「ああ、あの実質不可ってやつな」 陽炎の時代だと、評価は３段階の「優・良・可」である。 義務教育有料化 というジョークがそいや当時あったな。 「むーむーむーむー」 「そんなむくれんなって」 #不知火に落ち度はない

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「だってー。何考えてるかもわかるんでしょー？」 「まあ、そうなるな」 ギンブチがそう言ってた。 感覚遮断を使わないとあらゆることが筒抜けになると。 「じゃあ、長門さんとなにしてたかもわかるじゃない」 「やめよう。それはあまりよくない」 #不知火に落ち度はない

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長門と特殊部隊ごっこしてたとかまで知られたくないしー。 ホノルルマラソンの現場とか見られたくないしー…って痛ててててて！？ 陽炎ほっぺた引っ張るのなしで。 「ほらやっぱり！ やらしーことしてたんでしょ？」 「むーむーむーむー」 「真似しないの！」 #不知火に落ち度はない

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「いや、昔の話だぜ？」 ちょっと嘘です。 最近までちょくちょく「する」だけは「して」ました。 それを素直に言って喧嘩売るこたぁねえだろ。 「ふーん？ ほんとにそうなのかしらね」 「そうそうそうそう」 「ジャケットからホテルのマッチが出てきたし」 #不知火に落ち度はない

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「ああ、それは今度使おうかと」 「誰とよ！」 偉い剣幕であるがまあ、おちつけ。 「陽炎とだが」 「っっ！？」 ぼん、と再び真っ赤っ赤な陽炎様参上である。 よし、なんとか誤魔化せた気がする。 ブリキン不知火と違い、細かいことは気にしないのが陽炎だ。 #不知火に落ち度はない

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や、怖いんだぜあのブリキン。 ちょい調べるの一言で、軍用回線ハックまでやってのけるんだ。 しかも些細な言い間違いを一切逃さない。 どこの探偵だと言いたくなるレベルだ。 おかげで随分助けられたが、陽炎に長門情報を流したりしたのも不知火だったりする。 #不知火に落ち度はない

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「ん？ 何か想像した？」 「べべ、別に平気だしっ？ か、かわいい下着とかっ…も、持ってるし？」 面白いよな陽炎。 こうして情報がポンポン出てくるんだぜ。 「じゃ、指輪がちゃんと使えるようになったら行こうぜ」 「へ？ ……う、うん」 こくこく頷いた。 #不知火に落ち度はない

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「じゃ、それまで預かっておいてくれ」 「え、いいの？ 司令」 「予約済みってことで」 「オッケー！ ……予約済みね♪」 薬指にはめた指輪を見て、なんだか楽しそうになる陽炎が居る。 にやけたり、にやけたり、にやけたりと大変表情豊かである。 #不知火に落ち度はない

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「ねえねえ、司令司令」 「はいな、なんでしょうか」 「オッケーになったらね……」 すっごーい、えっちなことしたげる♥ あらやだ、お待ちになって陽炎さん。 もう俺落ちたロリコンだからしょうがねっすけど、鼻の下伸びるようなこと言わんでください。 #不知火に落ち度はない

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「そいつは楽しみだ。じゃ、酒注いでもらえるかい？」 「はいはい。今日はそれだけで勘弁してね」 なるほど。そういう意味でこのカッコなわけね。 ……。 パジャマでしちゃうってのも、実はいいものだと知らぬのだな。 は、邪念が。 悪魔よ去れ。 #不知火に落ち度はない

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そして、とぽとぽとグラスに酒が注がれ──今日は平和に終わりましたとさ、と言いたかったんだけどな。 そこでビー、ビーと警報音が鳴り響き出す。 うっそ、まじで。 「深海棲艦指数８８。警報発令！」 「マイク入れろ。くっそ、ほろ酔い加減が台無しだぜ」 #不知火に落ち度はない

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『あー、基地の諸君。寝てるトコ悪いが哨戒班以外も起きてくれ。敵艦多数接近中だ』 モニターの上に赤い点が50を超えて浮かんでいる。 笑えないだろ？これ全部深海棲艦なんだぜ。 偵察した、と思いきやこっちがされてたみてぇだな。 #不知火に落ち度はない

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そして寮の方には明かりが次々付いて、夜の鎮守府に獣の声が響き渡る。 「やっせーん！！！！！！」 真性の夜戦バカ、川内である。 お前ほんっと元気だな。昼間出たばっかだぞ。 神通もその後に続いていた。 #不知火に落ち度はない

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「じゃ、よろしく頼むぜ陽炎。終わったらまた一杯酒注いでくれ」 「了解ー！ 哨戒班出撃準備をお願いします！ また、これより川内さん旗艦の水雷戦隊を再編します。2番ドッグにメンバー集合！」 基地内放送に陽炎の声が乗る。 キビキビしたいい声だ。 #不知火に落ち度はない

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「関係各所に連絡、海域封鎖を要請、支援物資申請」 「了解！ モグリさんとギンブチさんところには？」 「狩りの時間だ、って伝えてデータ送ってやれ」 「りょーかい！」 さってと。楽しくなってきやがったな。 #不知火に落ち度はない

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んじゃ戦争を始めるとしましょうか。 そんなわけで今日はそんな日。 陽炎に指輪を渡し、しかし失敗し。 そしてたくさんの来客を迎えた日。 そんな一日が始まるのであった。 #不知火に落ち度はない

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不知火に落ち度はない -IF- 『陽炎だけど文句ある？』 おしまい。（続かない） #不知火に落ち度はない

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はい、そんなわけで新年早々寝落ちしましたが、落ちぬいスペシャルお楽しみいただけましたでしょうか。 世界線を超え、不知火より先に陽炎が着任し、秘書艦になってたバージョンのストーリーでした。 不知火より先に来てるとこんな感じで、仲良くなるそうです。 #落ちぬい