【未来へ】part2

光と影が表裏一体であるように、善と悪もまた紙一重である
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【交錯する運命の糸】第4話-未来へ part2-

2016-09-22 22:40:04
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花達一行は、バニラ湾の研究施設にテレポートした。研究施設は雪花以上に廃れているが、建物は辛うじて原型を留めていた。 「そういえば吹雪、気になっていたのだが」瑠奈花が尋ねる。 「仲間がいると言っていたな、雪花の仲間なのか?」

2016-09-19 22:30:29
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「主には、生き残った艦娘達だ。私は彼女らを集め、レジスタンスを結成した。おかげで反逆者扱いされたが」吹雪は皮肉混じりの笑みを浮かべて言った。「今は白雪に組織を任せ、単独行動中。歴史を変えることには、皆同意している」「じゃあ私は?私と司令も一緒ですか?」比叡が自分の顔に指を向けた

2016-09-19 22:32:19
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それは言えない」「えー、なんでよ」「それは…」吹雪は一瞬渋った後、笑い混じりに言った。 「自分の未来を知る事は危険ですよ。時空間連帯が内破してしまうかも」「なんですかそれ」 2人は他愛ない会話を交わしていたが、研究施設に入ると気を引き締めた。

2016-09-19 22:34:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

バニラ湾に研究施設がある事など、瑠奈花は聞いたことがなかった。施設内の張り紙などには地上の言語が書かれていたが、誰かが密かに所有していたのかもしれないし、深界の研究施設かもしれない。だが今はそれよりも、萩風に関する情報が第一だ。一行は中央に手術台が置かれた部屋に辿り着いた。

2016-09-19 22:35:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「この部屋なのか?」手術台が存在感を放つこの部屋は、辺りに乱雑に紙や薬品のビンが散らかり、床には白い髪や得体のしれない物体が転がる不気味な部屋だった。「あの輸送作戦よりも前、萩風はバニラ湾での交戦中に何らかの重傷を負った。その時の資料この無人施設で応急処置をしたとある」

2016-09-19 22:37:04
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「それ以降、萩風は夜を極端に恐れるようになったそうだ」「夜を恐れる?待ってくれ」瑠奈花は何かを思い出したように声を上げた。「萩風には夜を恐れるような素振りはなかったぞ」「記録には、夜になると発狂に近い症状が出ることもあったとか」瑠奈花と吹雪は顔を見合わせた。「矛盾しているな」

2016-09-19 22:39:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「そもそも、萩風の所属は横須賀。宿毛湾にいること自体がおかしい。なんど調べても雪花へ転属した記録はない」吹雪は資料を漁り始めた。「この矛盾の答えが、きっとここにある。さあ、探して」探してと言っても、ここには結構な数の資料がある。瑠奈花と比叡はため息をついて、資料探しに加わった。

2016-09-19 22:40:22
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

どのくらいの時間が経ったか。「あ、これ見てください」比叡が見つけたのは分厚い冊子だった。「航海日誌でしょうかね?」比叡はページを捲り、最初のページの文章を読み上げた。 「あの妙な深海棲艦の攻撃で、私の身体は二つに分かれた。今の私には、憎悪や怒り、ネガティブな感情しか残っていない」

2016-09-19 22:41:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「身体が二つに分かれた?」3人は顔を見合せる。比叡は続きを読み始めた。 「目の前で私の仲間達が、私の身体を抱えていた。何が起きたのかわからず飛び出すと、かつて仲間だった者達は私を攻撃し始めた。今私は近くにあった変な無人施設に逃げ込み、この文を書いている…」

2016-09-19 22:42:29
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「施設内の鏡を見て、奴らが攻撃してきた理由がわかった。私の肌と髪は白く変色していた。まるで深海棲艦だ」「深海化したということか?」「さあ…?えーと…文字通り私という存在が二つに分かれてしまったのようだ。私の心に渦巻く憎悪の感情、今の私のことを仮に「悪の半身」と呼ぶことにする」

2016-09-19 22:43:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

しばらく沈黙が流れた。「とりあえず矛盾は証明されたな」やがて吹雪が口を開いた。「善の萩風と、悪の半身、萩風は2人いた。この悪の半身こそが黒幕だ」「では、我々の元に来た萩風が、悪の半身…」恐らく、書類を改竄するなりして雪花に入り込んだのだ。何らかの悪意を持って。

2016-09-19 22:44:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「雪花に来た理由もわかりそうですよ」日誌を読み進めていた比叡が言った。「悪の半身はシェイプシフターの力を持っていたみたいです。身体を自在に変えられる。でも、深海棲艦みたいになってしまった身体を治したかったんでしょうね」比叡が開いたページには、萩風の悲痛な思いが書き連ねられていた。

