「キャラクター」とはヨーロッパとアメリカの知財戦争

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uroak_miku @Uroak_Miku

1)数年前に夏目房之介ゼミで「アニメと商品化権」をお題に語らせていただいたとき、質疑応答でかみ合わず、さらに夏目さんが奇妙なひらめきで論じだしたためによけい混乱してしまった件を、今もうじうじと考えています。

2016-09-10 11:17:08
uroak_miku @Uroak_Miku

2)今思うと、あれはいくつかの面白い論点が折り重なっていたのだとわかる。質問者がそこをわからないまま質問してきたため、私には何を聞かれているのか理解できなかった。

2016-09-10 11:18:20
uroak_miku @Uroak_Miku

3)これは前に別のアカウントでも論じたことですが「翻案権」の理解の問題が含まれていたのです。ミッキーマウスのアニメからミッキーそのものが知財として自律するのは「翻案権」の考え方によるのか、と。質問者はそう聞いてきたわけではないけれど、こういう論点を結果的に含んでいた。

2016-09-10 11:20:31
uroak_miku @Uroak_Miku

4)ここはさらに拡張できる。人気まんがをアニメにすると主人公の絵柄が別物にされてしまうことはよくあります。それでも原作まんがの主人公と同一キャラクターと認識される。こういうのは「翻案」と呼べるのかな?ほかにも「翻案」の解釈をめぐって面白いことが浮かび上がってきます。

2016-09-10 11:23:40
uroak_miku @Uroak_Miku

5)このあたりのことを小田切博は『キャラクターとは何か』のなかでベン図を使って説明していましたが、あれを読んでも腑に落ちなかった。一見、公理に思えるけれど実は現状追認のための後付けの理屈だと今は思います。

2016-09-10 11:26:51
uroak_miku @Uroak_Miku

6)法律とか条約とか、そういうのはヨーロッパの発明品です。法は世界のどこでも発生したけれど、ちょうど現代の数学がヨーロッパの数学者たちによって体系化されたものが世界標準語になっているように、法理論もヨーロッパで整備されたものが世界標準です。人権とかね。

2016-09-10 11:37:46
uroak_miku @Uroak_Miku

7)ところが20世紀になってアメリカが台頭。ヨーロッパの法理論では説明しきれないものが生まれてきた。そのひとつに「キャラクター」がありました。芸能人ではない(なにしろ生身の体を持たない)のにまるで人権を有するかのように商習慣の上では扱われるのだから。

2016-09-10 11:40:27
uroak_miku @Uroak_Miku

8)チャップリンの絵柄を使って何か商品を売り出したらチャップリンが怒って裁判を起こすし実際そういう事件がありました。しかしミッキーマウスを使って何か商品を売り出した場合、ミッキーは怒り出すのでしょうか。しませんよね架空の存在なのだから。

2016-09-10 11:41:43
uroak_miku @Uroak_Miku

9)作者のウォルト・ディズニーが訴えるでしょう。事実そういうことが昔からあったし。架空の存在なのに実在の芸能人と同格というわけです。よく考えたら不思議。これはヨーロッパの法理論ではもう説明できない。アメリカで生まれた法理論です。

2016-09-10 11:43:42
uroak_miku @Uroak_Miku

10)ミッキーマウスはやがて世界進出し、ディズニー社はその商品化で稼いだ。どの国でも容赦なく裁判を起こした。ヨーロッパの法理論でまわる世界のなかで、堂々とアメリカの法理論を訴え、そして勝訴を積み重ねていった。

2016-09-10 11:45:11
uroak_miku @Uroak_Miku

11)キャラクター論には、ヨーロッパの価値観とアメリカの価値観の衝突というテーマがあります。しかしそこまで喝破した論を私は目にしたことも耳にしたこともない。私ぐらいだと思いますここに気が付いているのは。

2016-09-10 11:47:17
uroak_miku @Uroak_Miku

12)ヨーロッパの法理論とアメリカの法理論が衝突するバトルフィールド。それが「キャラクター」の正体です。この衝突をどう諫めてきたかは、国によって違うわけです。各国の裁判所がそれぞれに相克のための法理論をひねり出してきました。日本でもそうです。

2016-09-10 11:48:57
uroak_miku @Uroak_Miku

13)憲法は戦争放棄を謳っているけれど現実の世界で軍事力の完全放棄なんて不可能だし、じゃあ「防衛力」ということで自衛隊を認めましょう、というのとどこか似ている。

2016-09-10 11:50:23
uroak_miku @Uroak_Miku

14)比喩がまた微妙なものを出してしまいました。今はイメージで理解してください。ことばのあやで上げ足取りされたくないし。

2016-09-10 11:51:23
uroak_miku @Uroak_Miku

夏目ゼミで「商品化権という概念は法律に書かれているわけではなくて、著作権法、商標法、意匠法、不正競争防止法の組み合わせで『発見』されたものです」とベン図(輪っかがいくつも重なる集合図のあれ)で説明しましたが、先ほどふと気が付いたことがあります。

2016-09-10 20:51:59
uroak_miku @Uroak_Miku

小田切も『キャラクターとは何か』のなかで「キャラクターとは意味と内面と図像の三要素でできており、その一つでも保持されれば同一性が認められる」と論じていました。一見鋭いのですが、電子回路の設計でいうとプラスとマイナスが逆になってる。 pic.twitter.com/kPHrEKsmFm

2016-09-10 20:56:59
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uroak_miku @Uroak_Miku

「キャラクター」とは、ヨーロッパの法理論では説明できないものをアメリカの法理論で説明しようという葛藤の産物だと先に指摘しました。ミッキーマウスが知財として事実まわっている現状を追認するために後付けで理論化されたものだと。

2016-09-10 21:00:21
uroak_miku @Uroak_Miku

小田切のキャラクター三要素説も「キャラクター」の本質を抽出したというよりは、「キャラクター」という現象(そう、現象!)を何とか理屈付けするために後付けされた説明とみるべきです。

2016-09-10 21:03:17
uroak_miku @Uroak_Miku

まんがやアニメの主人公が、架空の存在でありながら実在のスターと同格とみなされ、そのうえ特許物扱いされ、金を稼ぐという不可思議な現象。ヨーロッパでは生まれえなかった魔法。それをアメリカの法理論は「キャラクター」と名付けた。

2016-09-10 21:06:12
uroak_miku @Uroak_Miku

「いわしの頭も信心から」ということわざもあるように、ミッキーの絵がついただけでノートでも鉛筆でも子どもたちがほしがるのだから、魔法ですよね。法理論で魔法は説明できない。そこを強引に理屈づけるために「キャラクター」という概念が発明された。

2016-09-10 21:09:08
uroak_miku @Uroak_Miku

キャラクター論は数あれど、結局どれも隔靴掻痒の感がぬぐえないのは、ちょうどSFファンが「センス・オブ・ワンダー」を、おたく人種が「萌え」を定義しようとして結局定義できなかったのと通じる気がします。

2016-09-10 21:11:24
uroak_miku @Uroak_Miku

法理論では定義しきれないからこそ「キャラクター」と名付けしたものを定義しようなんて論理矛盾です。だからキャラクター論には決定打がけっして出ない。

2016-09-10 21:13:15