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【1126前日譚】 1 同じ学区の目と鼻の先に住んでて、幼稚園から高校までずーっと学校が一緒の腐れ縁。親同士も仲良しで、ほんまもんの幼なじみ。 …だったあいつのことをそれ以上に思いはじめたのはいつからやっけ。
2015-12-13 02:21:442 だいたいの女の子はみんなかわええよ? けど、いつからか自分の中で、他の女の子たちへとあいつへの気持ちの区別がついていた。 「可愛い」と「好き」は別物やって。 どこからくるものかわからんけど、この先何もなく、あいつはずっと俺のそばにおってこれからも一緒って思ってた。
2015-12-13 02:22:103 自信というか、それが当たり前だと思ってた。 思ってたんやけど…… *** 夏休みに1泊2日の臨海学校があってん。 この日だけは部活も受験勉強も忘れて楽しもうぜっていう、自由参加の行事。 まあ、ストイックなやつとか面倒くさがりなやつは参加せんのやけど。
2015-12-13 02:22:404 「りゅう臨海学校いく?」 臨海学校の案内が配られたホームルームの後。ねえねえ、って俺のとこにきた。 「お前は?」 「わたしいきたい。こんな機会じゃなきゃ高3の夏に海行くなんてできないでしょ?」 「…じゃあ俺も行く」
2015-12-13 02:23:015 最初はあんまり乗り気やなかったけど、あれやんか…海やんか…水着とか、そういう…ごにょごにょ… それに、あいつ行く言うたら絶対おかんがあんたも行きって言うやんな! なんて頭の中で欲望と言い訳をごちゃごちゃさせてた。 ***
2015-12-13 02:23:196 やってきた臨海学校の日。 海辺にある海産物の工場見学して、海岸清掃した後、海での自由時間。 小さい頃からなんだかんだ毎年あいつとプール行っとるとはいえ、俺も健全な男子高校生なわけで…… あ、去年と違う。新しい水着買ったんやなぁ…… はわっ、これ沖に出られへんやん……
2015-12-15 01:23:337 夜の寝る場所は、参加人数がそんなに多くないこともあって、男女別に大広間。修学旅行とか部活の合宿の時は、もっと少人数の部屋やったから、こういうのってはじめてやなあ。 年頃の男子高校生が集まれば、騒がしいのは当たり前で、気がすむまで枕投げ合ったら、
2015-12-15 01:23:488 「誰の水着が一番そそったよ?」 「俺2組斉藤!あれ絶対Fはあるな」 「お前胸派かよ、俺橋本の腰から尻のラインの方が抜けるわ」 そういう話で盛り上がるわけで… でもまあこういう話に上がる女子って、大体レギュラーメンバー決まっとるやん。
2015-12-15 01:24:019 文化祭のミスコン候補者とか、制服からわかるくらいエロい体しとる子とか、目立つかわいい女の子。 「でも、大穴いたわ!5組の…」 ってサッカー部のイケメンが口に出したのはあいつの名前。 「はえっ!?」 「マルどーした?」
2015-12-15 01:24:1910 「へ?なんもないで?あのー、あれ!へそからでっかいゴマ出て変な声でてもーたわ!!」 なんだよマル〜っていう笑いで切り抜けれてよかったわぁ〜…… でも… 「体はまあ貧相だけど、可愛いよな」「高嶺の花じゃなくて、なんていうの、リア恋枠!」「俺、前から結構狙ってた」
2015-12-15 01:24:3711 クラスでもまあまあ真面目で、かといって地味すぎず、でもそんなに目立つタイプではないあいつのことをそういう目で見てるやつがおったなんて知らんかった。 あいつのことやんやと話されていて…… わいわい盛り上がってる中には入らず、隅っこで枕に顔埋めてたら、 「もー、マルぅ?」
2015-12-15 01:24:4512 章ちゃんがぽふぽふ頭を撫でてきた。顔を上げると、 「今マルが考えてること多分ぜーんぶわかっとるで?」って。 「へ?」 「もーー、なんちゅー顔しとんの?」 「章ちゃん、なんて?」 「好きなんやろ?ほいで、焦ってんねや?」 「…………知ってたん?」
