はなみるひと

はち公。 @funkastic_8er

126 『レンすまん！』 俺は手を合わせて謝る 『会社から連絡！ なんか俺の持って帰った資料 今すぐいるらしくて 後輩が取りに来るらしいから 一旦家戻るわ！』 「え、あ･･･じゃあ私も」 『いや、すぐ終わるから それに大倉待たせたら悪いし！』 #はなみるひと

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127 困った顔のレンに 『俺の分も･･･残しといてや？』 そう告げると 納得したのか笑って 彼女はタクシーに乗り込み その場から消えていった ･･･それを見届けて 俺はあの家まで走った 『はぁはぁ･･･』 途切れ途切れの息の中 部屋に駆け込む #はなみるひと

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128 そして 最後に残しておいたトランク持った 部屋を出る時 あのサボテンが目に入ったけど この悲しい姿を ユウちゃんに見せる勇気がなくて そのまま 部屋をあとにした #はなみるひと

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129 階下に降りて ダイニングテーブルにスマホを置き 一言･･･メモを だけど言葉が浮かばなくて 【さよなら、レン】 とだけ書いて 逃げるように 家を飛び出した #はなみるひと

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130 さっきとは逆方向に走り タクシーを捕まえ乗り込むと 『う･･･』 我慢していた感情が溢れ出した ────最後の最後まで 嘘をついてごめん レンに真正面から サヨナラを言う自信がなかった こんな意思の弱い 俺を･･･許して欲しい #はなみるひと

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131 『はぁ･･･』 窓から覗く 夕方の空を見ながら この1年を思い出すと 俺はたぶん レンを愛した訳じゃなくて 渇いた心と身体を癒してくれる そんな存在を愛でていたんだと思う それはまるで 花を育てて それに語りかけるような･･･ #はなみるひと

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132 『ありがとう･･･レン』 俺は支えたつもりで いつの間にか 支えられてたんだ 『ありがとう･･･』 ────そういう事にさせて欲しい この感情は 恋愛感情じゃない なぁ･･･そうやろ？ #はなみるひと pic.twitter.com/djEq1Lix9y

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133 その後 ユウちゃんと再会を果たし 俺は 元の生活に戻った ユウちゃんと朝目を覚まして やんや言いながら会社に行って 帰ってきたら 彼女の作ったご飯のいい匂い 彼女の温かい温もり 全てが元通り ･･･のはずなのだけど #はなみるひと

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134 『ユウちゃん･･･？どーした？』 たまにユウちゃんが 1人で泣いてる事があって 〈ん･･･何でもないよ〉 そう言いつつ 誤魔化して抱きつく事があって 最初はよく分からなかったけど その涙の正体に気付いたのは レンと大倉に再会した あの日だった #はなみるひと

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135 〈あの子でしょ？噂のレンちゃん〉 〈私で･･･後悔しない？〉 その台詞で ユウちゃんが 俺とレンの関係について 何らか不安を持ってる事がわかった でもたぶん 聞くに聞けなくて 辛いんだろうとも思った （でも･･･何から言えばいい？） #はなみるひと

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136 でもたぶん その微妙なグレーゾーンが 俺とユウちゃんを ギクシャクさせてる （どうしたらいいんかな･･･） 思い悩んでいたある日 『え？転勤ですか？』 下期からの人事異動が発表され 俺はこの街から 遠く離れた街に行くことになった #はなみるひと

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137 だけどそれは いい機会だと思った 『ユウちゃん。一緒に引っ越そう？』 〈え･･･私も･･･いいの？〉 『もちろん！ だって･･･ずっと一緒やろ？』 〈･･･うん！〉 心機一転 俺達の知らない街での新生活 それは いい事のように思えた #はなみるひと

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138 着々と引越し準備を進めていたある日 ────♪♪ 登録のない番号から着信があって 『？』 新しい勤務地の人かもと とりあえず出てみたら 《おい。丸。俺。》 電話の向こうにいたのは 大倉だった 《転勤やって？ 会社に電話したらそう聞いた》 #はなみるひと

