紡ぎ歌

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1 ただいま 暗い部屋。 返事をするかのように、冷蔵庫がガタリと音を立てる。 すばるが帰ってこないのが分かっているから、連日友達と飲み歩く。 もう何日目？ 記憶すら曖昧になる程に。

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2 寝るだけに帰る部屋。 消し忘れた電気も シンクに置きっぱなしの食器も 干した洗濯物も めくれた布団も 全部、朝出て行ったときと何一つ変わらないまま。 すばるがいないだけで、部屋がこんなにも広くて寒い。

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3 寂しさを紛らわすために友達を誘う。 冷たい布団に耐えられるようにお酒で体を暖める。 会いたくなるからラジオは聞かない。 せめて夢ででも…って思うけど、目を覚ましたときに堪らなくなるから、会いたくない。 電話やメールではいつもの私。

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4 部屋に残るすばるの痕跡。 それを抱き締めながら、広いベッドで独り、今夜も眠る。 こんな私。 すばるには秘密。

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1 今日あったこと 明日の予定 遠くのあいつとの他愛もない会話 受話器から聞こえる、いつもの声

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2 でもな？ あんな？ 言わんと分からんけど 言わんくても分かることもあるんやで？ アホな俺やけどそれっくらいは分かんねん たまには我慢せんと泣き言言ったらええねん そんなんも受け止めれんほどちっちゃい男じゃないつもりやで？

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3 言っても変わらない 耐えれなくなる 帰ってきたらいっぱい言うから 顔見ていっぱい泣くから だから今は言わない それって言ってるんも同じやで？ でも違うって、あいつは言うから ほんなら、今はわからんフリしとく

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4 俺、アホやから 目の前のことしか考えられへんから 今はお前のことなんて気にしてられへん。 でも、帰ったら力一杯抱き締めるから もう嫌ってくらい抱くから 全部受け止めるから それで、ええな？ めんどくさくて愛しい 俺の女 ほんまは考えてること 俺も多分同じやで。

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すばるが帰ってくる お風呂で念入りに体を洗って お手入れして クリームを塗って 念入りにブローして すばるの好きな下着をつけて 抱かれる準備を万端整えたら あとはもう一目散 胸の中に飛び込むだけ

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1 言葉もなく抱き合って、ベッドになだれ込む。 唇を貪りながらお互いの服を剥ぎ取って 性急に高め合って 唇を合わせて抱き合ったまま、隙間なくぴったりと繋がる。 ビリビリと強烈な快感に、無意識に体が上へと逃げる。 それをグッと引き寄せられて、奥まで。

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2 すばるを、私を、 中に感じながら、動かずただ抱き締めあう。 離れていた時間を埋めるように 冷めてしまった熱を取り戻すように すばるの形を思い出して、ぴったり包み込むまで。

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3 舌を絡めたまま、胸を合わせたまま、手を握り合ったまま、二人動き出す。 少しでも繋がっていたいから 殆ど腰を引かずに 奥へ奥へ もっと奥へ 突き破りそうなくらい、奥へ 私も腰を浮かせて擦りつけて、更に奥へ 内臓が突き上げられるような息苦しさ 嬌声も呼吸も全部すばるの中

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4 胸もソコも、きゅうっと締め付けられて 涙を流しながら二人で達した。 寂しかった 寒かった 会いたかった 約束通り、顔を見て。 うんうんって、キスを落としながら頷く。 俺も会いたかった。 嘘。ゲームばっかしてたんでしょ？ 繋がったまま、クスクス笑って。

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5 ただいま おかえり またすぐ遠くへ行く貴方 でも今だけ 今だけはこの腕の中で 遠い距離と時間に 私が 貴方が 耐えられるように もっともっと深く繋がりたい

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6 どんなに離れていても、傍にいる なんて、陳腐な言葉。 私はそんな強くないの。 一緒にいたいの。 手の届くところで 触れる距離で こうやって、抱き締めてたいの。 すばるも、そうでしょ？ 知ってるの。 でも、それより大切なことが、ある。

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7 だから抱き締めて。 もっと求めて。 忘れないように。 耐えられるように。 もうお腹いっぱいって、私が音を上げるまで。 ううん。 降参しても、もっともっと。 求められたら求められただけ それが次への糧になる。 強がる元気を、私にちょうだい。

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1 朝、一人目を覚ます。 隣にいるはずの人は既にいない。 冷たいシーツが彼の忙しさを物語る。 最近、こんなことが増えた。 朝早く出て夜遅く帰って来たり、泊まりだったり。 仕事だって、いいことだって、わかってるけど、今までこんなに離れることがなかったから、やっぱり寂しい。

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2 時間も睡眠時間も足りないのに、いつもより執拗に求めて来るすばる。 朝、起きることも見送ることも出来ないくらい、激しく。 こんなことも、最近増えた。 寝なきゃだめ。 少しでも体を休めなきゃ。 わかってるのに、拒めない。

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3 離れていた時間を取り戻すように、これから先の隙間を埋めるように、抱き合う日々。 それでも足りない。 お互い手を伸ばして、濃密に与えて貪り合う。 私は聞き分けのいい出来た女じゃない。 嫉妬深くて寂しがりで我儘。

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4 それでもこうしていられるのは、すばると一緒に暮らしてるから。 すばるがここに帰ってくるってわかってるから。 一番近くにいるから、逆に保てる距離感。 離れていたら、もっと求めてしまう、面倒な女。 それが私。 そして、すばるも。

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5 折れるくらい抱き締めて 痛いほど打ち付けて 溢れるほど真っ白に汚して 溶けるくらい甘くて優しくて強くて切ない目で 火傷するくらい熱い熱で私を狂わせて 彼は行った。 最後に見たのは満足げに笑った顔。 笑ってて欲しい。 そうしたら皆ハッピーだから。

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6 笑って帰ってきて欲しい。 そうしたら私は幸せだから。 痛む下腹部に手を当てて思う。 この痛みがすばるの気持ちを物語ってるようで、少し嬉しい。 離れたくない。 けど、独りじゃない。 ふらつく足で立ち上がる。 繋がってるはずの空を見て、行ってらっしゃいって、呟いた。

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1 大阪行って海外行って、久々に家に帰ったら知らん女が家にいた。 いや、懐かしい女？ 単に髪切っとっただけのことやけど。 少し恥ずかしそうにおかえりっていうお前。 「失恋でもしたん？」 思わず口を突いて出た。 『そう。あんまり放っておくから』 お前はそう言って笑った。

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2 しゃあないやん、仕事やもん。 久しぶりに抱き合った。 激しさに引きずられるように、疲れ果てて眠りにつくお前。 時差ボケのせいか全然眠くならんくて、短くなった髪の毛を掬っては落として寝顔を眺める。

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3 何や、昔に戻ったみたいや。 初めて会った頃はそんな髪型しとったな。 一瞬今か昔かわからんくなって、あんなこと言ってもーた。 そう変わらんとか思っとったけど、そんな頭してたらさすがに少し老けたんわかるな。 寝顔は変わらんけど