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「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」 #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」#3 #NJSLYR
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(あらすじ:ソウカイヤの末端ニンジャであるレオパルドは、組織の者ではない謎のニンジャによって追跡を受ける。廃ビルへと逃げ込み、追っ手をまいたと思った矢先、崩落した天井から追跡者が再び出現。敵はニンジャスレイヤーと名乗った。レオパルドは片腕を失いながらも、なんとか廃ビルを脱出し…)
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ここは薄暗い高層マンションの一室。その雰囲気は異様だ。この部屋には、廊下もリヴィングもキッチンも無い。がらんとしたワンルームに、4ダースほどのタタミが敷かれている。一面に深いオーガニック・センコの香りが染み付き、足を踏み入れた者は思わずオジギせざるをえない神聖さだ。
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廃テンプルの建っていた場所にマンション建設計画が持ち上がり、本堂がその一室に押し込められたのだろうか。燭台で作られた道の先には紫のカーテンが張られ、ツーハンデッドソードを握る戦闘的ブッダ像が厳しい顔を覗かせていた。その上には、「インガオホー」と書かれたショドーが額に飾られている。
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部屋の中央には、江戸時代に鋳造されたと思しき青銅製の大きな鐘が、寂しげに佇んでいる。丸いリベットまみれの鐘の側面には、鹿、フェニックス、ドラゴン、鯉といった聖獣の姿とともに、この寺院の名「ヘルソード・テンプル」を意味する荘厳な漢字が、礼儀正しく上から下へとモールドされていた。
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鐘に背を預けて座り込み、肩で息をするニンジャの姿。レオパルドである。ネオサイタマのビル街の暗闇を逃げ続けた彼は、偶然にもこの廃テンプルを高層マンションの中階部に発見し、鉄格子のはめられた窓を破壊して侵入した。ソウカイヤから支給された応急キットを使い、今しがた止血を終えたばかりだ。
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ズバリ・アドレナリンを注射したおかげで、レオパルドは腕を切断された痛みを感じずに済んでいる。だが、いかなる薬物を使っても、彼の心臓を鷲づかみにした恐怖の鉤爪を振り払うことはできない。「忍」、「殺」。ライトを浴びた鋼鉄メンポと、そこに刻まれた文字が、彼の脳裏にフラッシュバックした。
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「ハァーッ! ハァーッ!」レオパルドの息は荒い。目は飛び出しそうなほどに剥かれ、血走っている「ハァーッ! ハァーッ! ニンジャスレイヤー! ちくしょうめ! 奴は狂っている、奴は狂人だ……!」。このように恐怖を言葉にしなければ、自分が発狂してしまうのではないかと彼は不安になった。
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「そうだ……スシ……スシを……」レオパルドの片腕が、腰に吊ったバイオ笹タッパーに伸びる。その中には、無菌状態で保存された素晴らしいマグロのスシが4個。割られた窓から忍び込んでくるネオンの薄明かりだけを頼りに、レオパルドはそれを掴み、口に運ぶ。手が恐怖でがたがた震え、コメが崩れた。
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震える手で3個目のマグロを口の中に押し込み、咀嚼し掛けた時……ドア越しに微かな物音が聞こえた。並の人間であれば、とうてい聞こえなかっただろう。だがレオパルドの持つニンジャ聴力は、それをキャッチしてしまうのだ。(((まさか、ニンジャスレイヤー)))恐怖のあまり、スシを吐き捨てる。
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レオパルドは素早く鐘の背後に身を隠した。それから鐘の表面に耳を当て、ニンジャ聴力を研ぎ澄ます。廊下の物音が壁、床、そして鐘を通じて、高性能ソナーのように鮮明に聞伝わってくる。部屋のドアの前から、心臓の音が3つ。レオパルドは安堵した。少なくとも、ニンジャスレイヤーではないだろう。
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ヘルソード・テンプルのドアの前には、サイバーウェアに身を包んだ2人の男と1人の女が立っていた。そのうちの1人、左腕のプロテクターに小型ノートUNIXをマウントした男は、右耳の後ろに備わったバイオLAN端子から特殊ケーブルを延ばし、インターホンの露出ソケット部へと直結させている。
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『あと45秒で防壁突破。攻撃準備いいか?』と、男のサイバーサングラスにLED文字が流れた。セラミック・カタナを握るもう1人の男のサイバーサングラスにも、『ラジャー』と赤い文字が流れる。『この部屋で限界ね』と、札束や素子の詰まったボストンバッグを抱えるサイバー・オイランウェアの女。
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彼らは俗に「ハック&スラッシュ」と呼ばれる、高層集合住宅ばかりを狙う小規模な武装集団の一つだ。電子錠を突破するハッカー、家人を始末するスラッシャーがパーティの最小構成であるため、そのように呼ばれるようになった。このパーティはどうやら、交渉役を果たすオイランを加えた3人編成らしい。
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ボン、というくぐもった爆発音がインターホン内部で鳴り、ドアの電子錠が解除された。同時に、ドアノブに貼り付けられたコケシ型デヴァイスが細い金属棒を伸ばして回転させ、物理錠を解除する。ハッカーとスラッシャーが勢い良く室内へと雪崩れ込み、オイランはドアの外に立って出張サービスを装う!