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139 『あーねw』 口の軽い会社やなぁ 《いつ？》 『今週末』 《･･･明後日やんか》 『えへ♡』 《えへちゃうわ･･･》 大倉のため息が響いた 《レンに･･･会わんの？》 あ･･･呼び捨てになってる そっか うまいこといったんやな･･･ #はなみるひと

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140 『今更会うこともないやろ それに･･･ ユウちゃん不安にさせたないし』 《･･･バレてんのか？》 『さぁ･･･でも女の勘は鋭いからw』 笑い飛ばしたつもりなのに 大倉は全然笑わなかった 《じゃあ･･･あれはどーすんの？》 『あれ？って？』 #はなみるひと

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141 《サボテン･･･ 部屋に置いてあったヤツ》 ギクッ 『あー、あれね･･･ あれ、ユウちゃんから貰ってんけど 俺･･･枯らしてしもたし･･･ すまんけど捨てといて？』 《や･･･でも･･･》 それ以上 会話に耐えられなくて 『じゃ！』 #はなみるひと

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142 俺は一方的に 通話を切った 『はぁ･･･』 なんか 後ろめたさが蘇る （あ、そっか･･･） 俺とユウちゃんのギクシャクは ユウちゃんが俺を 怪しんでるからだけじゃなくて 俺が後ろめたさを ずっと抱えてるから #はなみるひと

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143 レンを抱いた事も サボテンを枯らした事も ･･･でも 『どうしたらええんやろ･･･』 何から やり直したらいい？ #はなみるひと

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144 思い悩む中 否応なしにやってくる引越しの日 荷物は業者に託して 俺達は電車で移動する事に 『ユウちゃん用意できた？』 〈うん！〉 手荷物だけを片手に持って 空いた片手で手を繋ぎ 駅に向かう #はなみるひと

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145 悩みへの答えは出てないけど 新しい街での 新しい生活が このわだかまりを 解消してくれると願って･･･ ────〇〇線乗り場に 到着の列車は･･･ 構内にアナウンスが流れて 『そろそろ行こうか』 〈ん･･･〉 俺達は改札へ #はなみるひと

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146 そして ホームに向かっていると･･･ 《おった！！！》 聞き馴染みのある声が 慌てて振り返ると 《丸！！！待て！！！》 『大倉！？』 息を切らした大倉と 《レン！早く！！！》 遅れて駆けつけた 『･･･レン』 彼女がいた #はなみるひと

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147 レンを見て 〈あ･･･私先に･･･〉 慌てて駆け上がろうとする ユウちゃんを 《待って！ユウちゃんさんも！ あんたにも！ 見せたいものがあるんや！》 大倉が引き止める 訳もわからず 顔を見合わせる俺達に 《レン！ほら、早く！！！》 #はなみるひと

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148 促されてレンが 改札ギリギリまで近づいてきた 「隆兄！これ･･･忘れ物だよ！」 差し出したその手には 小さなサボテン 『あ･･･』 そしてそこには 小さな 小さな 赤い花が咲いていて 〈嘘･･･枯れたんじゃ無かったの？〉 #はなみるひと

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149 ユウちゃんも驚いて 口に手を当てた するとレンはにっこり笑って 「あのね！ 調べたら根腐れだったみたいで･･･ もっと調べたら治す方法があって それを試したらね？ なんか･･･大丈夫だったみたい！」 ────魔法のような奇跡 それを見た #はなみるひと

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150 「隆兄？ これは大事なものでしょ？ ちゃんと･･･大切にしなきゃ」 レンが もう1度グイッと手を伸ばしたから 俺はとぼとぼと それを受け取りに行く 『･･･ありがとう』 不覚にもぼたぼたと 涙が溢れた 「隆兄･･･ 私が言うのもなんだけど」 #はなみるひと