takagengenさん:午前0時の小説ラジオ「文章」 2/15/2011
「文章」28・センは働き続けた。「労働」を家族に捧げたのである。だが、やがて働けなくなると、彼女が持っていた最後の財産、「愛」を捧げた。だから、センの死は、断じて「悲劇」ではないはずだ。
2011-02-15 01:24:25「文章」29・朝倉さんは、センは自分の仕事を「天職」と考えていたのではないかと考えている。日々の労働は苦しい。「和讃」を歌わねば耐えられぬほどに。だが、その労働は「無意味」ではなかった。彼女には守るべき家族があったからだ。家族を守りながら、同時にセンは守られていたのかもしれない。
2011-02-15 01:27:49「文章」30・いまも、センは、故郷の畑のすぐそばの墓に眠っている。センが亡くなってから半世紀以上が過ぎたのに、センの思い出はいまも鮮烈で、家族たちは忘れてはいない。センがイヤがった木は、切られて、センの墓からは、山野がよく見える。
2011-02-15 01:30:35「文章」31・我々はどうだろう。祖父や祖母を、亡くなるとすぐに忘れてしまうわないだろうか。「老い」を恐れ、目につかぬところに追いやろうとしてはいないだろうか。センの「文章」に守られ、まるでセンがつい最近まで生きていたように感じる、センの家族のことを考える時、ある感慨に襲われる。
2011-02-15 01:34:50「文章」32・センの未熟な「文章」には、圧倒的な何かが存在している。もし、ぼくたちが字を知らず、文章を書いたことがないとして、そのためにだけ字を覚えようとするメッセージがあるだろうか。あるいはそれを伝えたい相手がいるだろか。その相手のためにだったら死んでもいい思えるような誰かが。
2011-02-15 01:37:24「文章」33・ぼくは、そんな「文章」を書きたいと思う。生涯、一度も文章を書かず、書こうと思いたった時、まっすぐそれを目指した、センのような文章をこそ書きたいと思うのである。その文章を送り届けたい相手がいるのならば。以上です。雪の夜、深夜まで聞いてくださってありがとう。お休みなさい
2011-02-15 01:40:12