マーセナリイ・マージナル #4

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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リンク note(ノート) 第2話【マーセナリイ・マージナル】 | ダイハードテイルズ | note 「助けてくれ」「ただし相応の代価をもらう」「サツガイという男を知っているか」「おれは生かされた。奴が全ての始まりだ」「ならば一人、ニンジャを売れ」「ナハト……ローニン……」「オレはサツガイを知っているぜ。マジにな」 オレが拾ったのは、死神だったんだ。 マスラダがマッチを擦って火を灯し、それをオリガミに移していくのを見て、アユミは驚きに目を見張った。「ちょっと、何をしてるの!」「なにが」マスラダも逆に怪訝そうにアユミを見返した。金属の盆の上で、アブストラクトな水晶枝めいたオリガミ作品は燃え萎びてゆく。「もっ
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「ドーモ。ナハトローニン=サン」先手を打ってアイサツしたのは赤黒のニンジャだった。「……ニンジャスレイヤーです」「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン」ナハトローニンは油断なくアイサツを返した。「ナハトローニンです。企業の猟犬どもに貴様の名は無いな。ソウカイヤの戦士でもない……」◆

2016-10-20 22:29:23
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◆グガガガ。ニンジャスレイヤーの背後で、裂けた壁と押し分けられ歪んだ配管が悲鳴めいた軋み音を立てた。ニンジャスレイヤーは前傾姿勢を取る。掴みかかる獣の予備動作めいていた。メンポの「忍」「殺」の文字が一瞬、マグマめいて赤熱した。「貴様を殺す」「誰の差し金だ」「……おれ自身……!」◆

2016-10-20 22:30:51
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ムキョウは震えて携帯端末を取り落し、拾い、必死にコールした。「ヤマナラ=サン!ヤ、ヤマナラ=サン!別のニンジャが……」『注意してください、ムキョウ=サン。ナハトローニン=サンからつかず離れず……』マネージャーはあてにならない。ムキョウのタノシイがバッドトリップを誘発する。

2016-10-20 22:37:18
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「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがナハトローニンに襲い掛かった。ナハトローニンは刃を振るうが、赤黒のニンジャは斬撃をすれすれにかわしながら胸に短打を打ち込み、ナハトローニンは斬りながら横へ転がって回避する。「アイエエ……テストだ。類似の試験問題を」ムキョウは正気を保とうと務める。

2016-10-20 22:40:02
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ムキョウには人生経験が乏しい。高級マンションと試験会場の行き来が彼の生活だった。どれほどメイクマネーしようと、彼の実経験はあの女子高生とさして変わりはしない。試験問題とテキスト類の疑似体験でしのがねばならない。二人のニンジャは激しく戦い、試験開始時間は刻々と迫る。

2016-10-20 22:45:27
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ナハトローニンは刃をクルクルと回して盾のように打撃を近寄せず、突きを繰り出しながら間合いを取る。ニンジャ同士の戦闘において、素手のカラテと武器のカラテがかち合った場合、己の最適カラテ距離に実際の間合いをどれだけ嚙み合わせるかが重要になる。拳が届かず刃が届く距離。彼の間合いだ。

2016-10-20 22:49:11
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ニンジャスレイヤーは踏み込もうとした。膝頭に冷たい刃が触れた。「グワーッ!」神速の牽制斬撃。ナハトローニンはバランスを崩したニンジャスレイヤーに返す刀を浴びせに行く。双眸の赤黒の炎が揺らいだ。死が迫る。彼は……「イヤーッ!」膝から血が噴き出した。彼は敢えてロケットスタートした。

2016-10-20 22:55:10
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「ヌウッ!」ナハトローニンは目を見開く。予想外の無謀なムーヴだ。突き出したカタナがニンジャスレイヤーの左肩を貫いたが、精密な狙いのもとで繰り出された一撃ではない。手ごたえは薄く、致命部位を捉えていない。そして弾丸めいた……否、バッファローめいた赤黒の質量が衝突した。「グワーッ!」

2016-10-20 22:59:58
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KRAASH!ナハトローニンが吹き飛ばされた先は配管パイプと壁の裂け目、ニンジャスレイヤーの出現地点だった。ニンジャスレイヤーは後を追おうとして、呻き、膝をついた。「ヌウーッ……!」二か所に重傷。立っていられぬほどの。「アイエエエ!」ムキョウは周囲をせわしなく見渡した。どうする。

2016-10-20 23:01:41
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「ヤマナラ=サン!護衛ニンジャが……」ムキョウは言葉を飲み込んだ。赤黒の死神のジゴクめいた視線が彼を射抜いたのだ。ムキョウは死を覚悟した。『つかず離れず……』むなしいアドバイスが聞こえる。ニンジャスレイヤーはムキョウから視線を逸らした。壁の穴を睨み、武者震いめいて肩を震わせた。

