稲川淳二のつぶやき怪談　2016年8月30日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

障子がむき出しになってて、部屋の中の電気が点いてるから、 建物全体がボーッと明るい感じで、大きな行灯みたいなんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、その明かりが、そこら辺の地面に反射して光ってるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「こりゃ、すげえなぁー」 ってみんなで驚いてたら、旅館のおかみが出て来たんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「どうも、いらっしゃいませ」 「いえ、こちらこそ、お世話になります。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それにしても、立派な旅館ですねぇ」 「いえ、そんなことありません」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「そんなことないっていっても、そんなことありますよ」 「いえいえ、お気軽にお使いください」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「いや、こいつから話しているかとは思うんですけど、 私たちロケで使わせていただこうと思ってましてね。 ほかのお客さんの迷惑にならないように気をつけますから」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「いえ、誰も泊まってませんから」 「えっ誰も？」 「はい、そうなんです」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

おかしいんですよね。 ちゃんとした旅館なのに、誰も泊まってないなんて･･･。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「変だなぁ、化け物屋敷なんじゃねぇか」 スタッフ連中と小声で話しながら、旅館に入りました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

玄関から入って行くと、妙なんですよねぇ、建物の造りが･･･。 廊下を歩いてるといくつか角があるんですけど、 その角っていうのが90度になってないんですよ。 なんか曲がってるんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのうえ、廊下がだんだん坂になるんですよ。 斜めに上がって行く感じなんです。 建物の中ですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

坂なんてありませんよ、普通。 それだけじゃないんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

突然、目の前に白い壁。 と、思ったら、それって蔵なんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

旅館の１階の中ですよ。 わけわかんないでしょ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、その蔵の壁の窓には鉄格子ですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「こりゃ、驚きだよ」 「それにしても立派すぎるよなぁ」 「おかみはあんなこと言ってたけど、由緒ある旅館に違いないよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

みんな口々にこんなこと言ってましたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ちょっと歩いたら、階段があったんですがね、 何段か上がるとグルリと回り込むような水平な通路があって、 また何段か上がるとグルリと水平の通路の繰り返しなんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

普通の階段みたいな踊り場がないんですよね。 そんな調子で上がっていって3階に着いたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

さっそく、借りた部屋の戸を開けると、凄いんですよ、ホコリが。 ホコリが積もってるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

急に私たちが来たもんだから、掃除が間に合わなかったんでしょうけど、 それにしてもひどいもんでしたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「この旅館、ホントに誰も泊まりに来ないみたいですね」 スタッフがこう言うのも、もっともなんですよね。 みんなで、掃除しましたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

これじゃあ撮影なんて、できないですからね。 で、私が描いた絵コンテ通りにセッティングを始めたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あんまり雰囲気のいい旅館じゃないし、早く済ませて帰ろうよ」 ってわけで、着いたばかりだったんですけど、さっそく始めたんですよ。