宮廷歌手小森輝彦さんのツイートまとめ第32回「東京二期会オペラ劇場「フィガロの結婚」初日の公演所感とお客様の声」

日本人初ドイツ宮廷歌手、小森輝彦さんのツイートまとめです。
1
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

二期会「フィガロの結婚」黒田組の初日、明けました。無事に公演を終了。お運び下さった皆様、ありがとうございました。お客様の反応がカーテンコールを待たずにバシバシ伝わってきて、それが我々舞台の温度も上げていくという希有なステージになりました。最高に幸せでした。ありがとうございました。

2016-07-16 10:36:01
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

「本番をやって楽しかった」とか「幸せだった」という表現を、可能な範囲で避けてきた部分があるのですが、今回ばかりは「幸せだった」という言葉から始めないわけには行かない、と言う心情です。心から愛するモーツァルト、心から愛するアルマヴィーヴァを、やっと日本の大舞台で歌えた。

2016-07-16 10:37:35
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

僕は元々、舞台、劇場の「日常性」を求めてドイツに渡ったという経緯があります。レパートリーシステムが定着しているドイツでは、専属歌手を持って毎日のように、色々な演目が入れ替わり立ち替わりステージに運ばれる。舞台表現者は、それを日常としてこなさなくてはいけない。良くも悪くも

2016-07-16 10:39:05
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

ここ日本では、それほど多くの公演が成立しません。コストの事…やはりドイツでの公共の援助が全予算の7〜8割を占める状況に対し、日本では逆転して2〜3割。(数字は古いかも知れません) それに加えてホールも大きいし、回数を多くする必要も日本では減ってくる。都合、舞台は「非日常化」する

2016-07-16 10:41:45
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

これは良い悪いの話ではありませんです。我々の伝統芸能ではないし、文化のあり方も歴史も違うし。これをして「日本は文化への姿勢が遅れている」という批判をするのは短絡です。その分、二期会をはじめとしてオペラ作りに命を賭けている団体の工夫、資金確保の努力は凄まじい。ものすごい知的労働です

2016-07-16 10:44:27
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

文化論を展開するつもりではなく、単に「日常性」のことを言いたかったのでした。 そう言うわけで、僕は舞台の日常性に憧れ…岡村喬生さんの著作でそれを垣間見たので…大学に入る前から「ドイツの専属歌手になるぞ」と息巻いてました。あたかも劇場に住んでいるかのような感覚が欲しくて。

2016-07-16 10:46:12
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

それはプロとして、舞台をお客様にお届けする事を生業とする舞台人が、自分の楽しみを口に出したり優先したり、と言う事はあっては行けないんじゃないか、と少し鯱張っていたと思います。自分たちの満足感、手応えを優先してはいかん!と。事実「僕はお客様のために歌う」と繰り返し口にしていた。

2016-07-16 10:48:39
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

自分にそれを課す、義務づける必要が当時あったのか、と今は振り返って思います。ドイツでインタビューなどがあると頻繁に口にしていたし。でもドイツの劇場の同僚から「それはきれい事だ」と批判されることも結構あった。その度に討論していたけど、結局、こういう事を言葉で論じても意味が無い事も。

2016-07-16 10:50:34
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

というのは、結局キャッチコピーとして「お客様のために歌う」と言うことは意味があまりなくて、舞台表現のクオリティーとしてやらなくてはいけないのですね。アドリアーナ・ルクヴルールではないけれど、僕らは芸術の卑しい僕(しもべ)と言いつつ、偉大な芸術を体現する(大げさな表現になっちゃった

2016-07-16 10:53:18
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

で、いきなり昨日の舞台に戻るんですが、これを完全に体現してらしたのがバルトロの妻屋秀和さんだったと思います。大学の門下の先輩で、ドイツ生活でも近所(距離80kmだけど)でお世話になった妻屋さん。二期会に来て下さって、昨日始めて本公演で共演させていただけた。感慨深いです。

2016-07-16 10:55:28
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

妻屋さんは舞台を楽しんではいるけれど、プロ中のプロというか、クオリティーに全くブレがない。昨日も、明日も3週間後も、あの人はきっとバルトロのままだろう、と言う気がしてしまう。過不足無くお客様に高品質のオペラをとどけ感動に導く。その点ですごく日本人離れ(敢えてこの表現)してると思う

2016-07-16 10:58:28
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

大学で同じ時期に、妻屋さんと、フィガロの黒田博さんも同じ門下にいらっしゃいました。バリトンの原田茂生先生の門下で、わいわいやってました。その黒田さんとフィガロ、伯爵で共演は初めてではなく…16年前のモーツァルト劇場の日本語公演でご一緒しました。でも今回の楽しさはその時の比ではない

