- kankyoizon
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ヒヅメ】(何も、出来なかった) 悪意に呑まれ殺されることも。悪意に呑まれ殺すことも。 彼が、否定してしまった。自分の中の善意を、再び呼び起こしてしまった。
2015-07-31 20:03:12世界】「――♪―――♪」 鼻歌を歌いながらたんたんと階段を上がる。酷い雨の中開いていた傘がびっちょりと濡れていたせいで道をつくる。それが鬱陶しくなって適当に放り投げた。
2015-07-31 20:04:45ヒヅメ】ピアノの音も耳に入らず、ただそこに居る。柵の向こうの闇を見るように。光を失った空間で、彼女はただ、嗚咽のような声をあげていた。
2015-07-31 20:05:21世界】指をパチリとならして使った異能を解く。あの彼は、生き残っただろうか。しかしそれを確認することはせず、今度は踵を返して舞台へと向かった。
2015-07-31 20:06:25@tometis_story ヒヅメ】「なにもっ……、なにもできな、かっ……」 しゃくりあげながら言う。 「悪、にも、善、にも、なれずに、……」
2015-07-31 20:11:46@kankyoizon2 @goga_tis チョーク】「それらに――!」男が奥歯を一度噛む。その後、がくり、と首がうなだれた後、ゆっくり顔を上げる。ピアノは引いたままだ。曲題は、ベートベンピアノソナタ第一楽章。
2015-07-31 20:17:12@tometis_story @kankyoizon2 世界】ぽたり、水がぼとぼとと音をたてて落ちた。舞台に立つ二人を見る為に、最も良い観客席に移動しよう。
2015-07-31 20:19:03@tometis_story @goga_tis ヒヅメ】「どちらか、でないと、どちらにもっ……受け入れてもらえない、そうでは、ないかっ……」 切り替わりには気づかない。声はか細くなっていく。 「いや、……受け入れてもらえた、としても、吾は、自分が許せない……」
2015-07-31 20:20:58@kankyoizon2 @goga_tis チョーク】「私や桐生に受け入れてもらえるという事、善悪の偏り、ですか」ピアノの手を止めて、立ち上がる。
2015-07-31 20:43:44@tometis_story @goga_tis ヒヅメ】「許せない、……悪として、桐生さんに、殺されることも、……善として、チョークに、殺されることも、……出来ず、……善を愛しきれず、悪に染まりきれず、」
2015-07-31 20:50:13@tometis_story @goga_tis ヒヅメ】「ただここにいる、だけの自分が、吾は、許せない……」 がくりと肩を落とし、地面を見る。コンクリートの床に、水が流れていく。
2015-07-31 20:51:20@kankyoizon2 @goga_tis 白磁】「悪にそまれず、善にそまれず。だが、そこに立っている御前を、御前は許せないのだな」
2015-07-31 20:53:05@kankyoizon2 @goga_tis 白磁】「貴様は、己を半端者な位置にある事を是としなかった。許しを得ず、乞いもせず、だが、望んだのだろう。何のために、己が為か、他者が為か。誰がためか。それはどこに位置し、何を指すのか。己の価値と、意味とは、果たして何か」
2015-07-31 20:54:17@kankyoizon2 @goga_tis 白磁】「――しかし、御前はその立場に囚われすぎた。故に、欠如している。分かるか」
2015-07-31 20:55:05@tometis_story @goga_tis ヒヅメ】「許せない、……こんな、無為な存在を、吾は許せない、ぃ、……」 情けなく惨めだ、とヒヅメは泣いた。隠すことは、出来なかった。
2015-07-31 20:56:57