伝奇小説家・荒山徹先生がアマチュア歴史研究家・鹿島曻について語る

伝奇小説家・荒山徹先生が、アマチュア歴史研究家・鹿島曻と歴史学各分野の彼我と肉薄を熱く語る。 鹿島曻が正しいかどうかは、おそらく正しくないんでしょう。 しかし、より俯瞰的に見た時に、正しくあることを市民に期待されているはずの歴史学が、鹿島曻と同レベルの正しくないことを、ごく自然に学会や市井に騙りかけて、影響力さえ与えていたという、どうにも悍ましく虚無に満ちた事態が示されます。 何だこれは。これが学問なのか。そんなものを市民は果たして信頼できるのか。というところまで荒山徹先生は真剣に問いかけます。 私は鹿島曻のことも歴史学の現状も存じませんので、おもしろおかしく笑わせていただいております。良くないなあ。
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アリラン太郎 @TArayama1961

「一読して本書を理解できる読者はほとんどないだろう」と野崎先生がお書きのように「鹿島史学」に触れた当初は、まったく理解できませんでした。狂えるアラブの詩人アブドゥル・アルハザードが書いた「読む者を狂わせる禁断の魔道書」、かの『ネクロノミコン』とはこれのことかあと思ったほどです。

2016-10-21 18:48:05
アリラン太郎 @TArayama1961

ところが「鹿島史学」がわかると、そうだったのか、と目からウロコが落ちる思いでした。邪神アザトース鹿島先生の繰り出す必殺技シャクシ理論とは、つまるところフィリップ・K・ディックが描くところの偽造記憶なのでした。わたしはバーホの『トータル・リコール』を見て鹿島史学を理解しました。

2016-10-21 18:56:39
アリラン太郎 @TArayama1961

つまりP・K・ディックがあくまでも個人的な次元で行なった記憶の偽造、それを国家レベルにまで拡大し、歴史ーー古代史に適用したのが、鹿島史学の核心であるシャクシ理論なのでした。それが理解できた時、ちょっと大げさですが、ものの見方、歴史の見方が一変してしまったような気さえしました。

2016-10-21 19:03:07
アリラン太郎 @TArayama1961

アザトース鹿島曻先生の主張を全面的に支持するものではありませんが、シャクシという考え方は知っておいて損はないと思います。自衛のために。何からの自衛か。歴史を盾に理不尽なことを強要してくる権力者やアカデミシャンから身を守るために。そしたら「せやかてシャクシなんやろ」と言い返せます。

2016-10-21 19:39:08
アリラン太郎 @TArayama1961

原田実先生『日本トンデモ人物伝』には鹿島先生の最期についてこうあります。 「2000年秋に体調悪化。2001年4月11日死去。現在は晩年の同志・松重楊江氏らによりその業績の再評価が行われている」 松重さんの著作は鹿島史学の羅列的な再構成なので、体系的な入門書が出れば、と思います。

2016-10-21 19:44:55
アリラン太郎 @TArayama1961

碩学原田実先生の著作には、もう一冊、鹿島史学を斬った本があります。『トンデモ偽史の世界』(楽工社)です。古朝鮮問題を扱った箇所で鹿島史学に言及がなされています。原田先生のおっしゃることにほぼ賛成というか、教えられてばかりなのですが、一点だけ、ちょっとひっかかる一節があります。

2016-10-21 19:53:06
アリラン太郎 @TArayama1961

引用します。 『史記』の前漢建国以前の記事はすべてオリエント史の漢訳・翻案であり、たとえば周はアッシリア、晋はバビロンだなどといいだすと、初めは好意的だった東洋史の研究者たちもこれを黙殺した。彼らは自分の専門の領域に入られることで、鹿島の論法のおかしさにようやく気づいたのである。

2016-10-21 19:58:21
アリラン太郎 @TArayama1961

「ようやく気づいた」のではなく、初めから気づいていたとわたしは思います。「鹿島の論法のおかさしさ」に気づきながら拍手喝采していたのだと思う。なぜかというと、アザトースが日本の古代史を破壊しているぶんには、彼らには面白かったから。もっとやれっと邪神を焚きつけ、けしかけたのです。

2016-10-21 20:05:15
アリラン太郎 @TArayama1961

けれども鹿島曻は日本古代史を蹂躙するだけの小物ではなかった。だって「原始の混沌あるいは破壊の大魔王」であるアザトースなんですから。鹿島先生は日本古代史をめちゃめちゃにすると、シャクシという無明剣をひっさげて日本列島を飛び出し、海を越え、半島と大陸の古代史の破壊に乗り出しました。

2016-10-21 20:11:27
アリラン太郎 @TArayama1961

「半島と大陸の古代史の破壊」こそは、野崎充彦先生がおっしゃられた「アジアの古代史全体を根本から評価しなおすことを目指した気宇壮大なもの」ということに他なりません。まさに壮図というべし、です。

2016-10-21 20:17:05
アリラン太郎 @TArayama1961

とすると、ここに新たな問題が生じて来るように思うのです。列島の古代史をめちゃくちゃにするのは大いに結構、どんどんおやんなさい、評価しますよ、しかしね。半島と大陸に対してそれをするのは許さない、という奇妙な思考のありようです。なぜ日本にだけはしてよくて、他国に対してはダメなのか?

