高橋健太郎さんによる『音響メディア史』批評。
今はネットをめぐれば、すぐ数十曲のビリー・マレイを聴くことができる。マレイより上の世代のダン・W・クィンだって聴ける。必要なのは「聴く意志」だけ。おかげで、僕はとうようさんが聴けなかっただろうアコースティック録音時代の音源も何千曲と聴けるラッキーを手にしている。
2016-10-20 11:20:25ポピュラー音楽あるいは音響メディアなんてものを語るからには、聞かなきゃ話にならない。通説、俗説を越えるにはそれしかない。学者はそこがあまりおざなりで、だからシロートのようなことばかり書く。三井徹さんの手前、日本のことには触れてないけれど、とうようさんはそう言いたかったんだろう。
2016-10-20 11:33:04なので、とうようずチルドレンのワタクシとしては見過ごせなかった訳です、『音響メディア史』のような本は。通説の寄せ集め方すら杜撰で、史実も間違いだらけなんだから。
2016-10-20 11:37:34根本的な命題において、『音響メディア史』という本が間違っているのはここだな。「マイクこそが電気録音の本質なのだ」。無用なマイクロフォン信仰。電気録音の本質は、電気信号化された音響は距離を越えて、複数の信号を電気的にミックスできる、ということですよ。 pic.twitter.com/YeilaBpf8W
2016-10-20 12:03:41アコースティック録音のホーンも電気録音のマイクも集音機。マイクの方が自由な場所に置けるようになったけれど、一本のマイクを使うだけだったら、利点はその程度。ところが、電気録音では別の部屋に置かれた複数マイクの信号もミックスできる。過去に録音したディスクの信号もミックスできる。
2016-10-20 12:09:17距離も時間も越えて、複数の信号を電気的にミックスできるようになったのが、電気録音の革命性。空気を揺らさず、回路内で起きる出来事が音楽を創り出すようになった。そこを見ないで、「マイクこそ電気録音の本質」とか、シロートっすよ。これも細川周平『レコードの美学』の悪影響かもしれないけど。
2016-10-20 12:16:53まあ、エンジニアにとっては、神聖なものではあります。 pic.twitter.com/LFQ4n69uGB
2016-10-20 12:24:05このことを考えると、ジャマイカ、サウンドシステムの特異性が際立ちますね。しかし、そのジャマイカでもジュークボックスはビジネスと成立していて、チャンネル1を運営していたフーキム兄弟のレーベル、スタジオ運営前の仕事はジュークボックス・ビジネスでした。 twitter.com/kentarotakahas…
2016-10-20 11:26:25「ダンス・パーティーにレコード演奏を持ち込んだのがジュークボックスだったと考えていいだろう。その意味では、DJこそ不在だったものの、今日に至るクラブ・カルチャーの萌芽がこの頃、ジュークボックスとともに生まれた」 サンレコの9月号にこう書きました。 @keijimura
2016-10-20 10:26:27この本も膨大な参考文献を挙げているんですが、読むと違うことが書いてあるはずなんですよ。本によって。史実についても。複数ある説のどれが正しいのか、どうやって判断したのか? そこも分からない。 twitter.com/MasahiroKitano…
2016-10-20 15:34:26ここから始まる高橋さんの批判とても面白い。単に出鱈目な本の批判ってだけではなく、印刷された本だけを重視する一部の人文科学の方法への批判としても。 いい加減なことを書いても参照文献を出しておけば責任はそちらに行くのでいいや主義というか… twitter.com/kentarotakahas…
2016-10-20 13:02:20複数の資料を批判的に検討して、最も矛盾なく、蓋然性の高い史実の記述に到達しようとする訳だけれど、このジャンルに関しては、そこで最大の判断材料になるのは音源なんだよね。文献も証言も正しいとは限らない。でも、音源があれば、自分の耳で聞き、あるいはPC入れてアナライズだって出来る。
2016-10-20 15:42:17まとめ読み返してみたら、一つ間違いを指摘し忘れてたのに気づく。このページ、「同機に設置された2つのヘッドに再生ヘッドをもう一つ加え〜」とも書いてあるが、AMPEX200や300を含め、この時代のテープレコーダーはどれも3ヘッドです。レス・ポールが加えたのは4つ目のヘッド。 pic.twitter.com/HLlOGWlbqO
2016-10-21 01:32:264.マグネトフォンK-7
マグネトフォンK-7、気になって調べてたら、こんなスウェーデンのサイトを見つけた。1943年のK-7はシンクロナス・モーターを採用したと書いてある。これは知らなかったな。 filmsoundsweden.se/backspegel/mag…
2016-10-21 02:20:18このドイツ語のブログにはステレオ録音ができるようになったと書いてある。シンクロナス・モーター採用+ステレオ仕様になったのがK-7。1943年発表。が、実際に生産されたかどうかは、よく分からない。 blog.notebooksbilliger.de/retromania-das… …
2016-10-21 02:28:37こんなステレオ・モデルの写真らしきものは残っているが。 pic.twitter.com/vmYdfT39tJ
2016-10-21 02:29:21よく分からない理由の一つは、AEGの工場は東ドイツ側だったんだよね。終戦時、30台のマグネトフォンK-7が工場で生産途中だったという話はある。が、実機が確認できるのは、戦後に生産されたK-8。 youtube.com/watch?v=uYXHws…
2016-10-21 02:32:08『メディア音響史』が実在したかどうか分からないK-7でヒットラーが演説を録音した、と書いてしまったのは、この『音響技術史』をネタ本にしたからで、この『音響技術史』はたぶん、1946年のBBCのレポートをネタにして、K-7について書いているのだと思われる。 pic.twitter.com/KpThfEW573
2016-10-21 02:40:21マグネトフォンK-4は第二次大戦勃発前に発表されていたので、西側も情報を持っていた。が、その時点ではK-4はDCバイアスだった。1940年以 後、 ACバイアスに仕様変更。その高周波化で、周波数特性を飛躍的に高めた。K-4のメカニズムは完成度高かったので、シャーシはそのまま。
2016-10-21 02:48:49R-22(放送局用モデル、ヒットラーが最も多く使ったのはたぶんコレ)、K-5(再生専用機)、K-6(R-23)、そしてK-7と開発は続いたが、シャーシは変わらなかった。だが、K-4の時点で高周波ACバイアスに仕様変更されていたことは西側には伝わっていなかった。
2016-10-21 02:51:14このため、1946年のBBCレポートは、DCバイアスだったK-4に対して、最新型のK-7は高周波ACバイアスである、という錯誤を持ってしまった。それが『音響技術史』→『音響メディア史』と伝播しているのだろう。
2016-10-21 02:56:22ちなみに、僕はテレフンケンのM15Aを持っていたことがあるけれど、見た目からして、AEGマグネトフォン直系のマシーンだった。 pic.twitter.com/pymCTuyaxA
2016-10-21 03:10:39ところで、マグネトフォンK-4の録音物はたくさん聴けるんですよ。ひとつ聴いてみましょう。大変にリアルな録音です。 youtube.com/watch?v=u_Mt87…
2016-10-21 03:32:56何がリアルって、客席で咳をする人がいるのが非常にリアルです。この交響曲第4番で咳をしている人も同じ人でしょう。エンジニアのフリードリフ・シュナップは頭抱えただろうなあ。 youtube.com/watch?v=Nsx_iS…
2016-10-21 03:38:54