【カレー洋奇襲戦】

鬼神の闘志が水面を焦がす
0
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

時は第二次深海大戦の最中。1度制圧したカレー洋を奪い返さんと、再び深海棲艦が集結した。反撃の芽を摘むべく、綾波は川内、敷波、浦波と共にカレー洋へ向かう。 その戦いの中で、敷波と浦波は孤立。川内と綾波は2人を救うため、危険を顧みず大軍の中へと身を投じる。

2016-08-13 16:24:46
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

この苦境の中、綾波は滾っていた。沖ノ島の戦いに続き、自らの武勇を存分に発揮する機会がやってきたのだ。 かくして、綾波、川内が、孤軍を救うため立ち上がる。綾来々、雪花に綾波あり。綾波の名が歴史に刻まれる戦いの一つが始まろうとしていた。

2016-08-13 16:25:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「駆逐艦綾波。いざ、戦場に身命を賭し、戦います!」

2016-08-13 16:26:11
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

カレー洋。沖ノ島を奪還し、勢いを取り戻した人類が西方海域に侵攻し、戦場となった地。カレー洋は瑠奈花率いる連合艦隊の活躍により人類の手に戻り、その防備には舞鶴の俊英、天津風が置かれた。

2016-08-13 16:27:44
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

今、瑠奈花の艦隊はリランカ海の攻略に向かっていた。その途中、天津風から、カレー洋が攻撃を受けているとの伝令が入る。今はリランカを攻略する好機。しかしカレー洋を再び奪われては退路を失う。悩む瑠奈花に、川内が手を挙げた。

2016-08-13 16:28:40
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

自分が天津風を救援し、後顧の憂いを断つ。川内の提案に瑠奈花は頷き、彼女に一軍を与える。その中には、鬼神・綾波の姿もあった。

2016-08-13 16:29:04
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

カレー洋・連合軍艦娘母艦 「手薄になったカレー洋を狙うとは。敵にもそれなりに考える頭があるようだね」 川内は海を見つめて言った。 「敵は大軍。こちらは寡兵。この戦いを制すなら、奇襲をかけるのが最良かと。夜戦を仕掛けてはどうでしょうか」「うーん、それはどうだろう…」

2016-08-13 16:30:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

川内は渋い顔をした。綾波は意外そうに川内の顔を見た。夜戦。普段ならこの言葉を聞けば狂喜乱舞するのが川内だ。 「何その顔」「いや、珍しいなあと」「あたしをただの夜戦バカだと思ってない?」 違うのですか?綾波はすんでのところでその言葉を飲み込んだ

2016-08-13 16:31:08
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「夜戦自体は大歓迎だけどね?ただ、この大軍相手に夜になるまで天津風が持つかどうか…」 川内は確かにただの夜戦バカではない。夜戦に対し並々ならぬ情熱を注ぐ。下手な戦術家よりも効果的な戦術を立てられる程に。夜戦オタクとでも言うべきか。故に、「仕掛け時」というものを正確に見極められる。

2016-08-13 16:32:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それに、先行した敷波と浦波の様子も気になる。無事ならいいんだけど」 孤立した友軍を放るわけにもいかない。慎重かつ大胆に動かなければ潰走しかねない 「どちらにせよ、攻めなければ始まりませんよ。ただ、目の前の敵を倒し、切り開くのみです」 「でも奇襲を提案してきたのはあんただよ」

2016-08-13 16:35:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

綾波は鬼神の笑みを浮かべた。 「奇襲とは、闇に紛れて行うのが全てではありません」 綾波は右手で、蛇が噛み付くようなジェスチャーを見せた 「神速を以て、敵の喉元に喰らいつく。これも一つの手です。動揺を誘い、心臓を抉れば勝利は目前と言えるでしょう」

2016-08-13 16:37:44
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

川内はぽかんと口を開けて綾波を見つめたが、やがて耐え切れずに笑い出した。 「くく、ほんと、流石鬼神と呼ばれるだけはあるわ」 「周りが勝手にそう呼ぶのですよ」綾波も控えめに笑った 「今回はあんたをあてにしてみようじゃないか。神速の奇襲、成功させてやろうじゃん」

