「バングラデシュのお菓子はどれも白い」のはなぜ!?違いがわかりにくいのでお店で食べてみた

同じ白でも驚くほど味はまったく違いました
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先日、X(Twitter)でバングラデシュ料理店で提供しているという「白いお菓子」について話題になった。

全部見た目が白く、何が違うのかがわからない(店舗にて撮影)

お店の壁に掲げられている思われる張り紙には、6種類のお菓子が名前と写真付きで掲載されている。

…のだが、驚いたのは6種類すべてのお菓子の見た目が「真っ白」なこと。各商品の特徴などが書かれておらず、味については分からない。違いといえば固形かそうでないか、という形状くらいだ。

このお菓子の画像に対し、Xユーザーもやや困惑気味な様子で

「驚きの白さ」

「全部白い…甘いのかな。説明がほしい」

「全部白いことだけ分かりました」

「味の想像もまったくつかなくてすごい」

といったコメントが相次いでいた。

調べてみると、前述の「白いお菓子」の張り紙を掲げていたお店は東京・大久保にある「サルシーナハラルフーズ」だそう。お店の公式アカウント(@SalsinaHF)でも当該の投稿にリポストする形で、「食べに来てくださぁい」とコメントしていた。

これはもう話を聞きに行くしかないのでは! さっそく同店に取材を交渉し、白いお菓子の謎などを確かめるべくお店へと向かった。

噂のお店は東京・大久保にある人気店だった

バングラデシュ料理店「サルシーナハラルフーズ」は、JR山手線・新大久保駅から3分(JR中央・総武線大久保駅からは徒歩7分)ほど歩いた住宅街にある。お店は2年ほど前にオープンしたそうだ。

ネットでお店の評判を見ると、コアなファンがいるほどの人気店らしい。

お客さんの9割が日本人だという

ランチが終わったお昼過ぎ、明るい笑顔で出迎えてくれたのは、バングラデシュ出身の店主モーリック・エムディ・バキビラ(以下、モーリック)さん。

日本で40年以上暮らしているといい、流暢な日本語で質問に答えてくれた。今回のXでの話題も知っていたようで、「投稿を見て来られたお客さんも多い」そうだ。

フレンドリーなモーリックさん

白いのは主な材料が「牛乳と砂糖」だから

今日は突然すみません。一番知りたかったことからお聞きしますが、お店で提供しているお菓子がどれも白いのはどうしてでしょう?

基本的な材料として、「牛乳と砂糖を使って作っているから」です。バングラディシュの人は牛乳が好きで、お菓子に使ったり、紅茶にも牛乳を多めに入れて飲みますよ。

ちなみに、こういうお菓子のことをバングラデシュでは『ミスティ』と呼んでいます。

総称があるのですね。ちなみに、見た目は全部白いのですが、味や食感にはどんな違いがありますか?

作り方はそれぞれ違うのですが、味や食感の違いを説明するのは難しいですね…。実際に食べていただくと分かると思います。

砂糖を使っているので、やはり甘いですか?

基本的には「すごく甘い」です。バングラデシュ人は甘いものが好きなので。

ただ、日本人は甘いものをあまり食べませんよね。なので、このお店で出しているお菓子は甘みを少々抑えめにしています。

モーリックさんは甘いものは平気ですか?

私も日本で暮らして40年ほど経つので…。日本人と同じようにあまり甘いものを食べなくなりましたね(笑)。

実際のお菓子は全部白いわけではなかった

その後、「お菓子をいくつか見せていただけますか?」と相談すると、冷凍庫からケースに入ったお菓子を取り出して見せてくれた。

お店で現在扱っているお菓子は全部で6種類。実際のところバングラディシュのお菓子はもっといろいろあるのだが、冷凍庫におけるスペースがないため種類を絞っているそうだ。

先ほど「投稿を見たお客さんも多い」と聞いていたとおり、取材当日はいくつかのお菓子がすでに売り切れていた。そのうち見せてもらったのは「ロシュマライ」「カチャグラ」の2品だ。

手前がロシュマライ。奥がカチャグラ

基本的な材料は牛乳と砂糖と言いましたが、ロシュマライにはカルダモンが入っています。香りづけをするため、カルダモンやシナモンなどのスパイスを入れるんです。

また、カチャグラも当店だとカルダモンは入っていませんが、他のお店では入っているものもありますよ。

なるほど、お店によって味の個性が違うんですね。

…あれ? 写真だと真っ白ですが、実際のロシュマライはちょっと茶色いんですね。

カラメル(砂糖を高温で熱して茶褐色にしたもの)が入っていますからね。

ロシュマライとカチャグラでは形が違いますが、これは何がどう違うのでしょう?

うーん、説明が難しいね…。簡単に言うと調理方法が違います。

ロシュマライは牛乳から乳脂肪分を除いたもの(カッテージチーズに似ている)を団子状にまるめて、甘い牛乳のシロップに漬けたもの。

カチャグラも同じように団子にしたものだけど、シロップ漬けじゃなくて粉ミルクをまぶしてあります。

あと、うちには置いていないけど、ギー(無塩発酵バターから不純物を除いた油)で揚げたお菓子など、バングラディシュにはいろんなお菓子があります。そっちは白じゃなくて茶色をしていますよ。

サルシーナさんの過去のポストを見ると、白くないお菓子も提供していた(現在は行っていないので注意)

当たり前ではありますが、白いお菓子ばかりじゃないんですね。

赤、黒、オレンジ色のお菓子もありますが、白が一番多いです。サトウキビから搾った「グール」という汁を使うお菓子もあります。とても美味しいのですが作る手間がかかるので、お店で提供する場合に値段が高くなってしまうんです。

通常の販売は難しいのですが、お店でイベントを開催する時などに期間限定で提供することがありますよ。

ちなみに、どのお菓子も冷たい状態で食べるのでしょうか?

