掌小説語り~自作つぃのべる集~34

自作つぃのべるのまとめです。 2016年2月分
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リュカ @ryuka511

遥か昔、神族が悪しきものを封印した城があるという。それは再び世界へ魔手を伸ばそうとしていると。ある者は城を探し封印を強化しようとし、ある者は眠りに就く神族を呼び起こそうとした。悪しきものを利用し自らが世界を支配しようとした者が現れた時、神族は世界を滅ぼすと決めた #twnovel

2016-02-01 01:36:32
リュカ @ryuka511

「眠れないの。紅茶を淹れて頂戴」「紅茶では更に眠れなくなりますよ。ココアに致しましょう」深夜に私を呼び出したお嬢様の真意を本当は解っています。しかし解らないふりをしなくては。この時間は眠れないお嬢様の為の真夜中のティータイム。通わせるのは、想いを封じた言葉のみ。 #twnovel

2016-02-01 22:59:05
リュカ @ryuka511

君の為に世界を支配した。世界の全ては私の意のままだ。……君以外は。君が私を利用していただけなのは知っている。世界を支配し終えたら、私は用済みになるのだろうと思っていた。だけど君は変わらず傍にいる。私に無関心なまま。法衣を整え魔導師はそれでもいいと淋しげに微笑む。 #twnovel

2016-02-02 23:41:35
リュカ @ryuka511

「あなたは初恋のひとに似ていた」なんてありがちな口説き文句に、いとも容易く落ちた私が一番愚かだったんだろう。そういえば、私の初恋の人ってどんな人だったっけ。顔も名前すら思い出せない。初恋なんてそんなもんだ。時間が経てば、初恋から何度目かのこの恋も忘れるんだろう。 #twnovel

2016-02-04 00:25:20
リュカ @ryuka511

沢山の時間を共にした。だけど僕らは何一つ理解し合えていなかった。あわせた肌から隙間風が吹くような、そんな関係でしかなかった。去っていく君の背に未練が無いと言えば嘘になる。でもこれ以上一緒にいてもどこへも辿り着かないのは明らかだ。建設的な終わり、それが僕らの終幕。 #twnovel

2016-02-05 00:17:41
リュカ @ryuka511

一緒に死のうと決めたじゃなか。なのに何故。空の薬壜と動かなくなった君を見て途方に暮れる。君が先に薬を手に取った。君は最初からそのつもりだったのか。僕に生きろと言うのか。こんな世界で、君がいなくなってしまった世界で、どうやって生きろと言うのか。君の微笑みが、遠い。 #twnovel

2016-02-06 00:51:22
リュカ @ryuka511

もはやこれまでと城を革命軍に明け渡した。民衆は無血開城を喜んだが、我が一族の血脈は廃れようとしている。たとえ敗色濃厚でも、戦って血が流れる生き方を望んでいれば、我々の名は歴史から消えたりはしなかっただろうか。城を失った事よりも、一族を守れなかった事が悔やまれる。 #twnovel

2016-02-07 00:10:38
リュカ @ryuka511

武士は小さく息を吐き刀を下ろした。震える少年に行け、と首を振る。だが少年は目を見開き武士に詰め寄った。「なぜ盗人を逃がすのです。情けも施しも無用!」「只の気紛れだ」刀を納め歩き出す。本当に斬られるべきなのは、子供が盗人にならなければ生きて行けぬ世を作った我々だ。 #twnovel

2016-02-07 23:54:37
リュカ @ryuka511

大臣は王に問う。「何故、市井の娘を後宮に召し上げたのです?」「何故だと思う?」「分かりかねます」王は遠くを見るような目で答えた。「叶わぬ恋、だからこそ叶えてみようと思ったのさ」 欲しいものは全て手に入れてきた。権力で叶えただけの恋は、本物になるのだろうか。 #twnovel

2016-02-09 00:30:33
リュカ @ryuka511

温厚な神父は表の顔。彼の本職は暗殺者である。神は悪を裁けない。救いようの無い悪でも神は救わなくてはならないから。ならば神の手を汚さずに済むように。「懺悔しろ」硝煙に混じる血の臭いも慣れた。最後には私自身に銃口を向けるのだ。懺悔の必要など無いから、私は引金を引く。 #twnovel

2016-02-10 00:32:49
リュカ @ryuka511

大切な人を失った。私が何よりも優先し守らなくてはならないマスターだった。私は何と無能なのだろう。こんな無能な私など壊れてしまえばいい。壁に額を打ち付ける。作り物の、痛くない筈の身体が痛い。マスターを守れなかったくせに自分の痛みは感じる罪深い私を、罰して下さい。 #twnovel

2016-02-11 00:24:15
リュカ @ryuka511

君を守りたくて支えたくて、必死に背伸びした。だけど、伸ばした背筋は結局君に届かない。埋められない歳の差は、大きな壁となって立ち塞がる。君は僕よりずっと大人で、僕の手なんか無くても生きていける。それでも、大人びた君の微笑に混じる淋しさを、僕の手で消し去りたいんだ。 #twnovel

2016-02-12 00:58:43
リュカ @ryuka511

城の物置で幼い少女の肖像画を見つけた。幼いながらも王族の風格を備えた少女に少年は惹かれた。一体誰で、何故こんな所に仕舞われているのか、誰にも分からなかった。まるで歴史から抹殺されたみたいだと胸を痛める。きっと君を見つけると誓うと少女が嬉しそうに微笑んだ気がした。 #twnovel

