不知火に落ち度はない 33(第十七駆逐海賊団編 その1)

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不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「だが、仲間を助けることに関しては、ウチの浜風のためにって部分がわりとある」 司令官として合理的に考えると、助けに行く義理はない。 アウターヘブンの進行が始まれば、どうやってもあの3名は『救助』される。 『鎮圧』でも『撃退』でもなく『救助』である。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 22:47:34
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そも、アウターヘブンは、ああいう訳ありの艦娘の集まりである。 決して悪いようにはされないし、場合によっては俺が拾うよりずっといい結果になることだってある。 だが、こうして俺が乗り出したのは、浜風という存在がウチの基地に居たからに他ならない。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 22:50:04
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そのために軍は動かしちゃやれねえが、俺個人はこうして動いてるわけで。 矛盾してるなあ、とは思うのである。 これが長門の言ったへたれ、ということに該当するなら、間違いなくへたれだな。 うん。司令官として、ってことを掲げるわりに、情に流れてんだもんよ。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 22:51:29
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「つわけで、浜風が思ってるより俺、普通だぞ。色々抱えとかなきゃ、ぼろぼろ崩れるような矛盾ありありだ」 ああ、なんつうか。良かったな。 囁くような声でしか、こんなこと言えんわ。 「あんなに無茶苦茶できるのにですか?」 「おう。できるのにな」 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:01:35
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そんな大火傷しても涼しい顔してるのに、ですか」 「そこ不思議だよな。もうちょっと何かあってもいいはずなんだが」 残念。ないんだわな。 ちと身体が痛んで、湯治がたまに必要で、不都合といえばその程度で。 「ほんと、いろいろおかしいですよ。兵頭さん」 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:04:40
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ぽつぽつと、暖かい感触が腕に当たる。 浜風の涙だった。 はて、泣かれる要素って今の話にあったか? 「あーと、浜風?」 「あ。これ……これは、違うんですっ」 慌てて浜風は腕を放し、こしこしと自分の顔を擦って泣き顔を隠す。 おい、それ目が腫れるやつ。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:10:43
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「えっと、これはですね……あの、なんだかその。変に安心して……その。悲しくなったわけじゃ無いんです、ああ、もう」 「わかった。わかったから」 とりあえずハンカチ使えって。ほら。 目腫れたまんまで、上陸されたらなにやったか突っ込まれるし。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:12:33
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それからしばしの間、浜風は涙をぬぐっては、違う、違うと言ってるわけで。 なんとも面白い奴である。 浜風はいろんな意味で純粋な奴なのかもしれん。 独善的で、しかし未熟で、感情に振り回される。 嘘もつけるが、嘘を嫌う。 そんな矛盾を抱えている。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:17:30
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ま、だが、ひとまずあれだ。 経緯はいろいろあったし、決して望んだ状態からの話では無かったし、俺がした話は決して快いものではなかった。 ただ、なんかこう、救われた気はした。 この鼻まで赤くして泣いてる浜風に、なんか救われた気がしたのである。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:19:58
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

だから、あえて浜風が怒っていた要因の一つは言わない事にした。 同時に感謝を示すために、頭を抱えて撫でてみたわけで。 「え、ちょっと……だ、だから違います…って」 「そうかもな」 抵抗するが無視無視。 人間、そういうことはある、というやつである。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:26:19
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「兵頭さん……」 「何だ、浜風」 「そろそろ、やめてもらっていいですか」 「なんだ。もういいのか?」 「いいも何も、最初からいいって、言ってません」 しばらく後。浜風は半目でそういうわけで。 ははは、こやつめ。30分ずっと撫でられておいて言いよる。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:30:03
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、空気はだいぶん先ほどより生暖かい。 インモラル空気ではなく、頭を撫でてるムツゴロウさん的空気の方が勝ったのだろう。 おかげで浜風は、子供扱いされたと思ったのか俺の手から離れると窓の外を向いて、再び頬を膨らませていた。 フグ風復活である。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:32:59
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ただまあ。 「浜風。ドリンクサービス何がいい? 俺はビール頂くけど」 「カルピスでお願いします」 むくれながらも、それなりに返答を返すのは、多分気恥ずかしいのだと思いたい。 つつくと噛みますよ、と威嚇はしてくるけども。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:41:28
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんな機内の時間はもうすぐ終わる。 「あ……見えた」 「おう。あれがセブ島な」 窓の外に見えるのは、いくつも並ぶ島々。 マクタン・バンタヤン・マラパスカ・オランゴ。 それらに囲まれて立つセブ。 フィリピン中部のビサヤ諸島。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:56:29
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「あのどこかに、磯風達が」 「おう。どこだかわからんけどな」 ここからはレイテも見えた。 あっちは深海棲艦の出るエリアらしく、近づく者は誰も居ない。 空から見れば、なにもない綺麗なフィリピンの海なんだがな。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:56:39
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「必ず、迎えに行きます。待ってて、磯風、谷風、浦風」 「そうな。こっからは時間勝負だ。どうにかするぞ」 「はい。兵頭さ──いえ、了解です提督」 よろしい。 着陸後、状況開始。 『第十七駆逐隊救助作戦』第一段階。 セブ島周域の探索を開始する。 #不知火に落ち度はない

2015-03-03 23:58:50

あとがき&おまけ

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんなわけで第一フェイズ終了。 続きはまた次回更新にてお届けします。 どうぞよろしくお願いしますわ。 予想外に浜風が責めてきたし、コインがあらぶった。 #落ちぬい

2015-03-04 00:00:07

おまけ(セブ島事情)

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

あ、そうそう。フィリピンのセブ島なんですが。 ここ、近くにレイテとかある島なんです。追っ手を巻くのに最適なところでしてね。 しかも表向きは観光名所ですが、実は裏の顔もある面白い島です。 #落ちぬい

2015-03-04 09:19:18
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

2012年の記事ですが、ごらんください。 密造銃の島であるセブ島としても知られ、日本の暴力団やロシアンマフィアからがお買い物に来るショッピングタウンとなっています。 commonpost.boo.jp/?p=41921 #落ちぬい

2015-03-04 09:21:31
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、軍関係者、警察関係者なども利用していることから、一朝一夕には根絶できないとのことですが。 だからっつって、堂々持ち歩いてたらもちろん捕まるよ。(ここ重要) #落ちぬい

2015-03-04 09:23:32
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