2016-07-16 11:00:49
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

今日になって見たのですが、小田島久恵さんが僕と黒田さんをタイガー&ドラゴンと称して下さり。これ、長瀬智也&岡田准一のあれ、との関連と認識して正しいでしょうか。だとしたらえらく嬉しい。 黒田さんは僕がどんなに無茶な芝居を仕掛けても完全に受けとめて下さるのです。こんな安心感は他にない

2016-07-16 11:04:12
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

3幕フィナーレの入りのところで胸ぐらを掴むところも稽古で勢い余って、思いっきりどついちゃったりしても「あーだいじょぶだいじょぶ」と。大先輩の黒田さんの、まさに胸を借りた舞台です。美声、美男、芸達者であることは繰り返す必要も無いと思いますが、その黒田さんとあれだけがっつり絡めた。

2016-07-16 11:07:15
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

特にやっててほくそ笑むのは1幕幕切れのフィガロのアリアで、フィガロがケルビーノを揶揄していると見せかけ伯爵を揶揄している、というのを感じて、僕は何度も黒田さんをにらむのですが、そのかわし方が…。稽古場でも皆大笑いしてました。僕は舞台では笑えないのが辛いくらい。

2016-07-16 11:09:43
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

マルチェリーナの押見さんとは初めてご一緒したと思う。押しが強く、しかも3幕で変貌する身の翻し方、本当にお見事で、伯爵として舞台でそれを見ていると、「おい、そりゃないだろう」という気持になってしまう。さっきまで仲間だったのに。って。2幕のフィナーレでは共闘したじゃないか・・・。

2016-07-16 11:13:05
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

その2幕フィナーレでもあくの強さを発揮した高橋淳さんのバジリオ。あくが強すぎて稽古前半では完全にもって行かれてペースが狂いました。馴れたけど。すごく細かく伯爵とコンタクトをとってくれて、特に1幕ではすごく細かい芝居で絡んで下さった。大胆であるが嘘がないんですよね。すごい事だと思う

2016-07-16 11:17:09
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

淳ちゃんとは色々一緒にやっていますが、実はモーツァルトは初めてかな?印象に残っているのは、多分初共演だったと思うけど、R.シュトラウス「インテルメッツォ」のシュトルヒとシュトロー。似てますね。そう、名前の取り違えが大騒動の種になります。 後はザルツブルク音楽祭の大舞台。圧巻でした

2016-07-16 11:18:45
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

クルツィオの渡辺公威さんとも初めてご一緒しました。クルツィオはsotto voceで高いAを出さなくちゃ行けないから、誰にでも出来る訳じゃないのに、それをあっさり、しかも僕が作成している(?)ゴミを片付けながらやってしまうからすごい。昨日は笑いも吃音もバッチリでした。うけてた。

2016-07-16 11:26:00
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

亜門さんの演出では特に、ケルビーノの「ミニ伯爵」の要素が強調されてるのですが、これを巧みにやって下さっているのが小林由佳さん。細かい芝居作りも一緒に工夫してくれて、すごく楽しい。輝かしい声でケルビーノの衝動を表現し、芝居はものすごく細かい。さすが。

2016-07-16 11:29:20
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

由佳さんとは1幕最後のセッコのやりとりをどうするか、ずいぶん作戦練りました。あそこをどう演じるかで伯爵のキャラもケルビーノのキャラも結構違ってくる。ああいう細かい話を一緒にさせてもらえる同僚というのは本当に宝です。

2016-07-16 11:34:15
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

そのケルビーノを体を張って守ろうとするバルバリーナが盛田麻央さん。初めてご一緒したのですが、稽古の最初っからバルバリーナになりきっていて…使い古された表現ですがこれがしっくりくる…ぐいぐい場面を引っ張って行く。3幕最後のセッコでもえらく堂々としていて伯爵の僕がたじたじするくらい

2016-07-16 11:37:43
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

瑞々しくも質感のある声で4幕のアリアも見事でした。このプロダクションでの伯爵は相当怖いはずなのに、そこにああやって無謀に切り込んでくるのが盛田さんのバルバリーナの魅力です。無遠慮。だからこそこの役がチャーミングになるんですね。僕も受けの芝居がすごくやりやすかったです。

2016-07-16 11:40:28
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

バルバリーナのお父ちゃんの鹿野由之さんアントニオ。これまた無遠慮で素晴らしい。以前にこうもりのフランク、ファルケでご一緒したのを思いだしますが、酔った芝居がこれほど板についた人がいるだろうか…。鹿野さんも結構細かいところで遊ばせて下さる…。ありがたいっす。

2016-07-16 11:46:15
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

今回デビューの藤原唯さん、宍戸茉莉衣さん。立派なデビューでしたね。おめでとうございました。あの短い時間にあれだけの芝居の量…めまぐるしい程(マエストロのテンポ変化に一喜一憂せざるを得ない程)ですが、ニュアンスたっぷりに演じてくれて、その分伯爵としては腹を立てられました。ありがとう

2016-07-16 11:50:36