掌小説語り～自作つぃのべる集～34

リュカ @ryuka511

イカロスは知っていた。その羽では空など飛べない事を。それでもイカロスは飛ぶだろう。勇気を示す為なんかじゃない。人に天を御する事など出来ないと示す為に。人の驕りと罪深さを一身に引き受け、太陽を目指し飛んだ。墜落死したイカロスは、英雄視される事など望まないだろう。 #twnovel

リュカ @ryuka511

魔王も世襲制だが、寿命の長い魔族が王位を継ぐには先代が自ら隠居するか、先代を凌ぐ力を示すしか無い。若き王子は父と対峙した。お前のような若造にこの者を超える力があるかと、父の頭上から睨みつける王者の冠を睨み返す。必ず父を倒しお前を手に入れる。俺こそ王に相応しい。 #twnovel

リュカ @ryuka511

次期女王となる私の下に縁談が山のように寄せられる。それらを聞き流し、戦況報告に来た騎士に目を向けた。今は大事な戦の最中、縁談など後回しとは建前で。騎士は私の指示に最敬礼で応え戦場へ戻っていく。貴方に誓ってほしいのは、忠誠ではなく愛なのに、などと言えるはずもなく。 #twnovel

リュカ @ryuka511

僕らを引き裂くお屋敷の高い壁を睨む。お屋敷に君を愛している人はいない。独りぼっちで泣いてる君を僕だけが愛した。独りぼっちで震えていた僕に君だけが温もりをくれた。この両手が羽になったなら、君をそこから救い出せるだろうか。いや、羽なんかなくても君をそこから救い出す。 #twnovel

リュカ @ryuka511

争い傷つく世界に、悲しみはもうすぐ終わると伝えよう。 #甘き滅びの日 が訪れる。それは溶かしたチョコレートに沈んでいくような、甘く温かな終焉。ほろ苦い闇に身を委ねれば、甘美な滅びの手が気道を優しく塞いでくれる。静かになった世界にレクイエムと甘い香りだけが残った。 #twnovel

リュカ @ryuka511

待てば甘露の滅びあり、とはよく言ったもので、どんなに癒し系何とかかんとかが流行っても、滅びに勝る癒しは無いのでありましょう。慌てず騒がず待っていれば、いずれ滅びに相応しい日がやってきます。その日まで、悔いなき日々を。って、もう遅かったようですね。 #twnovel #甘き滅びの日