2022年6月27日

「骨みたいなものが…」住民の報告で哺乳類の激レア化石を発見!岐阜県瑞浪市の学芸員に発掘の舞台裏を聞いた

偶然こんな化石見つけたら絶対テンション上がる
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岐阜県瑞浪市のTwitter公式アカウント(@city_mizunami)が発信した、化石発掘のニュースに注目が集まっている。

一般の方から同市の化石博物館宛てに届いた「骨のようなものが並んでいるので見てほしい」という報告が発見のきっかけだった。

博物館の学芸員が半信半疑で現場に向かったところ、つながった背骨をはじめ、ろっ骨、足、かかとといった貴重な化石の姿が。緊急発掘を行った結果、化石の主は約1300万年前に絶滅した哺乳類・パレオパラドキシア(カバに近い見た目をしている)の仲間であり、ほぼ完全な全身骨格という激レアな化石だと判明した。

発見化石に近い仲間のデスモスチルスの復元画 提供:瑞浪市化石博物館

一連の発掘レポートツイートを見た人からは「保存状態美しすぎんか」「これぐらいきれいだと、素人が見ても化石だ!と気がつくね。すごい!」といった感嘆の声が寄せられた。

一連のツイートの投稿主である、瑞浪市化石博物館学芸員の安藤佑介さんに詳しく話をうかがった。

「えええっ!本当に化石じゃないですか」

化石発見時の様子を教えてください

発見時、現場には地元の方が3名いました。現地まで案内してくれた方が「違うかな、(化石じゃなくても)がっかりしないでね」と言っていました。

私も「まあ10ある連絡のうち、8割は化石じゃなかったということもありますから」と言いつつ同行しましたが、現地でつながった骨が目に入った瞬間「えええっ!本当に化石じゃないですか」と驚きました。ほかの発見者も「え?本当?やった!やっぱりすごいよね」と言っていました。

ちなみに発見者のうち一人は、瑞浪市の歴史案内ボランティアの会に所属していて、私が化石について詳しくお話したことや、展示案内・化石採集体験もしたことがありました。化石を見る目や知識が養われていたのだと思います。

普段から、化石発見についての問い合わせは寄せられているのでしょうか?

ときどき「化石が家にあるから見てほしい」「近くの川に化石らしきものがあるから見てほしい」といった問い合わせがあります。地域の博物館として、このような問い合わせには丁寧に対応しています。

それを継続した結果が、今回の成果につながったと思います。

今回の化石発見につきまして、期待される学術的価値・意義を教えてください

パレオパラドキシアの仲間は、これまでも日本各地で見つかっていますが、これほどまとまっていて、かつ生きていた時に近い骨の配置を保持した状態で、さらに保存状態も大変良いものは少ないです。

パレオパラドキシアの仲間は絶滅したグループであり、柱を束ねたような形の歯を持つなど、現代に生きる生物とは異なる特徴を持っています。いまだに姿や生態、どのグループに属しているかなどについて論争中です。今回の発見は、その一部の解明につながるかもしれません。

緊急発掘の様子 提供:瑞浪市化石博物館

また今回の化石は頭骨も含めた全身骨格のため、今後の研究によっては、生きていた時の姿勢や生態を復元するための貴重な資料になると期待されます。

瑞浪市で良質な化石が見つかりやすい理由は

ちなみに、瑞浪市では2020年にも、鰭脚(ききゃく)類※のほぼ完全な頭骨が見つかっている。良質な化石が見つかりやすい地質学的な特徴があるのだろうか。
※アシカやセイウチの仲間

瑞浪市から見つかる化石は保存状態の良いものが多いです。この地域には、砂や泥が比較的早く堆積した地層(かつて浅い海だった)があります。

生物が死後、砂や泥によって急速に埋没したため、真空パックのような状態で保存され、他の動物によって死体が食い散らかされたり、水流によって骨が破損したりバラバラになったりすることなくきれいに残りやすいのだと思われます。

発見された化石を運搬している様子 提供:瑞浪市化石博物館

瑞浪市では、他にもビカリア(棘を持つ巻貝)をはじめ、クジラやイルカの仲間、サメ、貝など主に海に生息する生物を中心に1500種類ほどが見つかっている。

今回見つかった化石は、一般公開される予定でしょうか

今後クリーニングを進め、全体像が明らかになった時点で展示したいと考えています。しかし、骨を覆う岩石が非常に多く、また貴重な部位があることからクリーニングには半年~1年かかると見込まれます。

今回の発見についてご感想を教えてください

最初に化石を見たときの印象は「保存状態が良好だから良い標本になるな」程度の感想でした。

しかし、その後化石を詳しく観察すると骨の各部位が残っていると分かり、さらに発掘中に頭骨も確認できたため「とんでもない化石だ」という驚きと興奮にかわりました。第一報から確認まで迅速に行動してよかったと思いました。


私は、過去にもクジラや鰭脚類などの発見・発掘に携わっていますが、今回はそれを上回る成果です。このような大変貴重な機会に出会えることはもう二度とないかもしれませんし、発掘に立ち会えたのは化石を研究する古生物学者としてはこの上ない喜びでした。

発見当時の様子から、化石の学術的な価値に至るまで、熱い興奮が伝わってくるお話だった。一般公開が待ち遠しい。

瑞浪市の公式YouTubeチャンネルでは、今回の発掘の様子をダイジェストで動画にまとめて公開している。貴重な化石の発掘シーンを映像でも観たくなった人は、ぜひのぞいてみては。

記事中の画像付きツイートは許諾を得て使用しています。

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