【未来へ】part1

起こりうる可能性のある事は、起こる
0
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

汚染された海。破壊し尽くされた軍港。無惨にも倒壊した、かつて横須賀鎮守府であったであろうモノの残骸。決して晴れない雲に覆われた空と、人類の領空を跋扈する深海の飛行機。その光景は、一種の地獄めいていた

2016-09-17 21:07:41
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【交錯する運命の糸】第3話-未来へ part1-

2016-09-22 22:39:31
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花と比叡は呆然と周囲を見渡した。かつての帝都横須賀の華々しい面影は、どこにも残っていない。 「5年前、横須賀の港湾で爆発が起こった」吹雪が語り始める 「5年前?」「そう、ここはあなた方の住む時代から5年後の世界」 吹雪は自分達が時を越えたことを説明した

2016-09-17 21:09:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「横須賀鎮守府、大本営、あらゆるものを飲み込み、世界は一瞬にして変わった。数え切れないほどの人間が死んだ」吹雪は灰色に濁った天を仰ぎ憂いた 「国防の中心を失い、統率は崩れ去った。深海棲艦はこの機を逃さず本土に侵攻。私達は戦わずして降伏を余儀なくされた」

2016-09-17 21:10:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「誰も抗う者はいなかったのか?」「輸送作戦が完了後、軍の主力たる人々は皆横須賀に集まっていた。戦いを先導する者、その尽くはここで死んだ」 主力艦隊と大本営が全滅し、情報もまともに入らぬ中、如何に精鋭が残っていようと為す術もない。吹雪は首を振って答えた

2016-09-17 21:13:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ここまでの規模の爆発…1体どんな爆弾を?」「島風だ」「え?」 比叡は思わず聞き返した。「爆発したのは島風だ」「どういうことですか?」「詳しくはわからない。だが爆発は島風が起こした。島風が爆発のトリガーとなった」 吹雪の顔は嘘を言っていない。だがどうも爆発の状況がわからない。

2016-09-17 21:17:04
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「私にもこのくらいしかわからない。故に私は過去へ飛び、その原因を探っていた」 吹雪は再び、瑠奈花と比叡の肩に手を置く。 「宿毛湾へ行く。見せたいものはそこに」 吹雪が目を閉じると、3人の姿は消え、宿毛湾へテレポートした。

2016-09-17 21:19:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

宿毛湾泊地の1室。埃が舞い、床には紙屑や本が乱暴に散らかっている。1本の黒い糸を中心に、幾つもの糸が蜘蛛の巣めいて部屋中に張り巡らされている。そこはかつて、雪花という司令部の執務室だったところだ。新聞記事や雑誌の切れ端、幌筵のとある画家が描いた絵等がクリップで幾つも吊るされている

2016-09-17 21:21:56
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「これは?」瑠奈花が尋ねる 「これは時の地図。ちょうど五年前に起こった爆発に繋がる出来事を語っている。完成するのに何年もかかった」「なぜだ?」「歴史を変えるための過去に戻る瞬間を正確に導き出すため。そして、ようやく見つけた」吹雪は萩風着任時の写真を手に取る

2016-09-17 21:22:50
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「萩風。こいつが爆発事件のカギを握っている」「萩風と島風が今行方不明になってる。彼女と何か関係あるのか?」吹雪は張り巡らされた糸の中から一本をつまんだ。 「この黒い糸」それは地図の中心を通る黒い糸だ。黒い糸には途中から、青い糸に絡みつくように結ばれていた

2016-09-17 21:28:54
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「これが萩風。そっちの青い糸が、島風。萩風着任の日に二つの糸は交わり、離れることはなかった。常に島風のそばにいたのは、萩風ただ一人。つまり萩風が、島風の爆発に関わっている可能性が高い」 「本当か?」瑠奈花は訝しんだ。「大人しい子だ。悪さをするようには見えなかったぞ」

2016-09-17 21:29:58
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ならあの女が、あなたでさえも騙せるほど演技上手ということだ。何にせよ萩風には怪しい点が多い。現に、彼女は島風と共に消えた。私は萩風を監視し、動向を探るため過去に飛んだ。その時代の吹雪になりすまして」 「そうだ、現代の吹雪はどうした?」 瑠奈花は思い出したように尋ねた。