お店にあるお菓子は全部冷たいです。冷たくても常温でも味はそれほど変わりませんが、やっぱり冷たい方が美味しいです。冷凍庫で保存(賞味期限は約1年)していて、食べる時に解凍します。

お菓子はお食事セットを注文すると付いてくるそうですね。お客さんがお菓子を選ぶのを迷っている場合は、どのように説明をされますか?

う~ん、特にはしないね。説明するのが難しいので(笑)。

なるほど(笑)。とりあえず、お菓子をどれか選んで食べてもらう感じですね。

初めて知るお菓子だと思うので、最初はみんな不安な表情を浮かべながら食べるけど、多くの人が「美味しい」と言ってくれますよ!

ホワイトボードに6種類のお食事セットを記載
Xに投稿されていたお菓子のメニュー

メニューに載っているお菓子は、バングラデシュでもよく食べられているものなんですか?

そうですよ。私も本国に行った時はよく食べます。お店によって違いがあって、人気店なんかもあるんです。

あと、バングラデシュだけじゃなくて、インドやパキスタンでもよく知られていますよ。これらの国の人々は、お菓子の名称を見るだけでそれぞれがどんな味なのか大体分かるはずです。

あと、このお店では提供していませんが、バングラデシュには辛いお菓子もありますよ。

バングラディシュは肉だけでなく魚を使った料理も多いそう
イリシュ魚とベグンバジのランチ1,800円。イリシュは現地ではポピュラーな魚。ベグンバジはナスの香味揚げといった感じ。スパイスたっぷりで辛そうだけど美味しそう

お店の料理も辛いものが多そうですが、お菓子も辛いものがあるんですね。

バングラデシュは元々インドの一部(※)でしたからね。それと、甘いお菓子が多いのもインドの影響を受けています。

※1947年にイギリスによるインド支配が終焉を迎えた際、ヒンドゥー地域がインド、イスラム地域パキスタンに。その後、インドを挟むように東西に存在していたイスラム地域が西パキスタン(現パキスタン)と東パキスタン(現バングラデシュ)に。

店内は本場バングラデシュの雰囲気

2種類のお菓子を食べてみた

取材後、「まあ食べてみれば違いが分かるよ」というモーリックさんのご厚意で、メニューに載っていた「ミシュティドイ」と「ションディッシュ」を食べさせてもらった。

まずは「ミシュティドイ」を実食。煮詰めた牛乳に種菌を加えて発酵させたスイーツだそう。

ミシュティドイ。メニュー写真では白かったが、実際は色づいて見える

見た目はヨーグルトのようだが、味も食感もヨーグルトのような感じ。ミルキーでコクがあり、少々強めの酸味が印象的だ。

ヨーグルトが全体的にほんのり色づいて見えるが、「ジャグリー」というサトウキビから取った精製していない砂糖を使っているから。ジャグリーは黒糖のような風味が特徴だ。

ほどよい甘みがあって美味しい

続いて食べたのが「ションディッシュ」

ションディッシュ。メニューの写真同様に白い

食感や風味はチーズケーキに近く、口の中に入れるとほろほろ崩れる感じ。牛乳と砂糖を使っている点は先程の「ミシュティドイ」と共通するが、食べた時の感想はイメージ以上に違っていて面白い。

こちらは温めた牛乳にレモン果汁などを加えて乳脂肪分を取り除いた「パニール」というチーズに、砂糖やギーを加えて練り上げ、さらに加熱して成形するそうだ。

クセになりそうな味わい

メニューの写真を見るだけでは分からなかったが、それぞれに独自の風味と食感があり、食べやすいお菓子だった。名前になじみはないが、モーリックさんも太鼓判を押すとおり、どのお菓子も日本人の味覚に合うと思う。

この日は食べなかったがバングラデシュにはスパイスを使用した料理が多い。辛い料理を食べた後の口直しにはピッタリに違いない。

店内併設のハラルショップで買い物もできる

同店の店内には、ハラルフード(イスラム教で食べることが許されている食事)を販売するハラルショップを併設。米、肉、魚、スパイスなどバングラデシュの食材を幅広く取り揃えており、食事だけでなく買い物も楽しめる。

入店すると、目に飛び込んでくるのは大量の食材

違いがわからないお菓子をきっかけに訪問したバングラデシュ料理店「サルシーナハラルフーズ」。お菓子を実食して分かったのは、全部が白いわけではなく、それぞれに深く異なる味わいがあること。

店内に漂う家庭的な雰囲気とモーリックさんの親しみやすい人柄も魅力で、バングラデシュ料理を初めて食べる人、バングラデシュ料理に敷居の高さを感じていた人は、これを機にぜひお試しあれ!

記事中の画像付きツイートは許諾を得て使用しています。
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書いた人
らんびん

ライター/動画編集/趣味は旅行・車・野球観戦・カメラ・料理 etc. X(旧Twitter):@chibaspo