2016-02-13 00:39:07
リュカ @ryuka511

今日も眠れなかった。鏡でクマの出来た目元を見つめ溜息を吐く。大切な人がいたはずだったのに、何も思い出せない。真っ白なベッドと天井が現実を突き付ける。見舞いに来たのは身内だけだと聞いた。思い出せない大切な人は、私から去っていったのだろう。きっとそれは正しい選択だ。 #twnovel

2016-02-13 23:37:51
リュカ @ryuka511

義理チョコに友チョコに自分チョコを選ぶのに付き合わされている。催事場を行ったり来たりして悩む背中へ、いい加減疲れたし気になって仕方がない事をツッコんでみる。「熱心なのはいいけどさ、俺には買ってくれないの?」「アンタには作るからここでは買わないよ?」 #チョコラ #twnovel

2016-02-15 00:01:19
リュカ @ryuka511

僕の八重歯が実は牙だと知った君の表情に、もう傍にいられないと悟った。戸惑う君に強引に口づけ別れを告げる。人間になってもいいと思える程に君を愛していた。そんな浅はかな自分に哀しさがこみ上げる。君に相応しい人と幸せに。揃いのピアスを付け続ける事だけは、許してほしい。 #twnovel

2016-02-16 00:07:14
リュカ @ryuka511

世界で最後の魔法使いである君は神殿に幽閉されている。ある者はそれを保護だと言い、ある者はそれを監視だと言った。ある日君の脱走計画を知る。知っているよ知っていたよ君が世界を憎んでいること。君が何をするつもりかも。最後に聞いた君の声を胸に、君が導く世界の終焉を待つ。 #twnovel

2016-02-17 00:23:34
リュカ @ryuka511

魔王によって闇に閉ざされた世界に火の雨が降る。森や家を焼く火に人々は恐れおののき、世界の終わりを嘆いて絶望する。だが僕は降る火の雨を恐れない。それは闇に満ちた暗い世界を照らす灯りにもなり得るからだ。光をありがとうよ魔王、この程度で全ての人間が絶望したと思うなよ。 #twnovel

2016-02-18 00:17:36
リュカ @ryuka511

魔王の最期の言葉に勇者は困惑する。「これは最初から決まっていた結末。いや、結末ですらないのかもしれんな」どういう意味だと問うも、憐れむような笑みだけ浮かべ魔王は斃れた。数多の魔物を屠った剣が輝きを失わないのが不気味に思え始める。僕は何かに踊らされていたのだろうか #twnovel

2016-02-18 23:53:57
リュカ @ryuka511

彦星は掟を破り天の川を越えようと飛び込んだ。自分達の愛は何者にも負けないと。だがそれは驕りだった。約束の日ではない天の川は、掟を破った彦星を罰するかのように荒れ狂い彦星を呑み込んだ。彦星が天の川にて溺死したと聞いた織姫は、失意のままに荒れ狂う天の川へ身を投げた。 #twnovel

2016-02-20 00:31:33
リュカ @ryuka511

君を誑かすのは実に簡単だった。「世界の全てが、キミの敵になったとしてもキミを守る」そんな言葉を君はいとも簡単に信じた。君の力は世界の脅威だ。君を消せと喚く世界に従い刃を向ける。「僕が世界の敵になるとは言ってない」さぁ、力を解放するんだ。この世界を終わらせる為に。 #twnovel

2016-02-21 00:26:17
リュカ @ryuka511

「ここで間違いないはずなのに」古びた門の前で、地図を見つめ青年は困惑する。古い地図は聖剣の在処を示し、錆びた鍵は遺跡の門を開けるもののはずだ。だが鍵は開かず遺跡は閉ざされたまま。「俺じゃ、駄目みたいだ」志半ばで倒れた友に託された鍵と地図を握りしめ、青年は泣いた。 #twnovel

2016-02-22 00:00:33
リュカ @ryuka511

僕ももうすぐ大人の猫、縄張りを広げなきゃ。扉を抜けまだ見ぬ世界へ。見るもの全てが初めてで大興奮、たまらず僕がここに来た爪痕をあちこちに残してきた。あ、主が帰って来る頃だ。そろそろ戻ろうか。 #222散歩 主がケーブルがどうのって悲鳴上げてるけどどうしたんだろ。 #twnovel

2016-02-22 22:51:29
リュカ @ryuka511

ある刀匠の最後の二振りを、二人の男がそれぞれ手にした。無二の友であった二人だが、一人は主君への忠誠のため、もう一人は国と民のため戦い刃を交える事になる。二つの刀二つの道、そこには信念も正義も越えた刀に生きる男の戦いがあるのみだった。二人の名は、歴史には残らない。 #twnovel

2016-02-23 23:42:27
リュカ @ryuka511

幼馴染のあいつは今や救世の勇者様。昔は俺の背に隠れてばかりで、強くなりたいって言うから俺が手を引いて森を探検した。あいつに神託が下りた日、俺は正直嫉妬した。けど旅立つあいつの顔に何も言えなくなった。守っていた小さな手には、もう手を伸ばしたって、届きやしないんだ。 #twnovel

2016-02-25 00:17:35