1 転勤になった... 営業職やから 転勤はつきものなんやけど なんとなくこのまま 関西で骨埋めるんかなって 勝手に思とった それがある日突然 東京勤務やって 大学の先輩の横山さんが 部長になって 俺を呼び寄せてくれたらしい
2016-08-31 09:37:162 初めての土地...ちゅうても 横山さんも同期のヤツらもおるし 何度か出張では来たことがある それでもちょっと緊張してんかな 早よ目が覚めてもうた "...11月生まれのあなたは..." なんとなくつけていた テレビの声にハッとする
2016-08-31 09:37:413 "...新しい出逢いがあるかも... ラッキーカラーはレモンイエロー" 思わず画面に釘付けになって それから...可笑しなった 新しい出逢いだらけに 決まってるやん... それでもいちばん黄色の分量が 多いネクタイを選んで部屋を出た
2016-08-31 09:38:034 "ほんま久しぶりやなー おまえちょっとポッチャリしたな" 「へ?そ、そうすか? 先輩、自分がやせたからって...」 "あはは! まあいっぺん飲みに行こや 今日はこの後出張入ってるから... ...あ、〇〇さん~ 営業の△△さん呼んでくれへん?"
2016-08-31 09:38:255 横山さんが立ち上がって 女子社員を呼び止めた あ、さっきお茶出してくれた人や 『今日△△さんお休みなんです』 "そうなん? ほな案内したってくれるか これ、丸山くん...俺の後輩やねん" 『はい』 "ほな頼むわ〜"
2016-08-31 09:38:576 頼みの綱の横山さんは 俺を任せて出張に出て行った 『わたし総務の〇〇と言います』 ...レ、レモンイエロー...! 『...?...行きましょうか?』 「あ...は、はい!」 彼女が抱えてたのは レモン色のファイルやった
2016-08-31 09:39:217 よう考えたら黄色のファイルなんて ごくありふれてんのに おそらくひと目で彼女を 好きになった俺は 勝手に"運命的な出逢い"に 舞い上がってもうてた
2016-08-31 09:39:488 『横山部長... 大阪弁の方と話される時は 生き生きしてらっしゃる気がします』 「そ、そうですかぁ...」 ...ほんまは僕、京都なんですけど 彼女が話す時のクルクル動く瞳や 形のいいくちびるに見とれてて 思ってることの半分も言えんかった...
2016-08-31 09:40:099 転勤してきたその日に 一番最初に出逢った人に恋するなんて 自分でも信じられへんけど 社内をひと通り 案内してもらい終わった時には 完全に好きになってもうてた
2016-08-31 09:40:3010 ろくな会話もできひんくて つまらん男やって思われたかな いや...あんま最初から べらべらしゃべんのも 同じ会社やしきっとそのうち... そう思てた
2016-08-31 09:40:4911 ところがフロアが違うだけで こんなにも顔合わさんもんか こっちは営業で 外に出てる方が多いし 内勤の日にそれとなく探してみても いっこうに見当たらへん
2016-08-31 09:41:1112 それどころか 昼休み... 同期らしいグループで過ごす 女の子のどの中にも彼女はいてない 帰りも同じ... どんなに早く戻っても もう帰ってしまってる なんでやろ どこ行ってんの... 彼氏と会ってるとか?
2016-08-31 09:41:3213 片想いは募るばっかりで いっこも親しなられへん 今さらどう声かけたらええもんやら でも発見したことがひとつ それは... 彼女の持ち物は ほんまに黄色が多いこと
2016-08-31 09:41:5214 傘 財布 スマホケース 制服の上に羽織るカーディガン デスクに置いた小さい写真立ても みーんな黄色 ここまでそろってたら 偶然やないやろ レモンイエローの人... やっぱり運命の人なんやって
2016-08-31 09:42:1215 ある日、外から帰ったら 営業部のフロアに彼女と△△さん △△さんが顔の前で手を合わせてる "お願い!お願いっ!" 『しょうがないなあ...』 "ほんとー!?ありがと!!" 俺の気配に気づいた彼女は ペコっと頭を下げて行ってしまった
2016-08-31 09:42:3416 「なに拝んでたん?」 "合コンのかわりを頼んでたんです" 「...っ合コンー!?〇〇さんにぃ〜?」 "そうですよ、なにか?" 「なっ、なにかって...」 "お局様主催の合コンですからね、 断れなくって" 「ほななんで行けへんの、△△さんはー」
2016-08-31 09:42:5317 "彼が...行っちゃダメだ、って♡" 「彼がって...、え? ほんならあの子は彼氏おらんの?!」 ちゃうとこに突然食いつく俺に まゆをしかめる△△さん "なんですか...丸山さん... もしや〇〇ちゃんのこと...?"
2016-08-31 09:43:1118 あっさり△△さんに気取られる... バレてもうたらしゃあない ずっと好きやけど まだろくに話したこともないっちゅう 彼女の同期やっていう△△さんに もう全部打ち明けてまお
2016-08-31 09:43:3219 "はぁー、赴任してきた日から...って どんだけなんですか" 「面目ない...」 "そんなんじゃ〇〇ちゃんには 一生気づいてもらえませんよ" 「どないしたら...」 "アタックあるのみです! ちょっと強引かな、ぐらいの"
2016-08-31 09:43:5420 「そんなことして嫌われへん?」 "もっと自信持って! モテるんですから丸山さんは!" ちょっと前に社内の女の子に 告られたこともう耳に入れてた ...さすが情報通 "心に決めた人って 〇〇ちゃんのことだったんですね~"
2016-08-31 09:44:1321 "とにかく...ボヤボヤしてると 誰かにかっさらわれますよ" "誰か"っていうとこに やたらチカラ入れるから 心当たりがあるんちゃうかって 急に不安になってくるんやけど 今は彼氏おらんって わかっただけでもよかった
2016-08-31 09:44:3723 そして週末... おそらく今日なんやろな お局様主催の合コン こんな日に限って やたらと仕事がたてこんで 定時までに会社に戻れたら 行かんとって...って言お思たのにな 自分にいいわけしながら 携帯をチェックする
2016-08-31 09:45:1524 ...ん? △△さんからのメール "〇〇ちゃん残業で 合コン行けなくなりました 私だけ幸せだったら 申し訳ないし♡" え、なにこれ...残業? うそやん~
2016-08-31 09:45:3225 慌てて戻った社内には もう人の気配がなくて 「やんな... そううまいこといくわけが...」 バン...バン... え...? 物音の方へ行ってみると コピー機を叩いてる彼女がおった
2016-08-31 09:45:55