2015-12-15 01:24:5713 「マルたらしやのに、なんか一人だけ違うなあって思っててん。幼なじみやいうても、それ以上、って感じして」 章ちゃんはにこにこ、いや、にやにやしながら、俺の頭をぽんぽんってしてきた。 「マル今逃したら、とられてまうかもなー?」 「…章ちゃん、俺、どうしたらいいん?」
2015-12-15 01:25:0614 「マルが一番わかっとるやない?」 天使のような顔してるのに悪魔みたいに煽る章ちゃんに、さらに焦った俺は、 「…俺、ちゃんと伝える」 ようわからんうちに、決意をした。 あいつにちゃんと告白するって。
2015-12-15 01:25:1415 電気暗くして布団潜ったあと、亮ちゃんも気づいてるの?ってきいたら、多分亮は気づいてへんと思うで、って言ってた。 章ちゃん、ほんま何者なん… 菩薩とかなんかなあ…
2015-12-15 01:25:2016 *** 2日目。 海岸清掃をして、海難訓練したら、全行程終了。バスに乗り込んで学校に戻って、解散。 同じ方向だから必然的に、いつも通り、あいつと一緒に帰るんやけど… バス降りる時に章ちゃんに、決める んやで、ってウインクかまされた。
2015-12-16 09:39:1017 「これ、工場で試食した干物超美味しかったから、買った!りゅうママにもあげて!はい!」 「えっ、ほんま?わざわざありがとう。おかん喜びはるわ」 ほわほわ〜って笑うあいつといつも通り………ってあかん!あかんぞ、俺! でも、いざどうするって言われると、もだもだしてもうて。
2015-12-16 09:39:3218 「??? りゅうどうかした?」 きっと深刻そうな顔して黙りこんでたんやろうな。あいつが不思議そうに顔を覗き込んできた。 「…なあ」 「なに?」 「……俺、冬の駅伝あるから引退試合やないんやけど…… インターハイ予選、応援来てくれん?」
2015-12-16 09:40:2719 あいつはちょっとびっくりした顔をしたけど、そのあと、なんだぁ、ってふわっと笑った。 「うん、行くよ。最初から行くつもりだったし」 だから頑張ってね、って。 そのあとなんも言えずに、タイムアップ。 ばいばい、またな、って家の前でいつも通り、別れた。
2015-12-16 09:41:2420 あーーーー章ちゃん……… 俺は決めるもなにも重要な問題を先延ばしにしてしまった!!! あそこで、幼なじみとしてやなく彼女として、ってかっこいいこと、なんで言われへんかったん俺!?
2015-12-16 09:42:3621 ……けどインターハイ予選、応援きてくれるって。 今度こそ、そこで。 そう考えたら、明日から再開される部活漬けの毎日に、力入れられそうな気がした。
2015-12-16 09:44:0722 *** 来てもうた… インターハイ予選…… 競技の自信は、ある。 ずっと前からここにかけてめちゃめちゃ練習してきた。 惚れたはれたの話で、部活に支障をきたすのは絶対にあかん、って思ったのもあったけど、何かに打ち込んでないと、いろいろ考えてまいそうで怖かった。
2015-12-20 18:23:4923 競技が全部終わったら、あいつに今日のお礼して、ちゃんと気持ちを伝える。 競技の前にあいつの顔見て話ししたら、なんか弱りそうな気ぃしたから、応援席の方に顔出すんはやめて、 《全部終わったら、一緒に帰ろ。ごめんやけど、待っててくれへん?》 それだけLINEしておいた。
2015-12-20 18:23:5724 章ちゃんからは 、 《こっち来んのやろ?亮たちと見てるで、がんばり٩(◦`꒳´◦)۶》 ってLINEがきてた。 章ちゃんってほんま何者なん…
2015-12-20 18:24:1525 "男子5000mに出場する選手は…" 集合のアナウンスがかかって、トラックに出る。 あそこらへんおるんやろなあ、てスタンドを見ると、章ちゃんと亮ちゃん、その横にあいつが座ってた。 なんもしてへんのに、なんでやろ…、あいつこっちに気づいて、あ!って顔した。
2015-12-20 18:24:26