悪い男に騙される山城【解】『HAruna's waRD』真最終章~終宴~第七部『最後の援軍』~『悪い男の勝手を許さない者達』

見る人すべてを震撼させた読者参加型なりきりストーリーアカウント『悪い男に騙される山城』の解ストーリー『HAruna's waRD』遂に最終章突入! ついに紫水と新月を追い詰めた今、みんなの力が結集する! ※一部抜け落ちている部分がございますがご了承ください。 ※随分と間が空いてしまいましたが、以前まとめてくださっていた方の引き継ぎとしてまとめます 前→http://togetter.com/li/675374 続きを読む
0
あの頃の榛名 @harunas_ward

【真最終章~終宴~第七部『最後の援軍』開始】

2013-12-14 19:40:40
あの頃の榛名 @harunas_ward

足元の波が、質を変えていく。 水深が浅くなってるわね。おそらく、陸地が近い。 読みは当たっていたみたいで、霧を抜けた先には小島があった。 満ち潮になったら沈むのではないかという小さな島。尖った岩がごろごろと転がっている。 その中心に、紫水と新月がいた。

2013-12-14 19:46:58
あの頃の榛名 @harunas_ward

紫水はタバコを咥えて、無表情でこちらを見ている。距離はまだ遠いものの、当てようと思えば狙う事はできる。新月が黙って見過ごすわけがないが。 当の新月は、両膝と両手を砂浜に付けてうなだれていた。顔は伏せたままで見えないが、向こうも負傷と疲労は限界に近いようだ。

2013-12-14 19:50:00
あの頃の榛名 @harunas_ward

砂浜に打ち寄せる波の音。 最上さんを横目で見る。彼女は小さくかぶりを振った。 彼女の艦載機が捕捉できる範囲には、他の雑魚はいない。 警戒は怠らないが、ここに来てまた逃走する事は無い気がした。生身の人間である紫水を置いていく事になるから。

2013-12-14 19:53:27
あの頃の榛名 @harunas_ward

どっちに転ぶかはわからないけども。 ここが決着の舞台になる。 意を決する。死ぬ覚悟を決めるつもりはない。生きる。それだけは譲らな…うぁ。 …え? 右ふくらはぎに鋭い衝撃が奔り、バランスを崩す。波に頭から突っ込み、水の中に揉まれながら、理解に努める。最上さんに蹴られた? 違う。

2013-12-14 19:57:35
あの頃の榛名 @harunas_ward

Uターンして戻ってきた最上さんの手を借りて、水面に這い上がる。 実際に自分の右ふくらはぎを見て、ようやく痛みが襲ってきた。 黒く太い針金を数本、適当に切って適当に曲げて適当に捻って造形したような、奇怪な矢が突き刺さっていた。 血がじくじくと溢れては波に洗われる、を繰り返す。

2013-12-14 20:00:58
あの頃の榛名 @harunas_ward

…何? これは。 抜くべきなのだろうけども、形状が歪なのと鋭い棘が無数に生えているので迂闊に手が出せない。抜こうとすれば、当然手の平も激しく傷付ける事になるだろう。何よりも、抜いたら出血が大変な事になりそうだ。 何をされた? 新月ではない。ずっと注意を払っていたが動いてもいない。

2013-12-14 20:05:17
あの頃の榛名 @harunas_ward

心配げに屈み込む最上さんから目線を外し、新月を見る。先程確認した時と同じ姿勢のまま動いていない。 そもそも、今日長らく何度も戦ってきた感触としては、彼女にそこまでの長距離攻撃能力は無い。元々は駆逐艦だという点は残っている。 ならばこれは。 どすっ 血が。

2013-12-14 20:21:28
あの頃の榛名 @harunas_ward

音と共に数滴顔に液体がかかった。 指先で触れてみる。血だった。 顔を上げる。 最上さんの左肩から、私の右脚を貫いたのと同じ黒い矢の先端が生えていた。 も…最上さん!? 彼女の顔が驚きと苦痛に渋面を浮かべるが、私の手が触れると同時に無理に笑顔を作って私を見返す。

2013-12-14 20:24:13
いたって普通な最上 @AAC_MOGAMI

@harunas_ward いった!直撃かよ…冗談じゃないよ…

2013-12-09 00:23:21
あの頃の榛名 @harunas_ward

冗談めかして言おうとしているが、痛みを相当我慢しているのは明らかだった。 攻撃されている。 誰に? どこから? どうやって? ぐるぐると疑問が浮かび、どれにも答えられないまま、周囲を見回すしかない。

