うがやさん@hirougayaトーク・・・なぜ、記者クラブ開放に対して、及び腰になる人がいるのか

烏賀陽　弘道 @hirougaya

記者クラブは「リテラシーが高く見えるためのメンバーシップ」になっているため、インサイダーにすれば、メンバーが外部から入ると「純度」が低下し、メンバーシップが担保しているリテラシーの高さを破壊するため、必死で抵抗します。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

つまり、記者クラブの現行メンバーからすれば、記者クラブ開放とは「メンバーシップが担保するリテラシースペックの破壊」にほかなりません。つまり自分たちの職能アイデンティティーを毀損するのです。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

アイデンティティーが破壊、毀損されるような変化を人間はもっとも嫌います。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

しかし、記者クラブは公的にはアイデンティティーの担保ではなく、情報を市民に民主主義的に知らせるという政治機構という建前になっています。ですから、外部から「記者クラブ開放」を求められると、現メンバーはそれを否定する公的な論理を持ち得ません。だから沈黙、黙殺するしかないのです。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

ここで厄介なのは、記者クラブが持つリテラシースペックの担保機能は、そこにいる記者個人だけではなく、その記者が所属するマスメディア企業のリテラシーをも保証しています。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

ですから、これは記者クラブ所属記者個人の価値判断ではなく、マスメディア企業の「企業価値」「ブランドバリュー」「コーポレイトバリュー」の存立にかかわるイシューなのです。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

なので、当面、記者クラブや記者会見の開放に現メンバーであるマスメディア企業は沈黙を続け、現場の記者個人だけが衝突に巻き込まれて疲弊するという現象が続いています。（こうした戦闘正面以外での摩擦を一番喜ぶのが権力者であることは言うまでもありません）

烏賀陽　弘道 @hirougaya

もしマスコミ企業が「我々が戦うべき相手は権力者であって、そのような戦闘正面以外での摩擦に力を割く必要は無い」と判断した場合、とる行動は（１）記者クラブを開放する（２）無視、沈黙するです。しかし、これまで述べた通り（１）は自らのアイデンティティーを危機にさらすため、消去されます。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

ここで記者クラブに属するマスメディア企業が避けられないリスクは「彼らは反民主主義的である」という認識が読者に広まることです。おそらく当の記者たちにそんなつもりはなく、むしろ読者のために精一杯がんばっているつもりなのですが、そういうふうには認識されません。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

なぜなら「記者クラブはリテラシーが高いことを担保するメンバーシップである」という事実は、口が裂けても公的には言えないからです。最悪の場合は、記者たちにはその自覚すらないかもしれません。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

「税金によって運営されている官庁の持つ公的情報を、なぜ私企業の業界団体にすぎない記者クラブが流通を独占するのか」という非クラブ記者の問いは「政治機構」としての記者クラブの正当性を問うています。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

しかし、所属している記者たちにすれば記者クラブは「高リテラシーを保証するメンバーシップ」なのですから、論点がかみ合いません。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

よって、所属している記者たちも、「開放したほうがいいに決まってるよなあ」と心のどこかで思いながら、しかし強くも踏み切れない、主張できないといううじうじした「葛藤」を抱えます。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

これは「記者クラブがリテラシースペックを担保するメンバーシップである」ということを意識していないか、わかっていても公には言えない、という内的な分裂があるからです。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

リテラシーの定義は昨日のツイートをご参照ください。twilog.com/hirougaya/