君に逢いたくなったら

大倉組 @ohkuragumi

① いつから彼を好きだったんだろう… 遠い記憶を辿る私 突然、目の前に現れた彼 容姿こそ少し変わっていたけど 昔のままの笑顔だった 「〇〇…？」 ある日の昼下がり 買い物中に友人と立ち話をしていると 突然、肩を叩かれた 『えっ？何でおるん!?』

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② 驚きを隠せない私に 「今、帰って来とるんよ」 何も動揺のない彼 高校を卒業してから何度かは 顔を会わせる事があったけど 最後に会ってから、随分と年月も 過ぎていた 「今度、飲み会しよや！」 連絡先を交換した その日の夜、メールが届いた

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③ 〈で、いつにするん？〉 唐突すぎる内容 《はっ？飲み会？》 〈そう、いつにした？〉 《まだ決めとらん》 そんな会話から、ひたすらやり取り 懐かしい昔話が始まった 〈俺、〇〇に手紙出した事 あったよな？〉 《うん。貰った。 熱烈なラブレターね♪》

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④ そう… あれは高校時代の話 地方の高校へ行ってた彼から 手紙が届いた 彼の写真入りで… 「―――もし付き合って貰えるなら この写真を持っていて下さい 駄目なら捨ててしまって構いません 返事は今度、帰った時に 聞かせて下さい」 マジメな彼らしい文面だった

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⑤ 高校は離れてたけれど 休みで帰って来た時は必ず会っていた 会っていた…というより 待っててくれていた あの頃バイトをしていた私 バイトが終わる私を待っていて 家まで送ってくれていた 春休み 夏休み 冬休み 必ず毎日…

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⑥ そして届いた手紙… 私の気持ちは…“好き” でも自分に自信がなかった 本当に私でいいのかな… 離れてても大丈夫なのかな… 自信が無くて… 春休み、彼が現れた 「手紙、届いた？」 『うん。届いた』 「返事は…？」 『忠義…ゴメン…』

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⑦ 駄目なら捨ててしまって構いません… そう言われてた写真 捨てる事なんて出来なくて返した 「そっか。そうだよな…」 （本当は違うんよ…） 「いや、伝えられたからええわ また友達としてヨロシクな？」 笑ってくれた 今でも、その時の事は忘れてない 忘れられなかった…

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⑧ 〈あん時、振られたんよな～〉 懐かしむ忠義 でも私の心の中は… （本当は好きだったんよ…？） 何日か後、友人の家で飲み会をした その帰り道 「やっぱりダメやわ～」 『何が？』 「お前以外とは、よう喋られへん」 照れたような笑みを浮かべて言った

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⑨ 『よく言うわ…』 私も何だか照れた 「今度は二人で飲まへん？ あっ、でもムリか… 旦那、子供おるしな…」 そう、私は結婚して子供も居る それなのに… 『ええよ、都合つけるわ』 酔いのせいもあってか そう返事をした

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⑩ その次の週 忠義の家で飲む事になった 忠義の家まで歩いて5分 何故かドキドキしてる私 家の前で忠義は待っていた 「お疲れ」 『別に疲れてないけど』 「まぁ上がってや」 『おじゃまします』 高鳴る鼓動を抑えて いつも通りを装った （この気持ちは…なに？

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⑪ 乾杯をして昔話や近況報告に花が咲く 笑いが絶えない 「いいもんあるわ」 そう言って出してきたのは 学生時代の古いアルバム 二人で寝転がって見る 意識はしていない… はずだった… 「ちょっと話したい事あんねん」 そう言って座り直す忠義

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⑫ いきなり改まる忠義に戸惑いながら 『ん？なしたん？』 向かい合って座った 「旦那と上手くいってないんか？」 この前の飲み会で、旦那の事を友達に 聞かれて色々と話した 「お前、鏡で自分の顔、見とるか？」 『えっ？』 忠義の言ってる意味が分からなかった

