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DAS BOOT

かの名作「Uボート」を艦これに改変してみました。いえ、改変しているところです。 取り敢えずはきれいな部分をちまちまとつぶやきつつ、完成を目指します。 ”あねさん=姉さん”の表記ゆれあり
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同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「ー炸裂と轟音に、汽船の底破れて ♪ その最期の航路は、死出の旅に異ならず ♪」 まあ、言ってしまえばご機嫌だった。久しぶりの浮上。大物の正規空母を沈めた後で、護衛は随分前に諦めてどこかへ消えた。 日は没し、都合の良いことに天気は曇り。哨戒機だって、ろくに視線は通らない。

2016-06-29 00:35:33
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

そうしてご機嫌で、暗い海原で歌っているときだった。 「潜水艦は、遥か大海原を征く ♪ 潜水艦は、魚雷を撃ち放つ ♪ 深海棲艦を、深海棲艦を死に追いやるのだ ー?」 瞬間、影が視界を横切った。

2016-06-29 00:40:31
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「警報!」 鼓膜を叩く轟音と、目を焼く閃光、妖精の警告は同時だった。 爆発、猛烈な衝撃。思わず姿勢を崩す。かまわない、そのまま一気にタンクに注水して急速潜航だ。 なにがなんだかわからないが、とにかく、攻撃を受けてるのは間違いない。

2016-06-29 00:44:52
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「砲弾命中」「砲損傷、射撃不能」「航空機1機」「電動機ビルジ浸水」 潜りながら、妖精たちの報告に目を通す。砲弾命中? 敵航空機? そんなはずはない。 外洋に出てこられるような水上艦に、視認度で負けるはずがない。砲声もなかった。航空機だって、この空でこちらが見えていたはずがない。

2016-06-29 00:53:57
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

前傾、前傾過ぎる。砲がやられた? どうやって? 「ディーゼル室浸水」「電動機室浸水」 浸水と言う嫌な単語が二度三度と出てくる。これはまずい。 「全タンク空気注入! 緊急浮上!」

2016-06-29 01:03:57
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

まっすぐ浮上する。潜望鏡を覗く余裕はない。 「左ディーゼル停止!」 海面を突き破りながら、また嫌な単語。だが止まってるのは左だけか? さっきから艤装が出す音がおかしい。

2016-06-29 01:08:37
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

不意に昼間のように明るくなる。マグネシウムの光。ちらりと見ると、主砲は艤装からもぎ取られていた。 (うわ、ほんとにやられてる) ひどく場違いな感想。照明弾で照らされているのに。

2016-06-29 01:14:56
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

砲声! 今度は聞こえた! 「警報!」 妖精たちが叫ぶ。弾着は遠い。が、次々に撃ってくる。

2016-06-29 01:24:50
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

敵艦はどこだ。少なくとも近くには居ない。最大戦速、回避運動を。ディーゼルは壊れているのに? マグネシウムの照り返しで遠くまで見えない。だがわずかに発光。そこにいたか。

2016-06-29 01:31:46
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「がっ」 衝撃、肺から空気が押し出されるような感覚。排気管が吹き飛ぶのが見えた。瞬時に喪われる浮力、引きずり込まれるように、いや、落下するように海に沈む。

2016-06-29 01:38:24

同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

信号所から呼び掛けがあった。 〈02番ブロックへ入港せよ!〉 左前方でブンカーの"02"と書かれた門が開くのが見えた。岸壁の人の群れも。よかった、ブラスバンドはいない。

2020-01-26 22:07:56
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

数羽のカモメが異様なしじまを破って飛び立ち、私たちは機関をとめて苔と錆におおわれた門をすべりぬける。岸壁の人たちがモミの枝のついた花束を投げて寄越したが、いっさいそれを無視した。妖精にもひろわせない。

2020-01-26 22:08:10
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

岸壁の人間への昔ながらの反感。私は戦隊の誰もがおなじ気持ちだとわかっている。私たちは繊細な生き物なのだ。まとを外した行動にはいちいち牙をむく。

2020-01-26 22:08:23
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

姉さん、ミルヒと行き足をころしながらもやいを受け取り、完全に停止。私も目印のいくらか前で後進を入れて、一枚。もやいを受け取って完全に停止する。

2020-01-26 22:08:42
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

ボックスのクレーンが頭上にスライドしてきて、おろされた鎖が艤装に繋ぎ止められた。 じゃらじゃら音をたてながら巻き上げられ、徐々に張り、艤装が持ち上がる。ゆれがなくなり、水平、足が浮き、宙に浮く感覚。実際、クレーンで持ち上げられて空中にいる。

2020-01-26 22:09:25
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

ある程度巻き上げたところで艤装を捕まえたクレーンがスライド、ボックスの、艤装の固定位置の上へ。治具の上にのせられ、整備員が固定具をつける。鎖が緩み、固定完了。

2020-01-26 22:09:45
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「負傷者を!お願い!」 よってきた整備員に叫ぶと、彼らの顔に驚きがあった。 「こちらへ!」 担架が持ち込まれ、慎重にボックスから運び出される。負傷者を引き渡したところで私も艤装を停止させ、ボックスから這い出そうとしたら止められた。 「高速修復剤を使います!日本への荷物の搭載も!」

2020-01-26 22:11:18
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

高速修復剤はその名の通り、艤装を高速で直すための資材。バケツのような容器に入り、ゼリー状。加護の力を引き出すことで、時間を巻き戻すように艤装を修理する。ただし質量保存は覆せないから、なくなった部品は適宜継ぎ足さないといけない。

2020-01-26 22:11:40
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「なんだって?」 私は抗議の声を上げた。高速で修理と言えば聞こえがいいが、加護の力を引き出すので艦娘は休めない。それにたいてい、これを使うのは水上艦娘の連続出撃のためだった。 ようやくの入港なのに、それがわからない?

2020-01-26 22:12:00
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「命令なのです! 」 返事はその一言で終わり。かわりに整備計画が渡される。どうやら新兵器のロケットを、とにかく急いで積みたいらしい。 そのための高速修復? 急ぎ過ぎじゃないか?

2020-01-26 22:12:24
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

なおるまで付き合った私は、あらためてボックスから這い出した。 「司令部へ! 提督がお待ちです!」 大地に足をついて、第一声がそれだった。どうやら、説明してくれるつもりはあるらしい。

2020-01-26 22:12:43
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

ボックスから出て02ブロックの通路で落ち合った私たちは、互いに顔をしかめた。 「どうにも、ここの提督はせっかちのようだな」 姉さんが代表して不満を口に出したが、案内の兵士はわずかに怯むにとどまった。結局私たちは案内されるままにブンカーから出て、司令部へ向かう。

2020-01-26 22:13:04
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

道すがら、概略を伝えられた。補給が終わり次第、日本へと向かわされるらしい。クリスマス休暇はないのか? 本当にせっかちだ。私は文句を言おうとした。 ……と、口を開く直前、私は感じとった。爆音が聞こえるよりはやく、空気と一緒にそれを吸い込んだみたいに。

2020-01-26 22:13:40
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「敵機!」 海から来る。 ぶうぶういう羽虫のような音。キーンという轟音。みんな首を伸ばした。はやくも対空砲が火を吹く。あった…海上…低空から来る。綿毛が開くかのように、小さな白いくもが増えていく。

2020-01-26 22:14:07
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