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スラッシャー役を務めるヤマダの精神状態は、今日行った計3回の一家皆殺しを経ても、まだまだフラットだった。彼は今日、18歳のセンタ試験学生から、上は70前後の老夫婦まで、合計8人を殺している。スラッシャーの役目は、冷静さを失うような殺人狂にはつとまらない。冷酷な屠殺者が必要なのだ。
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だが、冷静なヤマダでさえも、この状況には一瞬困惑せざるを得なかった。ナムアミダブツ! まさか押し入った先が廃テンプルだったとは! 『今日は潮時だ、そうだろう?』と苦笑いを作るヤマダ。だが、ハッカーの考えは違った。『金目のレリックがあるかもしれん。太古のカタナや、スクロールなどだ』
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『ナムサン! お前一人でやれよ!』とヤマダ。『ああ、俺はアンタイ・ブディストだからな』とハッカーのツヨシ。室内が安全であるとわかったツヨシは、土足で戦闘的ブッダ像に向かって進み、その足元に置かれた大型オファリング・ボックスの中をライトで照らした。コワイ! 何たる冒涜的行為か!
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ツヨシはサイバーグラスの暗視機能で中身を調べるが、札束や素子どころか、コインすら入っていない。ブッダ像が持つ、燃え上がる炎のようなツーハンデッドソードも漆塗りの木製で、大した金にはならなそうだ。ツヨシは唾を吐きながら、背後を振り返る。ドアの近くにいたはずの、ヤマダの姿が無かった。
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ツヨシは慌てて、サイバーグラスのサーチモードをONにする。グラスの液晶面に緑色のサークルが現れ、タタミの上に転がったヤマダの死体を発見。さらに、ヤマダの首筋に刺さった小物体を自動ズーム。『分析結果:スリケンです』と表示された直後、鐘の背後に隠れた片腕のニンジャが飛び掛ってきた。
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「アイエ…!」ツヨシには悲鳴を上げる余裕も無かった。「イヤーッ!」レオパルドは折れた爪でツヨシの体を胸から股間まで上下に切りつける。ケブラーブルゾンが切断され、中に着ていたアンタイブディズム・ブラックメタルバンド『カナガワ』のブッダ解剖Tシャツも切断され、ツヨシの肉も切断された。
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「俺を脅かしやがって……!」すでにショック死したツヨシの襟元を掴み上げ、オファリング・ボックスに頭を突っ込ませる形で残酷なカイシャクを行った後、レオパルドはタタミに座り込んで呼吸を整えた。タッパーを開き、残っていた最後のスシを口に運ぶ。忍び込むネオン光が、マグロを七色に光らせた。
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びくびくと痙攣するツヨシとタナカの死体をぼんやりと見ながら、レオパルドは考えた。(((いつから俺は、こうなってしまったんだ。もしかして俺は、あの夜に死んでいたんじゃないだろうか?)))皮肉なものである。彼もかつては、そこに転がるタナカと同じ、スラッシャーとして身を立てていたのだ。
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(((ちくしょう、ちくしょう……ニンジャになれば全てが解決すると思っていたのに……この世界の王になれると思っていたのに……!)))レオパルドは最後のスシを味わいながら苦悶した。そしてツヨシの血がタタミの上を流れるのを見ながら、彼は回想する。ニンジャソウルに憑依された、あの夜を。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2011-02-20 01:57:12
「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」 #1 http://togetter.com/li/98696
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