【ザ・ソウル・メイド・ウィズ・ヘヴィ・メタル】
- juteion_smynin
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(ドーモ、ジューテイオンの中の人です。これより19:30から、ジューテイオン幼少期にまつわるテキストを投稿します。普段テキストを書かない者により拙い作品ですが、温かい目で見ていただけると幸いです。実況タグは #juteitxt です。ヨロシクオネガイシマス!)
2016-08-14 19:20:42(ジューテイオン以外のすみゆ忍はほぼ出ません。幼少期/現在のジューテイオンと、オリジナルのキャラクターが出演します。)
2016-08-14 19:23:21ネオサイタマ───ここは繁華街のひとつであるヨリマツ・ストリート。 立ち並ぶ雑居ビル、『スゴイコレ』『旺盛!サービス』といった文言を躍らせたきらびやかなオイランハウスやバーに埋もれて、その店はあった。1 #juteitxt
2016-08-14 19:33:55一階バー入口の脇に掲げられた、小さい、しかしどこかどっしりとした存在感を放つ看板。そこには『メタルショップ 咆哮』の文字と斜め下向きの矢印があり、矢印の先には地下へと続く狭苦しい階段がある。その店はまさにネオンに埋もれるような格好で存在した。2 #juteitxt
2016-08-14 19:36:22階段を下り扉を開くと、腹に直接響くような重低音に出迎えられる。店内の壁にはバンドのポスターが所狭しと飾られ、棚にはレコードがぎっしりと陳列されている。バンドTシャツや鋲付きの革製ジャケットの類いも多数売られており、まさしくメタリストのための店といえた。3 #juteitxt
2016-08-14 19:38:59カシラ・トボロは『咆哮』のオーナーだった。熊のような大男であり、スキンヘッドに蛇のタトゥーを施した彼を一目見たらば、震え上がる者がほとんどであろう。 だが彼にとっての幸せは、日々実直に仕事をこなす中で、訪れる客との他愛ないやり取りを楽しむことだった。4 #juteitxt
2016-08-14 19:41:38「それじゃあオタッシャデー」「おう、オタッシャデ」 今日もカウンターでささやかな会話を交わし、カシラはまた一人になった。ここに来るのはほとんどがヨタモノめいた若者だが、時折近所で働くオイランや、ごく稀だがカチグミめいた若いサラリマンも訪れる。5 #juteitxt
2016-08-14 19:44:20ヨリマツ・ストリートは治安が良いとはいえぬが劣悪ではない。だがメタルすなわちヨタモノが聴くものであるとのイメージは根強く、カチグミがそのような趣味を周りに悟られれば、たちまち彼の評判は地に落ちるだろう。それでもオフィス街区からこっそり来店する者は確かにある。6 #juteitxt
2016-08-14 19:46:59だがカシラにとっては、客のステイタスやらクラスなどは問題でない。ここに来る者は皆、心の底からメタルを愛している。無論カシラ本人もだ。 メタルを愛する者同士、垣根はない。それがカシラのスタンスだった。7 #juteitxt
2016-08-14 19:49:48大音量BGMの中、棚の整理でもとカウンターを出ようとしたその時、衣服に大量の缶バッジをつけた痩せぎすの中年男が入店した。 「ドーモ」「ドーモ、ランギノ=サン。『狂い蜂』の新譜入ってるぞ」 言い終わらぬうちにカシラはカウンターの奥の棚を漁り始めた。8 #juteitxt
2016-08-14 19:52:36「実際いいタイミングだったな」ランギノと呼ばれた男は嗄れ声で笑った。「頼んでもねえのに取り置いてくれてンだもんなあ」 「おめえさんいつもこいつらの新しいのが出たら買ってくだろが。せっかく来てくれて売り切れましたじゃ格好がつかん」「ハッハ、そりゃそうだがな」9 #juteitxt
2016-08-14 19:55:39「『狂い蜂』はもうベテランの域だし、ドゥームメタルなんて重々しいやつなんざ若いのは好かねえんじゃねえか」 からから笑うランギノに、真新しいCDを持って振り返ったカシラは言う。 「それがそうでもねえんだ。もう9枚売れてる。さっき並べたばかりなのにだぞ」10 #juteitxt
2016-08-14 19:58:46「俺も好き!」ほー、そいつは嬉しいねというランギノの返事は、甲高い声に掻き消された。二人の中年は反射的に辺りを見回す。数秒ののち、ようやく彼らはその声がランギノの腰の辺りから聞こえることに気付いた。声の主はカシラをまっすぐ見、キラキラと目を輝かせていた。11 #juteitxt
2016-08-14 20:01:47