2013-12-14 20:25:44
あの頃の榛名 @harunas_ward

…? 視界の隅に一瞬何かが光ったように見えて、意識を向ける。 次の瞬間、鋭い矢尻の先端が私の目の前にまで飛来していた。 っ!? 認識できたのが奇跡だった。あるいは、これが走馬灯という奴かも知れない。 回避はおろか防御も間に合わない事を自分の中の冷静な部分が告げていた。

2013-12-14 20:37:11
あの頃の榛名 @harunas_ward

横から飛び込んできた何かが庇ってくれるように矢にぶつかり、破砕しながらも矢の進行方向を大きく逸らしてくれた。 波に散らばる瑞雲の残骸を見て、すぐ隣に降り立った人影を見て安堵の息を思わず漏らしてしまう。

2013-12-14 20:39:03
悪い男に騙されていた山城(完) @fd_yamasiro

榛名! 最上さん、無事かしら!? 遅くなったわ!

2013-12-14 20:27:27
あの頃の榛名 @harunas_ward

大きく肩で息をしながら、面積の広い袖を振り回すように腕と指先を振るう。空に飛び回る瑞雲を操っているようだ。 見上げた先で、最上さんの航空機と共に、次々と撃ち落とされていく。 いや違う。 目が慣れてきて気付く。大きな放物線を描いて向かってきていた黒い矢にぶつけて阻止している。

2013-12-14 20:42:35
あの頃の榛名 @harunas_ward

分断した後に補充したのだろう、山城の瑞雲達のほとんどが、あっという間に失われる。 山城が腕の動きを止めて深く息を吐き出す。 どうやら謎の攻撃はひとまず落ち着いたらしい。 山城、これは何なの? 単刀直入に聞く。新月はいまだ動いていない。紫水も。 山城はすぐに答えなかった。

2013-12-14 20:45:50
悪い男に騙されていた山城(完) @fd_yamasiro

…信じられないでしょうけど、ヲ級よ…。 空母ヲ級。 ただ…、何故か空母の方達が使っているような弓を持ってる…。

2013-12-14 20:28:59
あの頃の榛名 @harunas_ward

なんですって? 先程捉えた光が見えた方角を見る。遥か遠く、小さく小さく黒い点が見えた。言われて見れば特徴的なヲ級のシルエットに見えなくもない。 そして最後に何と言った? 矢を? ヲ級が? どうして。 山城が返事ではなく鋭く息を吐き出す。 再び矢が向かってきていた。

2013-12-14 20:49:25
あの頃の榛名 @harunas_ward

山城と息を落ち着かせた最上さんが艦載機を必死で手繰り、黒い矢の進路を阻み続ける。 最上さんが目を見開いてしまった、という顔をする。 1本の矢が私達の方にまっすぐと。 そんなの。 2人にばかり任せておけますかっての! 跳び、タイミングを計って蹴り落とす。右脚が痛むが無視する。

2013-12-14 20:52:42
あの頃の榛名 @harunas_ward

落ち着いて観察できた事で気付いた事がいくつかあった。 確かにあの遠くに遠くにいるヲ級だと思われる何かから矢は飛んできている。 この距離で連射でありながら精密過ぎるのはおかしいと思っていたが、この矢はわずかにだが追尾機能を持っている。

2013-12-14 20:55:44
あの頃の榛名 @harunas_ward

なんにせよ状況は芳しくない。 距離が距離で、私や山城の攻撃は狙う以前に届きもしない。 接近すべきだろうが、それは即ち新月に背後を許す事になる。新月が動かないのは本当に救いだった。『鬼』の相手をしながらこの反則じみた矢を相手にできるわけがない。

2013-12-14 20:58:12
あの頃の榛名 @harunas_ward

…いいえ、認めるわ。 仮に新月がいなかったとしても、接近はひどく困難だった。 距離を詰める前に狙い撃たれるビジョンしか浮かばない。一発もらえばなし崩しに蜂の巣にされるだろう。全部を捌くのも、体調が完全だったとしてもできる気がしない。

2013-12-14 21:00:11
あの頃の榛名 @harunas_ward

じゃあ何? 詰んでるって事? 山城と最上さんの艦載機の数は残り少ない。加えて2人の疲労も軽いものではない。現在の状況でこの黒い雨を突破する事ができないという事。 つまりは、詰んでいる。 一旦距離を置こう、そう言おうとした矢先に更に絶望的な光景が見えた。 新月が、立ち上がった。

2013-12-14 21:02:56
あの頃の榛名 @harunas_ward

緩慢で、どう見積もっても無理を押しての動きだったが、赤い瞳からは戦意が挫けているようには見えない。 ただでさえここまで手を焼いている新月を、あの謎のヲ級の援護の中戦えるわけがない。

2013-12-14 21:04:52
1 ・・ 18 次へ