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ステファン・グラビンスキ『狂気の巡礼』について、中島晶也さんによる解説

グラビンスキとラヴクラフトの類似性と決定的な違い、近代怪奇小説が疑似科学的傾向を示しながらもSFとは一線を画して発展した理由などを、中島晶也さんがわかりやすく解説してくれました。
小説 書籍 文学 怪奇小説 ラヴクラフト 狂気の巡礼 グラビンスキ
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中島晶也 @AkiyaNakajima
ステファン・グラビンスキ『狂気の巡礼』のお気に入り3作、あれこれ悩んだ結果、 「海辺の別荘にて」 「チェラヴァの問題」 「領域」 に決めた。 #狂気の巡礼https://t.co/Q7cHTpJQQa
中島晶也 @AkiyaNakajima
収録作中、第二短篇集『薔薇の丘にて』からの6作は、グラビンスキの持ち味である怪異の疑似科学的解釈が、小説の技巧として完成されていく過程が楽しめる。全般に神経症的な雰囲気が濃厚で、怪異の発生に法則性があるという認識は示されるものの直感的な把握に終わることが多く、論理性はまだ弱い。
中島晶也 @AkiyaNakajima
恐怖度からいうと「狂気の農園」のキレっぷりがベスト(締めの1行がかっこいい!)なのだけど、怪異の論理を登場人物たちの葛藤の物語として有機的に展開させ得ているという点では、「海辺の別荘にて」が一段勝る。執筆順がどうなのか判らないが、グラビンスキが作風を確立させた作という気がする。
中島晶也 @AkiyaNakajima
それに比して『狂気の巡礼』からの8作は題材もバラエティに富み、時にユーモアも交える余裕も見せていて、特に「チェラヴァの問題」が世に数多ある分身/多重人格テーマ小説の中でもユニークなアイデアを用いており、非常に驚かされた。それとあの結末の裁判の判決、倫理的にはどうなのだろうか?
中島晶也 @AkiyaNakajima
「領域」は、グラビンスキとラヴクラフトの類似性と決定的な違いの両方が出ているのが、興味深い。クライマックスの怪異描写はクトゥルー神話的な興趣満点なのだが、一方で、その怪異が主人公の精神から生まれてくるというのが、ラヴクラフトの作風とは正反対なのだ。
中島晶也 @AkiyaNakajima
乱歩の「怪談入門」にも引用されているが、かつてドロシー・セイヤーズは"Great Short Stories OF Detection,Mystery And Horror"でホラー小説を分類にするに当たり、まず主題をマクロコスモス(超自然)とミクロコスモス(人間)に大別した。
中島晶也 @AkiyaNakajima
セイヤーズの分類に従うと、ラヴクラフトが描く怪異は基本的に外界からやってくる超越的な力の顕れであって、マクロコスモスに徹していた。人間の内なる精神が外界を変容させたり、あるいは外界の力と響き合って怪異を生んだりするような恐怖を、ラヴクラフトは描こうとはしなかった。
中島晶也 @AkiyaNakajima
それに対してグラビンスキが好んで描くのは、マクロコスモスとミクロコスモスの交感である。グラビンスキの作には、外界の怪異と人間の鋭敏な精神が互いに反応し合い、より大きな恐怖にエスカレートしていくものが多い。
中島晶也 @AkiyaNakajima
怪異の論理を語るところは一見すると科学的のようで、グラビンスキ作の根幹には、超越的な力との合一に憧れる神秘主義がある。19世紀末以降の近代怪奇小説が、心霊主義に代表されるオカルト思想の影響を受け、疑似科学的な傾向を示しながらもSFとは一線を画して発展した理由も、そこにあるのだ。
芝田文乃 SHIBATA Ayano◎ポーランド語翻訳 @ayanos_pl
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