過去長まとめシリーズ3 「新三共胃腸薬、新ピロエース、そして新自由主義」
…前々から思っていたんですが、「新」自由主義と言われるものには、実のところ 「新」の要素なんか無いんじゃないかと。新・オバケのQ太郎のほうが余程新味があるんじゃないかってくらいに。薄い。
2010-07-21 01:04:44いや、分かってはいますよ。これはネオリベラリズムの直訳であって、「ネオ」という接頭語には常に「再生」「復活」とでも言うべきニュアンスが含まれているのに、すべて機械的に「新」と訳すからそこが抜け落ちてしまうのでしょう。おかげで「ニューリベラリズム」なんか立つ瀬がない。
2010-07-21 01:05:50しかし口先で何を言い募ろうが、事実によって明らかとなったそのゴールはやはり 「新」ではなく「復活」。つまるところソーシャルダーウィニズム華やかりし時代を復活させたい、 ローリングバックトゥトゥエンティ! ということにしか見えないのですよ。
2010-07-21 01:09:46何より腹立たしいのは、そんな、80年前に完全に破産したはずのアンシャンレジームを性懲りもなく復活させたいだけの純然たる復古主義者に過ぎぬ者共が、「新=未来」や「自由」という本来的に輝かしくなければならない概念をいつまで毀損し続けるつもりなのかと。
2010-07-21 01:11:08前回もそうだったじゃないですか。そうやって自由をどんどん毀損し続ければ、誰も自由を信じなくなる。その結果古典的リベラリズムは衰弱死に至ったのですよ。欧米の政治体制ほとんどを巻き込む形で。このまま行けばそう遠からず、同じ結果に直面することになるでしょう。
2010-07-21 01:12:53…思うに、おそらく彼らは、80年前に起こったことは完全なる破綻だとは思ってないんでしょうね。あれは金本位制の硬直性や、ベンジャミン・ストロングがあの時期に折悪しく亡くなったりしたことが招いた不幸な事故だったと。
2010-07-21 01:15:06現代の高度な金融技術があればあんなことは起こらないし、起こったとしてもそれは金融的な手当てだけで、抜本的な社会改良など無しに乗り切れるはずだと。
2010-07-21 01:16:53彼らが都合良く忘却しているのは、そもそも20年代のアメリカの繁栄は、内には国内労働者、外には外国政府、その両者を借金漬けにしてお金を回転させ、一時的に所得以上の消費をさせることによって成し遂げられた砂上の楼閣であったということ。
2010-07-21 01:18:12この構造と現代の状況との類似性、相違点は置くとして、論理的に考えてそのような構造が永続することはありないんだから、破綻は時間の問題に過ぎなかった。もちろん、時の金融政策が最善を尽くしたものとはとても言えないのは事実で、本当はもっと穏やかな形で恐慌を収拾できたのかもしれないけど。
2010-07-21 01:21:51でもさっき言ったような構造がどこかの時点で改められない限り、結局その努力はいずれ、より大きな規模で発生するであろう次回のクラッシュまでの場つなぎにしかならなかったのじゃないだろうか。
2010-07-21 01:22:46…ところで、確かに西欧民主主義体制はこの時のクラッシュに大々的に巻き込まれて、一時的に大幅な後退を余儀なくされたのだけど、でも敢えて言えば決定的に失敗したのがこの時であったのは、むしろ幸運だったのかもしれないと言う見方も出来る。
2010-07-21 01:24:46実際には事態はほとんど手遅れだった。1933年3月4日の朝、銀行は店を閉ざし、NYSEも休場。農村部では暴動が起こり軍将校は密かに蜂起の計画を練る有様。米国資本主義も民主主義も臨終の床にあり、その日任に着く新大統領に出来ることはその看取り役だけであるかに見えた。
2010-07-21 01:28:20ところが新大統領フランクリン・デラノ・ローズヴェルトはこの危機を乗り越えてしまう。しかも民間企業が大規模に国有化されたりすることもなければ、暴力的政府転覆が起こってダグラス・マッカーサーやヒューイ・ロングあたりが独裁者として君臨することもなく。
2010-07-21 01:30:15結局米国においては「議会制民主主義に基づく連邦国家」という看板は一度も下ろされずに、国家改造と経済再建と社会改良が同時に進められて問題点は微温的に「修正」され、かくて米国資本主義と民主主義はその命脈を保ったのだが、この結果は当時の政治状況から考えればほとんど奇跡。
2010-07-21 01:33:30そして世界史的に見ればこの「奇跡」がなければ、近代民主主義は1940年代のいずれかの時点で、ファシストの勝利と言う形で息の根を止められていた可能性が高かったわけで、歴史の神の采配というのは実に絶妙なものだと言う他はない。
2010-07-21 01:35:11「経済対策としては不十分」的評価を受けることも多いニューディールの時代を何故ここまで手放しで賛美するのかは割愛。でも物事がこういう形に転んだのは、たまたまその時ワシントンにいた男が化け物であったからに過ぎず、次に同じことが起こった時2度目の奇跡が起きると信じられる理由はない。
2010-07-21 01:42:00…まあ、要するに何が言いたいかというと、そうやって前回の結果にも懲りず「自由」を好きなように弄んでばかりいて、次に壊したら今度こそ取り返しがつかないかもしれないよ、って話で。
2010-07-21 01:46:59