BBB劇場【メタルガルド戦記】#1
- ahiruchan_phi
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痛みに歯を食いしばりながら、ブラッディスウェットは空中から竜の全貌を見た。金属鎧めいて硬質な鱗に覆われ、頭部は騎士の兜のごとき形状。見上げるほどの巨躯は陽を受けて一部金に輝く。およそ人の対する存在ではなかった。ブラッディスウェットは木の幹に背を打ち付け、そのまま地面に滑り落ちた。
2016-08-19 22:09:56「グワーッ!」ブラッディスウェットは膝をつく。バタリングラム・ドラゴンは迫る。竜が人を殺すことに意味があるのか。それは人が羽虫を殺す理由に似たものか。「イヤーッ!」ブラッディスウェットはせめてもの抵抗とニンジャソードを抜いた。「Yeeearttt!」突き出した剣は巨木に弾かれた。
2016-08-19 22:13:33弾き飛んだ剣はどこか森の深くへと消えていった。「Yeeearttt!」「イヤーッ!」ブラッディスウェットはバタリングラム・ドラゴンの股下を潜るように身を投げ出し、巨木を回避した。左手のヒビの入った盾を投げ捨てた。重い鎧を疎みながら、ただ遠くへ逃げることだけを考え、走った。
2016-08-19 22:16:28折られた木々を踏み越えながら、森の中へ。「Yeeearttt!」バタリングラム・ドラゴンは木々をなぎ倒しながら追ってくる。ブラッディスウェットはヤバレカバレ、後方に騎士スリケンを投擲。鋼めいた鱗がそれを弾いた。「勝てるか、畜生……!」ブラッディスウェットを焦りと恐怖が包んだ。
2016-08-19 22:19:31「伏せヨ!」どこからか声が飛んだ。ブラッディスウェットは本能的に従った。間一髪、頭上を通り抜ける巨木薙ぎ払いを回避できた。次いで倒れ来る周囲の木々も注意深くかわす。「Yeeearttt!」ブラッディスウェットは咆哮を背に再び走り出す。倒れた木々を踏み越えて。そのときだった。
2016-08-19 22:23:09木の幹の上へ踏み出したブラッディスウェットはバランスを崩す。「グワーッ!?」木が腐っていたのか、あるいは何らかの何かか……いずれにせよ、他より著しく小さかったその木の密度は、鎧纏った騎士の体重を支えきれなかった。木の中へ足が沈み込む。易くは抜けぬ。追撃の巨木薙ぎ払いが迫る。
2016-08-19 22:27:30巨木が振り抜かれた。だがブラッディスウェットの上半身が吹き飛ぶことはなかった。巨木は軌道上のあるものに当たり、中途で折れ、その長さを失っていた。「石碑が」騎士の聖地、夭折のメタルガルド騎士ハスカールの墓標がそこにあった。墓石は巨木の衝撃でずれ、その下の墓穴が露わになっていた。
2016-08-19 22:31:01「Aaaargh麻痺毒!」バタリングラム・ドラゴンが突然悶え、動きが目に見えて鈍化した。何らかのトラップにかかった様子だった。ブラッディスウェットは木から足を無理に引き抜き、墓標へ向かった。墓穴には骨は見られず、ただ一振の剣だけが納められていた。メタルガルド正騎士ニンジャソード。
2016-08-19 22:34:09