2016-09-17 21:31:06
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「今は言えない。でも安全な場所にいる」「何故はぐらかす?」「こちらにも都合がある。大丈夫、過去の自分を危険に晒すようなことはしない。それより今は、現状のことを考えるべきだ」吹雪は窓を開け外を見た。見渡す限りがボロボロの廃墟。長い間手入れが行き届いていないようだ。

2016-09-17 21:32:50
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「この5年で、艦娘の在り方は大きく変わった。爆発を、あの惨劇を回避できなかった艦娘の扱いは悪くなる一方。いつしか艦娘は、人類に仇なす者と認定され、迫害される立場になった。彼女達は艦娘であることを隠し、1人、また1人と死に、或いは姿を消していった。国を守る者は誰もいなくなった」

2016-09-17 21:34:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「地上は無法に支配され、世界は変わり果てた。でもあの爆発がなければ、全てが元通りになる!」 吹雪はハサミを拾って黒い糸を、萩風を切った。時の地図、破滅の歴史が、一瞬にして崩れ去った 「それが君の目的というわけか」「その通り。爆発の原因を突き止め、阻止し、未来を救う」

2016-09-17 21:36:22
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「過去に飛んだ私は萩風を監視していた。だが見失ってしまった。そこで彼女に関する情報はないかと、公文書館へ向かっていた」 「それで横須賀にいた、と。何か手がかりはあったのか?」「それは…」 吹雪が懐から資料を取り出そうとした瞬間、瑠奈花は彼女の背後に人影を見た

2016-09-17 21:39:43
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪は素早く振り返り、右手から雷撃を放って攻撃!一瞬にして男の身体は焼け焦げ、倒れる 「張られていたか!」「あの男は?」「国土安全保障省だ」「役人!?」比叡は咄嗟に槍を構える 「私達を捕まえにきた!退路の確保を!」吹雪はバルコニーを指差す!瑠奈花と比叡は頷き、外へ飛び出す

2016-09-17 21:41:38
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「待て吹雪!」「逃がさんぞ!」小さな元執務室に大勢のエージェントがなだれ込む。吹雪はテレキネシスでまとめて撃退する!だが1人、吹雪の攻撃をくぐり抜けて背後に回った男がいた。吹雪が振り向いた瞬間、男は刀の柄で吹雪の腹を突く! 「ぐぅっ…!?」吹雪は気を失い倒れる

2016-09-17 21:43:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

黒衣の男は倒れた吹雪の顔を乱暴に掴み、確認した。 「ようやく捕まえたぞ…吹雪」 その瞬間、吹雪の目が突如開かれた。「!?」吹雪は一瞬怯んだ黒衣の男の顔面を思い切り殴った。 男が鈍い悲鳴を上げた。拘束から逃れた吹雪は素早く身を翻し、男の胸を強く蹴りつけて吹き飛ばす!

2016-09-17 21:47:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪は即座に構え直す。一方男もすぐに態勢を立て直し、刀を抜いてこちらに向けていた。「面倒な…」その刀は、吹雪の天敵であった。 「もう逃がさん。今度こそお前を捕まえてやる」「やれるものなら」「涼しい顔がどこまで持つかな」 青白い刀身が鈍く煌めき、吹雪は冷や汗を流す

2016-09-17 21:50:38
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「わかってるだろ。この刀があればお前の力を封じられる。多勢に無勢だ」 男はじりじりと吹雪に近づく。その時、バルコニーの窓が勢いよく開かれた 「来い吹雪!」 吹雪に手を伸ばそうとした瑠奈花は、彼女と対峙している男の顔を見た。そして動きを止めた。

2016-09-17 21:51:33
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

男もまた、瑠奈花を信じられないという眼で見た。 「お前は…」「…中将?」

2016-09-17 21:52:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花は確信した。黒衣の男…雰囲気はまるで違えど、それは紛れもなく鹿屋の友人に相違なかった。 「なぜお前が…吹雪。君は何を企んでいる」「覆す。すべてを、何もかも」 未だ目を疑う瑠奈花を差し置いて、吹雪と葛葵は言葉を交わす 「覆す?ふざけたことを…」

2016-09-17 21:54:18
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「あれから5年…我々は暗黒の時代を迎えた。人々はようやく現実を受け入れ、未来に生きようとしている。過去を見ているのは君だけだぞ。まやかしの希望で人々を惑わすな」「まやかしではない」「すべてを変えられると本気で思ってるのか!」

2016-09-17 21:55:54