@kankyoizon2 → 「――と、そう考えてみると、今回の件に関しては私の責任ですね。ヒヅメさんは私を恨む権利があるわけです」 後ろ首に手を当てて、情けなく笑う。笑みを張り付ける。
2015-07-29 21:14:29@KiryuTouya ヒヅメ】「……貴殿は父との約束を、反故にしました。何時、自分の判断が間違っていたと思いましたか?」 見つめ直すことはしない。雨粒が落ちる様子を見ている。
2015-07-29 21:18:35@kankyoizon2 桐生】「殺めた異能者の遺族……一般市民からの怨嗟を強くぶつけられた時ですかね」 優しく微笑む。 「貴女が私を蔑もうと、失望しようと、構いません。ただ、私が私である事を曲げない為には、どうしても知る必要があったのです。非暴力主義者の、思想を」
2015-07-29 21:24:23@KiryuTouya ヒヅメ】「吾が聞いているのは、何時チョークを殺さない判断をしたことを、後悔したか、ということです」 彼の言葉は頭をすり抜ける。自分の心変わりを正当化でもするつもりだろうか。
2015-07-29 21:28:30@kankyoizon2 桐生】「そうですね。今となっては、K子さんの件で殺しておくべきでした。そうしていれば、死なずに済んだ命がいくつもあります」 淡々と答える。
2015-07-29 21:30:44@KiryuTouya ヒヅメ】「貴殿が自分の判断が間違っていたことを自覚したのは何時なのかと聞いているんです」 声に苛つきが混じる。 「……貴殿の恋人が死んだ時ですか?」
2015-07-29 21:35:40@kankyoizon2 桐生】「正確には、脱獄後ハイジャックを起こした時点で、です」 雨に溶かされ、だんだんとメッキが剥がれてきた。盲信という薄っぺらい外枠が剥落し、"地"が見えてくる。 「"時期"がそんなに大事ですか?ヒヅメさん」 お決まりの、いつものパターンだ。
2015-07-29 21:39:09@kankyoizon2 「あなたの言いたいことは、"そんな事"じゃないのでは?言いたい事があるならハッキリ言った方がよいですよ」 一拍置いて、 「――今夜、最後まで立っている者が複数人居るとは限らないのですから」
2015-07-29 21:41:35@KiryuTouya ヒヅメ】「ハイジャックを起こしていたとは知りませんでした。チョークは呆れた男です」 少し微笑んで、 「恋人のことを知っていること、貴殿は驚かないのですね。吾はずっと病院に居たのに」
2015-07-29 21:42:22@kankyoizon2 桐生】「狭間駿が居ますし、世界さんも負けじと劣らない情報通のようですので」 今や情報に価値は無い。幕辺《みうち》に疑念を孕んでいる今、全てが敵に見える。 『貴方の味方なんて居ませんよ。何処にも』 幻影がまた囁く。頭が痛む。
2015-07-29 21:47:18@KiryuTouya ヒヅメ】「成る程、其れはそうですね」 彼を追い抜くようにして、階段を登り始める。 「……貴殿は言いました。失われた時間を取り戻す、と。貴殿はこの状態からどのように、失った恋人と過ごすはずだった時間を取り戻せると考えますか」
2015-07-29 21:52:35@kankyoizon2 桐生】「死んだ者は取り返せません。唯一出来ることは、現在の脅威を払う事で次に掴む時間を失われないようにすることだけです」 そのために異捜は存在すると、確かに自信を持って。
2015-07-29 21:54:50@KiryuTouya ヒヅメ】「心が強いのは、貴殿の良いところだと思います。貴殿の恋人も、きっと、貴殿が元気で喜んでいますよ」 階段をどんどん上がっていく。
2015-07-29 21:57:37@kankyoizon2 桐生】「貴女はひとつ勘違いしています」 カンカンカン。足早に登り、再び彼女を追い抜く。 「強いのではなく、"そうせざるを得ない"のです」 今この目に見えるのは、宙に浮かぶ幻影。 「怯え、悲しみ、迷い。私にだってその程度の感情はあります」→
2015-07-29 22:02:58@kankyoizon2 → 「ですが歩むことを止めれば、取り戻すことを諦めれば、我々異能者に待っているのは死ではなく"発狂"です」 力が暴走し、理性《エゴ》を失い、本能《イド》の奔流が全てを飲み込む。腐るほど見てきた光景がフラッシュバックする。
2015-07-29 22:05:06@kankyoizon2 桐生】「私の父と母は異能発狂で亡くしました。上司の同僚も、斑鳩の恋人もその時に……あの日が無ければ、私の人生は今とは全く違うものになっていたでしょう」 前髪に垂れる滴を撫で払う。 「発狂は死よりも多くの運命を狂わせる。だから私は"異能"が許せない」
2015-07-29 22:10:46@KiryuTouya ヒヅメ】「……」 昔の自分なら、心が動いていたのだろうな、と思う。 「あの時吾がチョークと戦うのを止めたのは、其れを切っ掛けに吾が発狂するのを恐れた為ですか?」
2015-07-29 22:16:02@kankyoizon2 桐生】「それもあります。如何にヒヅメさんと言えど、発狂すれば排除しなければなりませんから」 ですが、と前置いて、肩越しに振り返る。 「それ以上に、貴女が殺されてしまうのが嫌でした。"市民"を守るのが私の仕事ですしね」
2015-07-29 22:21:04@KiryuTouya ヒヅメ】「吾は貴殿が、吾の為に傷つくのが嫌でした」 ぽつりと語る。 「信用など無かったのですね……、貴殿が仕事なら、吾は『矜持』の為に貴殿を守ろうとしたのです」
2015-07-29 22:25:30@kankyoizon2 桐生】「悪かったと思います。しかし、矜持と天秤にかけても傾くのは命です。勇んだ仲間が目の前で次々死んでいく場面を何度も見てきました」 信用の有無ではないと、言外に告げる。 「……今は、"どう"なのですか?貴女が此処を登るのは、矜持の為?」
2015-07-29 22:28:52@KiryuTouya ヒヅメ】「吾の生の意味の為に」 迷わずに答える。かぶったフードの下から双眸が、彼の方を覗く。たくさんの意味を込めたその言葉は、彼に届くだろうか。
2015-07-29 22:31:28