2016-08-13 16:38:33
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「わかりました。ふふふ、滾りますね」 綾波は12.7cm連装砲を肩に掛け、細剣を抜くと、海に飛び出した。川内と数十名の艦娘達も後に続き、猛スピードでカレー洋を目指す。 ((この状況で滾る…か。それが鬼神と呼ばれる所以ってやつなんじゃないのかなぁ))

2016-08-13 16:40:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「天津風を救援し、敵の侵攻を食い止める。皆、あたしに続け!」 川内を先頭に、小規模な軍がカレー洋へ駆ける。時間に猶予はない。天津風の陣営は敵の大軍に包囲され、最早陥落寸前であった。

2016-08-13 16:41:46
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「敵が多過ぎる…」「こんなの勝てっこない…」川内に続く艦娘達は口々に不安を漏らした。敵の数は倍以上。無理もない。 「敵は大軍、こちらは寡兵。相手は慢心しています」綾波は後ろに速度を合わせ、諌めた。「戦いは数ではなく勢い。この慢心につけこめば、きっと勝てます」

2016-08-13 16:43:08
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「そうは言いますけど…」それでも艦娘達の不安は拭えないようだ。綾波は川内に一計を案じた 「味方の士気が上がりません。誰かが皆を鼓舞する必要があります」 「何か案でも?」「私が単騎で突入します」「はあ!?」 川内は素っ頓狂な声を上げた

2016-08-13 16:46:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「私が皆に武威を示し、鼓舞します。そうすれば、皆の士気も上がるでしょう」 「いやいやいや、無茶苦茶すぎる!いくらあんたでも無事では済まない!」 「心配はいりません」 綾波の闘志は熱く滾る。それに反し、彼女は実に冷静であった。

2016-08-13 16:48:45
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「この綾波、勝てるイクサで果てるつもりはありません」 川内は呆れた。この戦い、最悪天津風を救出し、瑠奈花達の戦いが終わるまで持ちこたえればいい方だと思っていたが、この鬼神は完全勝利するつもりでいる 「…わかったよ。あんたがそれを望むなら、思いっきりやってこい!」 綾波は強く頷いた

2016-08-13 16:50:00
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「では、行って参ります」 鬼神は丁寧にお辞儀をすると、猛スピードで敵に突進していった。 「さあ、あたしたちはあたしたちで出来ることをやろう!とりあえず、敷波と浦波を探す。行くよ!」 川内達は綾波の後ろ姿を見守りつつ、駆け出した

2016-08-13 16:51:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

勇猛果敢に飛び出した綾波だが、高揚が、不安が、彼女の肩を震わせた。綾波は肩を抑え、息を整えた。 「戦いにおいて、名前に威圧以外の意味があるとは思いませんが…。鬼神の名、今は頼らせて頂きます。鬼神綾波、いざ参る!」

2016-08-13 16:53:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

敵軍の総指揮官は空母ヲ級。ヲ級は完全に包囲した天津風の本営をじわじわと追い詰めていた。 「無駄な抵抗を…そろそろ総攻撃を仕掛けよ」 杖をかざし、進軍を指示した時、彼女の元に1人の重巡リ級が慌てて駆け付けた 「大変です!艦娘が我らの背後を突いてきました!」

2016-08-13 16:55:00
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「何?敵の数は?」「そ、それが…1人です!」「1人?」ヲ級は訝しんだ。 「たった1人でのこのこと?それがどうした。とっとと片付けろ」「しかし奴は…」 その時、背後に構える軍勢から叫び声が上がる。 「あ、綾波だ!綾波が来たぞ!」「うわあぁぁ!助けてくれー!」

2016-08-13 16:57:13
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

鬼神は一直線にヲ級目掛けて進軍する。多くの深海棲艦は恐れをなして道を譲り、恐れず立ち向かった者は等しく細剣によって薙ぎ払われる。四方八方を敵に囲まれた綾波は片手に連装砲を握り、迫り来る敵を斬り、撃ち抜く。特に狙いは定めていない。狙わずとも撃てば当たる程敵がいるからだ

2016-08-13 16:59:15