- bookmark_vodka
- 461
- 0
- 0
- 0
-------------------- ┌ ┐ ┏ ┓ + ┗ ┛ └ ┘ --------------------
2016-10-23 00:38:54SS3-1 暗い、暗い、真っ暗闇。そこに差し込んだ一筋の光。 いつからそこに居たのだろう?そして、どの位の時間が経ったのだろう? 一瞬のようにも感じるし、随分長い夢を見ていた気もする。 さながら、夜寝て、そして朝起きる。 感覚的にはそんな一晩の時間経過と同じようにも思える。
2016-10-23 00:44:37SS3-2「げほっ!げほっ!」 突然感じた眩しい光に、彼女は意識を取り戻した。 目を開けたが視界がぼやけ、ぐらつき、定まらない。 何だか頭も朦朧としていて思考がまとまらない。 自分は一体誰で、ここはどこで、今まで何をしていたのだ? ズキッ、ズキッと頭が疼く。思わず頭を押さえる。
2016-10-23 00:47:06SS3-3 荒く呼吸を繰り返していく内に、漸く視点が定まってきた。 額に当てた自分の華奢な手、そして白い天井。 何故だろう、覚えのある光景ーデジャビュ。 体は動かせるか? …大丈夫そうだ。身体の動かし方はちゃんと覚えている。 頭の痛みを堪えながら身を起こすと、ベッドの上だ。
2016-10-23 00:51:46SS3-4 自分の意識を呼び戻した…と感じた眩しい光は太陽光。 今は何時だろうか?カーテンの隙間から見えた日光は、朝のもののように思える。 カーテン。そう、自分の寝ているベッドを囲っているカーテンだ。 病室?自分はどうしてここにいるのか? それよりも、自分は誰だ?
2016-10-23 00:54:30SS3-5 周りは静かで、人の動く気配はない。 時間をかけてゆっくりゆっくりと、脳内の靄を払っていく。 そして、ふっ と彼女は驚きに小さく声を上げる。 彼女はベッドの端に目をやる。 どことなく見慣れた制服が折り畳まれている。 そして、ベッドの下にはこれもまた見慣れた靴。
2016-10-23 00:56:47SS3-6 彼女はごくりと唾を飲み込むと、自分の心に語り掛けるように、何かを確かめるように、自分自身にしか聞こえないよう何事か呟く、呟く… そして、戸惑いを残しつつも自分の中で結論を出すと、着ていた病衣を脱いで置いてあった制服を着こみ、注意深くカーテンの間から部屋を見回す。
2016-10-23 01:01:53SS3-7 そこは、レイアウトは違っているがどこか見覚えのある病室。最低限の棚や物が置いてある、いたってシンプルな病室。 彼女は近くの引き出しを探してヘアゴムを見つけると、慣れた手つきでサイドテールを作る。 更に壁際…『目当ての物』を見つけたので、そちらも確かめる。
2016-10-23 01:05:58SS3-8 …壁にかかったカレンダーだ。目を覚ましてから気になっていた事。今は一体『いつ』なのか? 近寄ってみてみると、そのカレンダーは…間違っていなければ冬、12月を示している。 12月…だが、妙な違和感も感じる。何だろうか?
2016-10-23 01:12:35SS3-9 違和感の正体は直ぐに分かった。 …彼女はベッドに戻って端に腰掛ける。これから起きる事を考えて、そして、これからどうすべきかを考えて。 自分の周りには誰も居ない…少なくとも助言を授けてくれる人は誰も。 自分の頭で考えなくてはならなかった。 どうしたら、良いのか。
2016-10-23 01:18:21SS3-10 コツ、コツ、コツ… …暫くして、複数の人間の足音が部屋の外から響いてくる。 既に予想はしていた。この後どうなるかまで知っていたのだから。 ー病室の扉が開き、軍服を着た男性と白衣の男性が2名入室してきた。 彼女はゆっくりと立ち上がると、彼らの目の前に歩みを進める。
2016-10-23 01:22:07SS3-11「目が覚めたようだね、気分は良くなったかい?」 軍服の男性が笑顔で話しかけてくる。これに「はい」と敬礼を合わせて答える。 …今度は、流されてなどいない。 「宜しい。それでは君の名前を教えてくれるかな」
2016-10-23 01:23:25SS3-14 『今度』は私の心が揺らぐことは無かった。 もう十分過ぎる程に受け入れられていたから。 その返答に、目の前の男達の表情は輝いていた。
2016-10-23 01:27:38