チョコレートアソート

バレンタインのシリーズ妄想。内容量:7粒
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レオナ @leo_msk_tdys

【チョコレートアソート・1粒目〜raspberry sauce】 「おはよう、章大」 「おはよー」 はい、と差し出した私の手を見て、章大は眉間にシワを寄せた。 「何、これ」 「何って、チョコだよ。今日はバレンタインでしょ」 #エイトで妄想

2016-02-11 00:38:21
レオナ @leo_msk_tdys

【2】 「めっちゃ義理やんか、これ!」 私が章大に差し出したのは、棒の先にスカル型のチョコが付いたロリポップタイプのもの。 「だって義理だもん。いいじゃない。章大、スカル好きでしょ」 「好きやけど……」

2016-02-11 00:39:32
レオナ @leo_msk_tdys

【3】 ぶつぶつ言いながら納得のいかない顔でそれを見つめる章大と並んで、会社までの道を歩く。 章大とは大学の同級生で、偶然にも同じ会社に入り、同じ部署に配属された、言わばくされ縁のようなもの。 優しくて、見た目の可愛らしさに反して意外と男らしくて、頼りになる友人だ。

2016-02-11 00:41:35
レオナ @leo_msk_tdys

【4】 会社のエントランスを横切り、一緒にエレベーターに乗り込む。 狭い箱の中にいる女の子たちからは、甘い香りと共に心なしかソワソワした空気を感じる。 エレベーターを降りフロアを歩き出すと、章大がゆっくりと口を開いた。 「……大倉はやめといた方がええと思うけどなぁ」

2016-02-11 00:42:46
レオナ @leo_msk_tdys

【5】 「なによ、それ」 「大倉やで?どんだけライバルおると思てんねん」 「っ、……そんなのわかんないじゃない」 「お前なんか、受け取ってももらえへんわ」

2016-02-11 00:44:31
レオナ @leo_msk_tdys

【6】 カッチーン! 「章大のバカ!チョコ返して!」 「バカってなんや!返さへんわ!」 ふんっとお互いに顔を背け、デスクに着いた。 くやしいー!くやしいくやしい! 章大め、絶対大倉くんに受け取ってもらうんだから!

2016-02-11 00:45:38
レオナ @leo_msk_tdys

【7】 ……とは言っても、相手は社内一のイケメンで、彼を狙う女の子がどれだけいることか。 章大の言う通り、私の望みが薄いことなんて自分でもわかってる。 でも乙女の恋する気持ちは、そんなことでは割り切れないのだ。

2016-02-11 00:46:12
レオナ @leo_msk_tdys

【8】 昼休み、大倉くんを資料室に呼び出した。 章大の言葉と自信のなさが頭を掠めたけれど、もう後戻りはできない。 深呼吸して、大倉くんを待つこと5分。資料室のドアが開いた。 「冴子ちゃん、お待たせ。どうしたん?」

2016-02-11 00:47:35
レオナ @leo_msk_tdys

【9】 柔らかい笑顔と優しい低音が私を包み込む。と同時に、緊張感が急激に湧き上がる。 「あ…ゴメンね、呼び出したりして。あの、私…………大倉くんが、好き、です。これ、受け取ってください」 「…ゴメン。受け取られへん」 大倉くんの口から出たのは、静かな謝罪の言葉。

2016-02-11 00:49:01
レオナ @leo_msk_tdys

【10】 「……チョコが苦手なら、食べてくれなくてもいいの。受け取ってもらえないかな……?」 精一杯、私にとって都合の良い理由をつけて、そう言った。 「悪いけど、好きなコからしか貰わんことに決めてん」

2016-02-11 00:50:19
レオナ @leo_msk_tdys

【11】 * * * 「うわーーん!うっ、うぅっ……」 ガマンにガマンを重ね、やっと迎えた終業時間。私は章大と、馴染みの居酒屋の隅のテーブルで、涙を溢れさせた。 「……オレが泣かせてるみたいになってるやん」

2016-02-11 00:52:41
レオナ @leo_msk_tdys

【12】 呆れた顔をしつつも、私に付き合ってくれる章大。おまけに、よしよし、なんて頭を撫でてくれる。ホント、いいヤツだ。 っていうか、今日はバレンタインデー。章大だって社内ではかなり人気がある。予定はなかったのかな、なんて今更ながら思う。 そして、ふと思いついた。

2016-02-11 00:54:57
レオナ @leo_msk_tdys

【13】 「もしかして、(大倉くんに好きな人がいるって)知ってた…?」 ちょっと目を泳がせて、目の前のビールをそのノドに流し込んで、気まずそうに自分の髪をくしゃっと掴んで、章大が言った。 「…知ってた。って言うか、それもあるけど、…渡したくなかってん」 「…え?」

