過ぎ去りし個々の時代における己の真の像を保管するためには 光学記録によるその外見の固定のみならず それが撮影された瞬間瞬間の自身の内面もが うそ偽りない形で 同じタイムライン上に釘付けられていなければならないということは先に述べたとおりである
2016-07-23 07:10:30とはいえ、人間の心中なるものは その外見と比べるとはるかに移ろいやすい ある思想の狂信徒と化していた人間が その数週間後には真逆の思考に傾いていることなど往々にして有りうる
2016-07-23 07:11:05そして人間は基本的に今という孤立した点の上にしか居住することができず また現在の自分は常に当人にとって視点の軸がすえつけられた、正しい存在であるわけだから ここから見た過去の己は多かれ少なかれ誤った考をもつ愚か者の座に貶められていってしまうこととなる
2016-07-23 07:11:34ひいては、昔の自分をまったく受け入れることができなくなり これを憎悪するかもしれない こうなってしまうと間にある時間区分により分断された両方の自分は 完全に別な人格とも定義されかねない
2016-07-23 07:16:17これを押し広げて解釈すれば 自分という存在は、何を考えようと未来の自分に否定され 切り落とされる今この瞬間にしか存在し得ない点的な幻ということになり 最終的に自分と言う存在は存在しないという結論すら立てられ
2016-07-23 07:16:41その中で人間は過去との乖離感、過ぎ去った時間への喪失感に苛まれ 孤独、恐怖の中で身動きがとれず 報われることはなくなってしまう
2016-07-23 07:24:28この各期間における思考法の乖離によって引き起こされる自己像の崩壊を阻止し どれだけ時間をへだてようと自分はあくまで一つの存在であるということを確認するためには あるいは、一つの存在にくくりおくためには ゆえにその瞬間瞬間の心の内を保管するのみならず
2016-07-23 07:24:57ではなぜ自分の思考は移り変わって言ったのかという その一連の流れを書き留める 連続性の記録が求められることとなる これは俗にストーリーと呼ばれるものであり
2016-07-23 07:26:56人間は物語の手法を借りることでようやく過去の己と再会し、融合し もって自身の肉体が体験したすべての時間とそこにおける自らの存在とを 包括的に所有することができるようになるのである
2016-07-23 07:27:03