2016-10-21 20:22:15
アリラン太郎 @TArayama1961

まったくもって不可解なダブルスタンダードです。そこへゆくとアザトース鹿島は筋が通っています。鹿島先生のロジックはこうです。シャクシなんて高等なものを当時の列島人が考え出せたはずがない。教えたヤツがいるんだ。ということは、教えたヤツは自国史でやっていたから教えることができたんだ。

2016-10-21 20:25:40
アリラン太郎 @TArayama1961

原田実先生の本は、こう続きます。 「かくして鹿島は、ますますその独自の借史論へと没入していくのである。 偽書への信頼、天皇家を渡来人とする説、日本帝国主義による歴史の変造という発想など、鹿島の主張には(後略)」 鹿島の主張? 戦後古代史研究者たちの発想、主張に思えますけど。

2016-10-21 20:42:13
アリラン太郎 @TArayama1961

戦後の古代史研究家たちは、こぞって記紀を「机上の造作」と退け、外国の文献を信頼しました。盲信といっていいくらいに。鹿島先生の「偽書への信頼」と五十歩百歩ではないでしょうか。だって、外国の文献が「机上の造作」でない証拠なんてどこにもないんですから。

2016-10-21 20:50:33
アリラン太郎 @TArayama1961

かくして戦後の日本古代史研究家たちは、ますます独自の奇説珍説へと没入していくのである。 騎馬民族征服王朝説、三王朝交替説、二王朝並存説、広開土王碑文改竄説、蘇我氏渡来説、などなど。 机上の造作? それをやってるの、あなたたちのほうなのでは?

2016-10-21 20:55:07
アリラン太郎 @TArayama1961

原田先生がアザトースの主張として第二にあげるのは鹿島先生の専売特許に非ず。中公文庫『日本の歴史1 神話から歴史へ』をご覧になれば一目瞭然です。著者は東大教授。 「本文は、その資料的価値を維持するために、原則として刊行時のままとしました」 まさしく資料的価値! 戦後古代史学の。

2016-10-21 21:03:45
アリラン太郎 @TArayama1961

原田先生が第三にあげる「日本帝国主義による歴史変造という発想」なるものも然り。つまり、これって戦後古代史学者たちが攻撃した皇国史観のことではありませんか。以上、原田先生が「鹿島の主張」として挙げた三点は鹿島先生の主張ではなく、戦後古代史学者たちの主張であったことを申し述べました。

2016-10-21 21:11:53
アリラン太郎 @TArayama1961

とすると、やはり鹿島先生も戦後古代史学の申し子であった、という平均的な評価に落ち着きそうです。アカデミシャンであったか、なかったかの違いがあるだけで(鹿島先生は弁護士でした)、所詮は同じ穴のムジナだった、と。やっていることは、程度の差こそあれ、同じことだったのだよ、と。

2016-10-21 21:18:22
アリラン太郎 @TArayama1961

それどころか、黙殺され、キワモノ扱いされたぶん、いっそ無害だったと評価すべきなのかもしれません。もちろんシャクシ理論という自衛の武器、渡世のドスをわたしたちに教えてくれたことは、大いに顕彰されていいと思います。

2016-10-21 21:22:48
アリラン太郎 @TArayama1961

古代ローマ神話にヤヌスという神がいます。前向きと後ろ向きの顔を持つ双面神です。アカデミーの世界にいる戦後古代史学者と、非アカデミーの世界に生きた鹿島曻先生との関係とは、畢竟するにヤヌス神なのではないでしょうか。双面神ヤヌスにして、かつ邪神アザトース、ということになりますけれど。

2016-10-21 21:29:34
アリラン太郎 @TArayama1961

10年ほど前、高名な戦後古代史学者の講演会に行き、ふと鹿島曻先生のことがなつかしく思い出されました。それほどお二人はよく似ておいででした。容姿も、雰囲気も。ま、個人の感想ですが。その古代史学者、上田正昭先生も鬼籍にお入りになりました。鹿島、上田両先生のご冥福をお祈り申し上げます。

2016-10-21 21:39:39