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⑬ 「えらい疲れた顔しとるで？」 悪ぶってイジワルに笑う 自分でも思っていた ふと鏡を見た時に映るのは 疲れた顔の自分で 他人の目には、こんな自分が どう映ってるんだろう… 何て考えた事もあった 「お前、それで幸せなんか…？」 そう聞く忠義に何も答えられなかった

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⑭ 正直、幸せとは言えない… こんな生活… と思ってしまう事の方が多い 「あれから色々、考えたんやけど」 『うん』 「俺…全部、受け止めるから 俺んトコ来えへんか…？」 『はっ…？』 突然すぎて意味が分からない私 すると忠義は今までの自分の想いを 告げてくれた

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⑮ 私が写真を返した後も ずっと好きで居てくれた事 何度か付き合った人は居ても 心の中には私が居た事 「俺…忘れた事なかったで？ お前んこと…」 どうしてだろう…涙が溢れる 「前にも見かけたんよ？」 『えっ…？』 「けど結婚して子供もおるのも 聞いとったから…」

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⑯ 何度か私を見かけていたけれど 今さら声をかけても どうにもならないと思ってたらしく 「けど、ずっと後悔してたんよ やっぱり声かければ良かったって」 今度もし会えたら… そう思ったみたいで 「この次は声かけようって 決めてたんよ」 私の手を両手て包み込む忠義

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⑰ 私の目を真っ直ぐ見据える忠義 「俺の気持ちは変わらへんから… ずっと変わっとらん… ちゃんと覚悟も出来とるから…」 私の心の奥にも忠義が居た 私だって忘れた事なんてなかった ずっと引きずってた… それなのに、こんなの… 今さら…

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⑱ 『遅いよ… そんなん、遅すぎるよ…』 「そやな…」 二人で涙を流した “遅いよ…” そう言いながらも もし出来る事なら… そんな事を考える 心が揺れる… 好きが止まらなくなってしまった私は いけない事と思いながらも 忠義の元へ行くようになった

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⑲ 忠義と居ると笑っていられる くだらない事でも笑い合える そんな小さな事が幸せで… 心が折れそうな時は 「何か、あったやろ？」 何も言わなくても察してくれる （どうして…？ 『ねぇ、何で分かるん？ 何も言わんくても、何で分かるん？』

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⑳ 「長い付き合いやろ？ ずっと見とったし、離れとって 会えん間も、ずっと想っとったから そんなん分かるわ」 手を絡め合い おでこと鼻をくっつけて言う忠義 唇に触れるまで数センチ でも、お互い触れる事なくて… 触れたいのに触れられない 理性を保ってる二人

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②① 「一緒になれんくても逢いたい 逢えるだけでええよ…？」 その言葉に胸が締め付けられる 「俺が悪いんよな…」 忠義が言った 『何が…？』 「あん時、もっと気持ちを 押しとったら、一緒になれたかも 知れんのにな…」 大きな溜め息をつきながら言った

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②② 「俺の詰めが甘かったな… ゴメンな…？」 そっと私を抱き寄せた 心がキュン//てなった 『好き…』 思わず出てしまった言葉 『ねぇ、好き…？』 忠義の言葉が欲しくて聞いた 「言いたいけど、言ったら 好きだけじゃ済まされんくなるで？ お前が欲しくなる…」

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②③ 抱き寄せられる耳元で囁かれ ドキッ//とした 忠義が望むなら、あげてもいい… でも、その一線を越えてしまったら… 戸惑う私に 「ちゃんとあるで？ 気持ちは、ちゃんとあるから お前と同じ気持ちやから…」 忠義の腕に包まれる 時間が止まればいいのに ずっとこうして居たい

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②④ 涙が止まらなくなる私に忠義は 「俺の前では、あまり泣かんといて？ 笑っとる、お前が好きやから」 指で涙を拭ってくれる どんどん忠義に、はまって行く 苦しくて、切なくて… 私の中は忠義で、いっぱいで… 時間を見つけては逢いに来る

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②⑤ でも、このまま続けて行ける訳なくて だけど、もう少し…あと少し… そばに居たい… そんな気持ちが ズルズルと後を引く… 想いが止められない… 現実と夢の世界を 行ったり来たり いけない恋… 決して叶う事のない恋…