2016-02-11 00:56:57
レオナ @leo_msk_tdys

【14】 「他のヤツに、渡したくなかってん」 そう言って伸ばした手を私の頭の後ろに回し、ほんの少し引き寄せた章大が私に、キスをした。 【チョコレートアソート・1粒目〜raspberry sauce・終】 pic.twitter.com/CvPPzzBdaO

2016-02-11 01:05:47
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【チョコレートアソート・2粒目〜milk ganache】 彼を好きになったきっかけは、半年前。先輩から、仕事の失敗の責任を押し付けられそうになっていた時 「彼女は何も悪くないでしょ。自分の責任は自分で始末したらどうですか?」 そう言って助けてくれた。 #エイトで妄想

2016-02-11 13:18:07
レオナ @leo_msk_tdys

【2】 その直後に私に向かって見せた、柔らかい笑顔がとても印象的で、一目で私の心は撃ち抜かれた。 それから私は、彼の笑顔を見たくて、気づけば彼を目で追っていた。 今日はバレンタインデー。 恋する乙女たちの例にもれず、私のバッグの中には、彼へのチョコレートが潜んでいる。

2016-02-11 13:19:28
レオナ @leo_msk_tdys

【3】 ただ、少し気が重い。 彼を狙っている女子社員は数知れず。 そんな中で、普段ろくに彼と話したことのない私に、チョコを渡す勇気なんてそうそう出るわけがなく。キーボードを打ちながら、時折小さなため息をつく。 そうして昼休みが近づいた頃、聞こえてきた女子たちの会話。

2016-02-11 13:21:50
レオナ @leo_msk_tdys

【4】 「聞いた?大倉さん、今年は誰のチョコも受け取ってないらしいよ。“チョコ、苦手だから”って」 ……チョコ、キライなんだ。 どうしよう。 そんなこと聞いちゃったら、ますます渡せないよ……。 気持ちはかなり落ち込んで、一人で食堂で食べるお弁当も喉を通らなかった。

2016-02-11 13:22:56
レオナ @leo_msk_tdys

【5】 「めぐみちゃん、おつかれー!……あれ、なんか元気ない?」 「……あ、丸山くん。そんなことないよ、元気元気!」 声をかけてくれたのは、同僚の丸山くん。明るくて周りに元気をくれる人だけど、今日はなんだかいつもと雰囲気が違う。

2016-02-11 13:24:00
レオナ @leo_msk_tdys

【6】 「丸山くんこそ……元気、ない?」 少しだけ目を見開いて私を見た丸山くんは、苦笑いしながら言った。 「……あは。恋の病、ってとこかな」 切なげな彼の笑顔に、自分が重なった。

2016-02-11 13:24:59
レオナ @leo_msk_tdys

【7】 午後の作業のために、昼休みが終わる頃に資料室に向かった。 ドアが少し開いている。ドアノブに手をかけると、中から声が聞こえた。 「……ゴメン。受け取られへん」 「チョコが苦手なら、食べてくれなくてもいいの。受け取ってもらえないかな?」

2016-02-11 13:26:43
レオナ @leo_msk_tdys

【8】 「悪いけど、好きなコからしか貰わんことに決めてん」 大倉くんと、隣の部署の女の子だった。 “好きなコ” その言葉が私の頭の中でぐるぐる回り、午後の仕事はまるで手につかなかった。

2016-02-11 13:27:38
レオナ @leo_msk_tdys

【9】 終業時間を過ぎてもなかなか席を立てず、誰もいなくなったフロアで行き場のないチョコレートをただ見つめていた。 「あれ、沢村さん?」 不意に声をかけられ、入ってきたのは、まさかの大倉くん。 「帰らへんの?……あれ、それーー」 「えっ、あ……」

2016-02-11 13:28:27
レオナ @leo_msk_tdys

【10】 どうしよう。デスクの上のチョコを見つかってしまった。 でも、元々大倉くんに渡すつもりだったもの。渡しても、渡せなくても、どっちにしても捨てられるならーー 「……これ、大倉くんに。よかったら……」

2016-02-11 13:30:44
レオナ @leo_msk_tdys

【11】 いい結果は望めないとわかっていても、すごくドキドキして、声が震える。 心臓が破裂しそうなほど、鼓動が早い。 逃げ出したい衝動に駆られていると、大倉くんの優しい声が聞こえてきた。

2016-02-11 13:32:17
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