しゅん5さんの「調査概念」についての説明

私のBLOG記事に応答して、しゅん5さんが詳しい説明をしていただきました(^^)
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まずは私のこんなBLOGが発端でした。

このBLOGに触発されて(か?)、しゅん5さんが連続投稿をされました。

しゅん5 @shun5_f

遅くなりましたが、先日furyoshain氏の「調査概念」に関するblog記事の件について、僕なりに違った視点から論じてみたいと思います。僕がこの件について思うのは、特許調査とは「知りたいこと」と「探し出すべきもの」が必ずしも一致しないということです。

2016-09-23 13:48:04
しゅん5 @shun5_f

(1)特許調査とは、当然ながら何か知りたいことがあって行うはずのものです。例えば「この技術で他社はどんな出願をしているか」「この技術を実施してよいか」「この発明/出願/特許に特許性があるか」を知りたいから調査を実施するのです。

2016-09-23 13:48:19
しゅん5 @shun5_f

(2)しかしながら特許調査とは、この知りたいことそのものが探し出す対象になるわけではありません。たとえば無効資料調査はつぶしたい特許と同じ内容、または類似した内容が記載された資料を探し出すことではありません。

2016-09-23 13:48:36
しゅん5 @shun5_f

(3)無効化のためには特許性、特に新規性や進歩性を否定する資料が必要となります。新規性の議論に必要な資料なら対象特許(の請求項)と同じ記載ですから、探し出すべきものが同じと言えなくもないですが、進歩性の場合は対象特許そのものと同じではなくなります。

2016-09-23 13:48:53
しゅん5 @shun5_f

(4)例として「ABCDを備えるX」なる特許を考えてみます。もしこれが特徴であるDをXに用いること自体に進歩性があって、ABCはXの単なる構成要素に過ぎないと解釈が審査においてされているならば、この特許は「Dを備えるX」という資料で進歩性が否定される可能性があります。

2016-09-23 13:49:09
しゅん5 @shun5_f

(5)この場合では「Xに関する大きな母集団の中でDに関する記載を持つ」という観点から検索式を作成し、そのヒットからDが記載された資料を探し出してその中でもABCがより多く記載された資料を見つける、という調査方針を取る事ができます。

2016-09-23 13:49:45
しゅん5 @shun5_f

(6)それに対して同じ「ABCDを備えるX」であっても、ABCを備えるXがDも備えることに進歩性があって、例えば「ADを備えるX」「ABDを備えるX」等では進歩性を否定できないという場合では、前項の方針で調査をしても「知りたいこと」を充足することはできません。

2016-09-23 13:50:08
しゅん5 @shun5_f

(7)この場合ABC全てを備えた資料が必要なので「A,B,Cそれぞれが記載された」母集団を形成するように検索式を作成し、そのヒット中でよりDに近い記載がある資料を探すという調査方針の方がより目的に合致することになります。

2016-09-23 13:50:23
しゅん5 @shun5_f

(8)このようにある特許の無効資料という単一の「知りたいこと」であっても、進歩性をどう考えるかによって「探し出すべきもの」が変わり、それだけではなく調査のやりかたそのものが変わってくる可能性が高い、ということを考えておかなくてはなりません。

2016-09-23 13:50:41
しゅん5 @shun5_f

(9)侵害調査の場合では、実施技術「そのもの」が請求された特許を探し出しただけでは不十分で、実施技術を包括する上位概念的に記載された特許も検出対象になります。そのためにもどういう請求項の記載が該当しうるかを想定、つまり「探し出すべきもの」を見極める必要があります。

2016-09-23 13:50:58
しゅん5 @shun5_f

(10)テーマ収集調査はさらに面倒です。調査希望元は簡単に「○○に関する特許を知りたい」と言いますが、では○○に関する特許とはなんなのか、どういいう資料を検出すべきなのか、ということがこの要望では全く明確化されていないのです。

2016-09-23 13:52:34
しゅん5 @shun5_f

(11)例えば「LEDに関する」と言っても、半導体素子そのもの、駆動装置、LEDを用いた表示装置、LEDを照明として用いる応用技術…と多岐にわたります。本当に必要な資料を定義されなまま調査すると、単にLEDの記載がある全ての資料が検出対象ということになりかねません。

2016-09-23 13:52:50
しゅん5 @shun5_f

(12)侵害調査やテーマ調査は無効資料調査のように類型化しにくいので、調査の具体的な進め方についてはここでは略しますm(_ _)m どちらにしても知りたいと思ったことそのものが探すべき対象にはなりにくいのです。

2016-09-23 13:53:43
しゅん5 @shun5_f

(13)以上まとめると特許調査では「知りたいこと」がそのまま「探し出すべきもの」になるわけではなく、そこから何を探し出すべきかを決める、つまり検出基準を画定するというステップを経ないと良い調査にならない、ここが特許調査を行う上で大事なポイントと思っています。(ひとまず完)

2016-09-23 13:54:03

また、以前、arisupatさんが投稿した、進歩性と特許事務所での特許調査に関するtweetに対して、しゅん5さんがコメントしました。

しゅん5 @shun5_f

ここで以前arisupat氏がつぶやいていた「進歩性」と「特許事務所の特許調査」の関係に話題を移します。無効資料調査を行う場合、事務所だろうが調査会社だろうが対象特許の進歩性の議論に留意して調査方針を策定するのは当然のことです。(それができない調査会社はあるかも…)

2016-09-23 14:02:27
しゅん5 @shun5_f

(i)ただし調査会社は当事者でも代理人でもないので、弁理士資格無しに進歩性の論理を自分たちで勝手に組み立てて「これとこれを組み合わせると無効にできそうです」というようなことを言う(報告する)ことはできませんし、あえてやりません。

2016-09-23 14:02:44
しゅん5 @shun5_f

(ii)調査会社は進歩性の議論をふまえつつもあくまで依頼元との合意の上で、探すべき資料はどんな記載がある資料かという検出条件を明確化し、条件に適合した資料を検出して報告するという形式になっています。つまり報告書内で基本的に無効可能性について触れません。

2016-09-23 14:03:15
しゅん5 @shun5_f

(iii)それに対して特許事務所は弁理士自らが進歩性を否定する論理づけを導き出したうえで調査を行い、その結果について無効可能性への言及を含めて報告書を書くことができます。その点については調査会社ができない優位性を持っていると言えます。

2016-09-23 14:03:36
しゅん5 @shun5_f

(iv)しかしその優位性が実は盲点ともいえます。というのは弁理士の行う無効資料調査では、進歩性の組合せを考えながら資料を探す傾向にあります。つまりつぶす対象をABCDとして、ABCが見つかったからあとはABDを見つければ無効化できそうだ…という具合です。

2016-09-23 14:03:53
しゅん5 @shun5_f

(v)このやり方は一見合理的ですが問題があります。まずは「何かを考えながら探し物をすると見落としやすい」という事、次に途中で検出対象が変わってしまっている点です。どちらも特許調査に限らず物を探す時には避けるべき事でしょう。

2016-09-23 14:04:14
しゅん5 @shun5_f

(vi)そして一番重要なのが前段で書いた「知りたい事」と「探し出すべき物」の相違なのです。「無効化できる資料」が知りたくても、それがどんなものかを明確化しなければ、探し出すべき資料を決めないまま調査をすることになります。

2016-09-23 14:04:39