- tasobussharima1
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高度、400km。軌道傾斜角、約97度。太陽同期軌道(SSO)上。 およそ90分で地球の周囲を公転する人工衛星。嘗ての、対地観測用仏舎利衛星の生き残り。 徳カリプス後、人からも機械からも見放された天空の眼。その一機が今、まさに徳島の上空を通過しようとしていた。
2016-05-18 21:04:04もしかして、タイプ・シャカニョライが展開した徳エネルギーフィールドは上空方向にも広がっている……!?だとすると仏舎利衛星がこの位置にいるのは激しくまずい! #徳パンク
2016-05-18 21:06:43カメラが映し出すのは、得度兵器達の活動を示す明かり。僅かばかりの人類の痕跡。そして、欠けた月のような形をした、直径数十kmの徳エネルギーフィールドが放つ桃色の光。 その中に映り込む、『巨大な手』の形をした影をも、宇宙から見つめる眼は確かに捉えていた。
2016-05-18 21:08:03あ、でもさすがに高度400kmだったら巻き込まれることはかないか……そこまで広くはない、よね……? #徳パンク
2016-05-18 21:08:40そして……その眼を、空の彼方で盗み見る存在達もまた。 大規模徳エネルギーフィールド。それは、アフター徳カリプス世界の今後を占うパラダイムシフトである。当事者達の思惑を他所に、その『イベント』を見逃すまいとする者/物達は、徳島の地へと観測リソースを集中している。 --------
2016-05-18 21:12:07この徳エネルギーフィールドの行方を見守る勢力が少なくとも複数。トリニティ・ユニオンの上位二人とか、地球に引き上げなかった宇宙植民者とか、いくつか思い浮かぶけど…… #徳パンク
2016-05-18 21:15:37悩んでも、何も変わりはしない。 『マロ』の手は、スイッチの上に置かれている。自分は最善を尽した。喩えその先に待っているのが破滅であろうと。足掻くことこそが、命の価値なのだから。 最初の『彼女』は、それをこそ愛おしいと感じたのだから。 「……麿は、何を?」 何かが、頭を過ぎった。
2016-05-18 21:16:04それを皮切りに、とうに摩耗した筈の過去生の記憶が次々と脳裏に蘇る。いや……果たしてそれが、自身の記憶であるのか。それを『マロ』に確かめる術はない。ただ、彼は奇妙な懐かしさだけを感じていた。 「これは、功徳に蓄積された情報なのでおじゃるか?」 功徳は、行動の記録(ログ)だ。
2016-05-18 21:20:03結局功徳情報理論はどこまで正しいのかも不明なんだよねえ。少なくとも「日記」システムが問題なく動作している以上は完全に間違っているわけでもないはずなんだけど #徳パンク
2016-05-18 21:23:25他ならぬ彼自身が唱えた理論。 空間に満たされた高密度の徳エネルギー。それに転写された記憶が、脳に逆流を引き起こしているのか。それは言わば彼の使う記憶の書き出し、『日記』の逆の現象だ。 情報は脳から溢れ、断片的な場面(シーン)だけが目の前を流れていく。徳エネルギーの見せる走馬灯だ。
2016-05-18 21:24:08「……不味い、でおじゃる」 意識が遠のきそうになる。過去に押し潰されそうになる。「不死者」故の特性か。それとも、濃縮された徳エネルギーが万人に起こす現象なのか。或いは、彼が危惧したように。これは何らかの『奇跡』であるのか。 それはわからない。検証することもできない。
2016-05-18 21:30:38