2016-09-19 22:45:56
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「この施設に残された設備を使い、治療薬を開発しようとしていた。その実験台として島風を選んだみたいです。島風が丈夫な身体を持っていたのと、一匹狼で仲間から孤立していると噂に聞いていた為に、拉致してもすぐにはバレないと踏んだそうですね」

2016-09-19 22:46:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「つまり、萩風の悪の半身が島風を攫ったということか。徐々に話が繋がってきたな」「問題はその後。島風と爆発の関連性はわからない?」瑠奈花と吹雪にせがまれ、比叡は更にページを捲る。その先のページの殆どは、薬の調合レシピや素材に関する記述が大半を占めていた。ふと、比叡が手を止めた。

2016-09-19 22:48:07
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ええと…理論上ではあるが、ついに薬が完成した。ここまで大量に薬物を投与したにも関わらず、島風はまだ生きている。本当に丈夫な身体だ。彼女を選んでよかった。この薬を島風に投与し、経過を観察する。上手く行けば成功だ。私もついに人間に戻れる。もう能力で姿を誤魔化す必要もなくなる」

2016-09-19 22:48:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「被検体に異常発生。身体が強く痙攣し、光を放ち始めてる。コップに入れた水が瞬時に沸騰した、試験管が赤熱し割れる、被検体の側にあった書類が発火する等の異常が発生。何か拙い。被検体の拘束を解く…」かなり慌てているのか、日誌の文字が乱雑になってきた。比叡は次のページを捲る。

2016-09-19 22:49:51
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「拘束を解いた瞬間、被検体は目にも止まらぬ速さで施設を飛び出した。この薬は失敗だ。希望が崩れ去る。ところで、被検体がどうなったのか気になる。到底追いつけないだろうが、せめて被検体の末路が知りたい。被検体を追いかけてみる…」比叡は更にページを捲る。だがその先は白紙ばかりであった。

2016-09-19 22:50:22
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「…ここまでみたいですね。この後どうなったんでしょう」「…放射能人間か」吹雪が呟く。 「放射能?」「ごくたまにいるんだ。生まれながらにして魔法とは異なる特別な力を持つ人間。記録の中に、全身から放射能を出す力というのがある。私の知る限りでは、アメリカのテッドという男がそうだった」

2016-09-19 22:52:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「テッドは放射線を操り、電磁パルスを発生させたり手のひらで核爆発を起こしたりすることができた。だが制御が効かなくなれば力が暴走し、大規模な核爆発で自爆する危険性もある」「ではまさか」瑠奈花は最悪の事態を想像した。

2016-09-19 22:53:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「恐らくそのまさかだ。島風が薬によってこの力を得ていた可能性がある。彼女の身体は度重なる投薬実験で不安定な状態にあったはず…」 3人はこの日誌の情報をまとめ、結論を出した。 「悪の半身の実験により島風の身体は核爆弾と化した。拘束を逃れた島風は本能的に、仲間の待つ横須賀へ戻った」

2016-09-19 22:54:10
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「そして横須賀の港湾で、爆発した。これが真実か…!」「吹雪、だとしたら!」吹雪は無言で頷いた。 「過去でやるべき事がわかった。悪の半身の凶行を止めれば、爆発は防げる!未来は変わる!」吹雪は瑠奈花と比叡に手を当て、時空間転移を試みた。その時だった。

2016-09-19 22:55:10
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ぐああッ!?」電気が流れる音がして吹雪が悲鳴を上げ、倒れた。その背中にはスタンガンが刺さっている。瑠奈花と比叡は咄嗟にライトセイバーと槍を構えた。 「言ったはずだ、逃がしはしないと」黒衣の男、葛葵だ。右手に刀を持ち、左手で銃を構えた。

2016-09-19 22:56:59
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「やあ司令官」葛葵は鮮やかに煌めくエメラルドの光刃を感慨深そうに見た。「久しぶりに見る光だ。だがその輝きはこの世界には少々、眩しすぎる」 (司令、この人来るのが早過ぎませんか!?)(ああ…)瑠奈花と比叡は目配りし、隙を探した。

2016-09-19 22:58:28
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「中将、なぜこんなことを?」「なぜ?そんなの当たり前だろう。危険人物は野放しにはできん」「危険人物?吹雪のことか?」吹雪は動かない。完全に気を失っていた。 「やり方は強引かもしれないが、彼女は世界を救おうとしている。その意思は尊重するべきだ」「こいつが何をしたか知らないのか?」

2016-09-19 22:59:35