高橋健太郎さんによる『音響メディア史』批評。

批判論点:中村とうよう、油井正一クラスの人だって聴けてなかったものが、今は何千曲と聴ける。サウンドに触れない、マシーンにも触れない、過去の研究書などを引いて、そのパッチワークで歴史を俯瞰する音響メディア史論 目次: 1.『音響メディア史』批判(1)(Page-1) 2.『音響メディア史』批判(2)(Page-1) 3.とうようずチルドレンとして・エンジニアとして(Page-1) 続きを読む
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kentarotakahashi @kentarotakahash

まあでも、『レコードの美学』は1990年。僕もその頃は1890〜1910年代の音源なんて聴けてなかったから、こんなこと分からなかった。でも、『音響メディア史』は2015年。そこでも細川さんを参考文献にして、マイクのおかげで小さな声でも、とか書かれているとガックリ来るわ〜。

2016-10-20 02:21:58
kentarotakahashi @kentarotakahash

この本(『音響メディア史』)はそういう過去の研究書などを引いて、そのパッチワークで歴史を俯瞰するみたいな体裁にはしているものの、筆者達が 丁寧に音源に当たって、史実を確認していった形跡がほとんどない。たぶん、テキスト・トゥ・テキストの作業ばかりなんじゃないかな。

2016-10-20 02:35:00
kentarotakahashi @kentarotakahash

でも、『音響メディア史』を語るのに、サウンドに触れていない、マシーンにも触れていない。それじゃあ、碌なものができる訳ない。史実の間違いの多さも、実体験の支えがなく、流れが掴めてないからに思える。

2016-10-20 02:35:59
kentarotakahashi @kentarotakahash

あ〜、だいぶスッキリした。でも、まだまだ挙げていったら、こんなもんじゃないよ、この本。

2016-10-20 02:50:52
kentarotakahashi @kentarotakahash

あ〜、さっきのはスタジオでの録音時の方式ですね。最終メディアだと、SP50年、LP35年、CD25年、配信10年とか?QT @wonosatoru @kentarotakahash(揚げ足とるようで恐縮ですが、デジタル録音はCDの一般販売からと考えても35年以上では?)

2016-10-20 02:53:41
kentarotakahashi @kentarotakahash

別に僕の講義聴かなくても、YouTube行って、1905年とか年号入れたら、その年の曲がだだーっと聴ける。中村とうよう、油井正一クラスの人だって聴けてなかったものが、今は何千曲と聴ける訳です。研究者がそれを知らないとは思えない。 twitter.com/ak_msy/status/…

2016-10-20 03:10:38
ak / Masaya Kato @ak_msy

@kentarotakahash 健太郎さんの講義聞いてないない人は、その辺の音源が今聴ける状態にあって、いろんなことが分かったということは意外と知られてないということなのではないでしょうか?

2016-10-20 03:02:05

2 .『音響メディア史』批判(2)

kentarotakahashi @kentarotakahash

じゃあ、もうちょっと書こうか。「レス・ポールは〜上記「モデル200」を私設のスタジオに導入する。その際彼は、同期に設置された2つのヘッドに再生ヘッドをもう一つ付け加え〜」。デタラメ。レス自身の証言とも異なるし、彼の死後、検証されたこともふまえてない。 pic.twitter.com/eyz3eGylOg

2016-10-20 09:11:06
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kentarotakahashi @kentarotakahash

レス・ポールはAMPEX200は使っていない。レス自身がビング・クロスビーからAMPEX300をプレゼントされたと語っているし、自宅スタジオの写真に残っているのもAMPEX300。そして、AMPEX300にヘッドを増設したのは、ツアー中のシカゴのホテルの一室だったと語っている。

2016-10-20 09:13:10
kentarotakahashi @kentarotakahash

だが、レスが自慢げに語るヘッド増設は実用性に欠けるアイデア。前の録音が消えちゃうんだから。思いつきで改造機を作ったが、スタジオでの録音はAMPEX300+ディスク(LA時代)、AMPEX400二台のピンポン(NY移住後)だったと思われる。前者は写真が、後者はテレビでの実演がある。

2016-10-20 09:20:13
kentarotakahashi @kentarotakahash

あと、この本ではレス・ポールを多重録音の開拓者として扱っているけれど、多重録音の歴史ははるかに古く、先駆者はナサニエル・シルクレット。1931年に歌の多重録音を、1932年にはエンリコ・カルーソーの1905年盤にオーケストラをオーバーダビングしたリミックス盤製作をしている。