2016-10-20 23:03:36
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「ヌウウウ……!」震えるニンジャスレイヤーの肩が陽炎めいて滲み、赤黒の装束がぐつぐつと沸騰を始めた。配管パイプが激しく蒸気を噴き出す。穴は闇。左肩に刺さったままの刀を掴み、引き抜いて捨てた。ムキョウは歯を食いしばり、ニンジャスレイヤーの後ろを走り過ぎた。試験会場を目指したのだ。

2016-10-20 23:07:18
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ニンジャスレイヤーにムキョウは見えていなかったか。否。当然、彼はナハトローニンに護られる非力な男を意識していた。だが彼が対すべきはナハトローニンである。あのプロ受験生ではない。ニューロンの奥底の邪悪な存在が彼の血管に新たな力を送り込む。かりそめに傷を癒し、腱を繋ぎ、装束を塞ぐ。

2016-10-20 23:12:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

傷の治癒と引き換えに、ニンジャ聴力が、ニンジャ第六感が鈍化してゆく。ニンジャスレイヤーは身を起こし、カラテを構えた。壁穴の奥は倉庫だ。ナハトローニンの行動経路をある程度把握したうえで彼は倉庫内を回り込み、壁越しのアンブッシュ(奇襲攻撃)を試みた。奴は逃れたか。追うべきか。

2016-10-20 23:18:56
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(力だ。ナラク。殺す力をよこせ)マスラダはニューロンの奥底の邪悪に呼びかけた。霞んだイメージと憎悪が反響し、過去の記憶の片鱗がフラッシュバックした。冷たくなってゆくアユミ……散らばったオリガミ……胸を貫いた……スリケン……サツガイの……スリケン……眼差し……!「サツガイ!」

2016-10-20 23:21:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」攻撃は後方斜め上!ニンジャスレイヤーの目が燃え上がった。炎の軌跡を描き、かれは振り向きながらチョップを振り上げた。手甲とカタナがぶつかり合い、軋んだ。ナハトローニンは倉庫内から街路へ迂回し、道向かいの建物の屋根、死角から副剣を用いたアンブッシュ攻撃を試みたのだ!

2016-10-20 23:29:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

飛び降りながらの斬撃でニンジャスレイヤーを真っ二つにすべく襲い掛かったナハトローニンであるが、企みは鮮やかに阻まれてしまった。「こいつ!」戦士は目を見開いた。一方、ニンジャスレイヤーにとってもこの防御は博打だった。見て・感じて瞬時に反応したのではなかった。予測に過ぎなかった。

2016-10-20 23:32:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナハトローニンは敵を侮りはしなかった。空中蹴りを放ち、反動で間合いを取って着地した。ニンジャスレイヤーはカラテを構え直す。ナハトローニンは副剣の柄頭の機構を捻じった。『非戦闘員は即時緊急避難してください』冷たい音声が発せられ、刀身が不気味な青い光を帯びた。アクティブ・カタナ発動!

2016-10-20 23:39:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのとき、「御用!」「御用!」けたたましいサイレン音と金属音が鳴り響き、表通りから重厚な逆関節ロボットが靄を掻き分け現れた。モーターガシラだ。その両脇に、金属盾を構えた複数のメガコーポ武装自警従業員である。「そこの戦闘者二名!ちょっとやめないか!」スピーカー音声が鳴り響いた。

2016-10-20 23:43:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャ二人はそちらを一瞥しただけだった。武装自警従業員の隊長はモーターガシラを前進させ、盾の陰から呼びかけた。「ニンジャといえど、この区域での戦闘は許されない。数分以内にこちらもニンジャ数名をこの区域に……アバーッ!?」突然の吐血!「アババーッ!」他の従業員も!何が起きた!?

2016-10-20 23:45:33
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武装従業員は目、鼻、口から無残に出血し、地面をのたうち回った。「アバババーッ!」「ピガッ!ピガガガーッ!」モーターガシラすらも機能障害を起こし、横倒しになった。「アバーッ!」巻き添えに武装従業員下敷き殺!「ウツケめ。風下に立つからだ。どうでもよし」ナハトローニンが言い放った。

2016-10-20 23:47:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ。これがアクティブ・カタナだ。刀身の青は、極めて強力な毒素それ自体が放つ光だった。機械に対しても生物に対しても極めて有害な毒素を放つ粒子が放たれている。ニンジャスレイヤーは瞬時に状況判断し、死者たちの逆側へ足を運ぶ。ナハトローニンは舌打ちし、青く光るカタナを構えた。

2016-10-20 23:53:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((これは……この毒は知らぬ)))ナラクが呻いた。(((これは奴のジツではない。文明の力よ。ナハトローニンのジツは奴自身に作用しておる……この毒に耐えうるブレッシング・ジツは、ハクメイ・ニンジャ・クランの秘伝……奴に憑依しておるのはキリカゼ・ニンジャ・クラン、辻褄が合わぬ)))

2016-10-20 23:59:16