同じPicaの活字でも、鋳造所や地域によって大きさがばらつく。だからポイント・システムによって標準化しよう、という方向に最終的に向かう。この方向を逆転させて考える人が多すぎるようだ。
2011-02-21 18:45:00「12 ptのPica活字」などという人がたまにいるが、アメリカンポイントシステム制定以前に、Picaの活字が12 ptになる必然性なんてどこにもない。
2011-02-21 18:48:25ポイント制以前の活字のサイズを、「何々ポイントシステムの何ポイントに等しい」なんてのも、同様に間違っている。もし定規で測って何ポイントかになっていたとしても、それは偶然であって、必然ではない。
2011-02-21 18:50:06とにかく、ポイントシステム制定以前の活字の大きさは、少なくとも標準的な尺度との対応関係が見いだせないという意味で、あてにならない。さらに、製造者によって大きさがばらつく。だから標準化の必要が認識された。はじめから、このボディは何ポイントなんて言えたら、ポイントシステムなんて不要。
2011-02-21 18:54:10意地悪な反論→「だけど、MS&J社のJohnson Picaは12 ptなんでしょ?」。たしかに。しかし、そのPicaがアメリカンポイントシステムの基準の大きさに決まったのも、ポイントシステムと同時なので、制定以前の活字ボディをptで計測することには、やはり必然性はない。
2011-02-21 19:01:17つまり、Pica活字の大きさは「Picaだ」という以外に正確には言いようがない。Small Pica活字の大きさは「Small Picaだ」という以外に正確には言いようがない。ということ。この点がわかってない人も多い気がする。気をつけましょう。
2011-02-21 19:04:15活字ボディのばらつきや非互換性について指摘した最初の文献は、1683–4年のJoseph MoxonのMechanick Exercises。オランダ活字の輸入の際の問題を指摘している。
2011-02-21 19:15:07つまり、活字の製造と消費が自己完結している場合、非互換性は問題にならない。地方都市の教会附属印刷所や地方新聞社の場合等。印刷生産が拡大し、交通手段が進歩し、書籍が商品として、さらに活字が商品として流通し始めると、ボディサイズの非互換性は「組版不可能」という致命的な問題になる。
2011-02-21 19:19:17ボディサイズの非互換性が19世紀米国で深刻な問題になったのは、米国が当時最高度に発展した商品生産社会になったから。大陸間横断鉄道の開通は1860年代。フランス人の合理主義が生み出したポイントシステムが、アメリカ人にとっては理論ではなく現実の問題に対処するために絶対に必要とされた。
2011-02-21 19:24:02フランス人が原理を尊重したのに対して、アメリカ人は現実的な経済性を重視した。造り替える必要のある鋳型の数を少なくするため、本来1/6インチであるべきPicaの大きさを既存のMS&J社のPicaの大きさに決めてしまった。
2011-02-21 19:26:37他の鋳造所も一部を除いて同意した。最大手の鋳造所のサイズに合わせた方が売れるからである。アメリカンポイントシステム制定後、イギリスもすぐに追従した。イギリスの活字メーカーにとってアメリカは最大・最重要の市場だったからだ。
2011-02-21 19:29:19フランス人が残念なのは、その合理主義ゆえに1790年代に仏インチ(pouce)を廃止しメートル制に移行したこと。ディドーは0.4 mmベースのシステムを考案したが実用化されず。正確に1/72仏インチに基づくディドーポイントはメートル制と無関係のまま使い続けられた(DTPまで)。
2011-02-21 19:37:32