2016-10-20 09:34:01
kentarotakahashi @kentarotakahash

多重録音というとレス・ポール。マルチトラックのレコード制作の代表としてビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』、ビートルズ『サージェント・ペッパー〜』が出てくるって、お約束事っちゃお約束事なんだろうけど、マルチトラックに関しては彼らはむしろ遅れていたのは今では多くの人が知るところ。

2016-10-20 09:40:06
kentarotakahashi @kentarotakahash

154ページから「テープ編集の時代」という段落が始まるんだけれど、そこで解説されているのはマルチトラックで、ピエール・アンリやグレン・グールドのテープ編集はその前の段落で説明されている。このへんも編集者を含め、内容が理解できていないんではないだろうか。 pic.twitter.com/stZxWd7xqk

2016-10-20 09:45:10
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kentarotakahashi @kentarotakahash

「音素材を綿密な編集・加工の行程にかけることによって構築されたのが、この『ペット・サウンズ』」とあるけれど、このへんも録音・編集・ミックスの区別がよく分かっていない感じがする。「ハープシコードと二本のベース〜」とかはアレンジの話だし。 pic.twitter.com/kD9oETwjR5

2016-10-20 09:56:30
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kentarotakahashi @kentarotakahash

萩原健太くんも言ってたけれど、ブライアン・ウィルソンは基本、生音録音派。アレンジの中でいろいろやっている。SEも事前に計画されている。ミックスはむしろ素直。エキセントリックな電気処理とか、ミックスの段階で音楽を作り替えてしまうようなダブ的なこととかはあまりしない。

2016-10-20 10:01:50
kentarotakahashi @kentarotakahash

ああ、そうですね。こないだ、サンレコ連載にそういうことを書いたばかりだった。QT @keijimura @kentarotakahash (大勢で聴くようになったのはDJ以後と言えるかも)とありましたが、ジュークボックスはどうですか?

2016-10-20 10:25:00
kentarotakahashi @kentarotakahash

「ダンス・パーティーにレコード演奏を持ち込んだのがジュークボックスだったと考えていいだろう。その意味では、DJこそ不在だったものの、今日に至るクラブ・カルチャーの萌芽がこの頃、ジュークボックスとともに生まれた」 サンレコの9月号にこう書きました。 @keijimura

2016-10-20 10:26:27

3. とうようずチルドレンとして・エンジニアとして

kentarotakahashi @kentarotakahash

なんか昨夜から自分が書いていることに既視感があると思ったが、これだ。『ポピュラー音楽とアカデミズム』収録の中村とうよう「ジャーナリズム」から見たポピュラー音楽研究」。 amzn.to/2evzivS

2016-10-20 10:51:46
kentarotakahashi @kentarotakahash

アメリカの音楽学者、チャールズ・ハムの「歌手たちによる最初の成功したディスクは二十世紀の最初の十年間のエンリコ・カルーソほかのオペラ・スターたちのものだった〜」に始まる一文を槍玉に「隅から隅まで間違いだらけ」と一刀両断している。

2016-10-20 10:57:38
kentarotakahashi @kentarotakahash

でも、これ、たまたまチャルーズ・ハムが槍玉にあがっているだけで、ポピュラー音楽研究者全般が「あまりに初期のポピュラー音楽について無知」であるとし、オマエラ、どれだけSP盤を収集して聴いたのだ? サウンドに触れずに書いているからデタラメばかりなのだ、と喧嘩を売っている。

2016-10-20 11:03:12
kentarotakahashi @kentarotakahash

とうようさんはアコースティック録音は決して音が悪くなかったことも強調している。アコースティック録音時代が技術的に劣悪だったかのように言っているのはシロートだと。『音響メディア史』にもその傾向はあって、アコースティック→電気、ディスク→テープですぐに音質向上したように書いてある。

2016-10-20 11:07:34
kentarotakahashi @kentarotakahash

ところが、初期の電気録音は35年間ノウハウを積み上げた最終期のアコースティック録音より音が良いとは言い切れなかった。同じことはアナログ録音→デジタル録音でも私達は経験しているけれど。とうようさんはSP盤を集めた実体験から、それを断言している。

2016-10-20 11:10:14
kentarotakahashi @kentarotakahash

しかし、そんなとうようさんでも集めたビリー・マレイのSP盤は16枚だった、と書いてあって愕然とする。何十年もかかって集めた16枚のSP盤の聴取体 験から、カルーソーを偏重する研究者に異を唱えたのだ。当時のポピュラーなレコード歌手をオマエラはどれだけ聴いたのか?と。

2016-10-20 11:19:53
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