- MikanPolarin
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やると言ったらやる
『現金をお受け取りください』 機械のはき出したお札を財布に入れて、ATMコーナーを後にする。 今月の仕送りを下ろしたところだ。 ふと、大学進学前に親に言った言葉を思い出した。 「大学に行ったら、生活費はバイトで稼ぐから」
2016-10-28 23:03:29親がうるさくは言わないのをいいことに、「今は忙しいから」「勉強があるから」と自分に言い訳をしてずるずるとここまで来てしまっている。同級生には、俺より勉強しながらバイトもしている奴だっているのに。 「ふぅ……」
2016-10-28 23:03:59さて。講義は5限で終わったので、今からスーパーに行けばちょうどタイムセールが始まる頃だろうか。 今日の晩ご飯のおかずと、明日の朝ご飯用にいくらか食材を買って帰ろう。明日彼女が現れても大丈夫なように。
2016-10-28 23:04:05「あ、おはよー」 「おはようございます」 物音と焼き魚の匂いに目を覚まして台所に行くと、あさなさんがお味噌汁の味見をしているところだった。 「む~~~…………」 「味付け、うまくいかなかったんですか?」 むくっと頬を膨らませたままあさなさんは、首を振る。
2016-10-28 23:04:17そして、俺の寝間着のすそを摘んで目を合わせてきた。 「敬語っ、やめるって言ったのにー」 「あっ」 昨日の別れ際、言われていたのに忘れていた。 「おはよう……」 「よろしい♪」 にこ~っと笑って、あさなさんが抱きついてきた。 「…………」
2016-10-28 23:04:23朝起きたら、ご飯を作ってくれる女の子が家にいて、朝からぎゅーっと抱きしめてくれる。ここは天国なのか? もう俺は死んでいて、あさなさんは天使の可能性がある。 実際、妖精とか天使の類いだって最初に言ってたし……。 「俺って、死んでない?」
2016-10-28 23:04:43「なんで? 君は毎朝イキイキしてると思うよ?」 「イキイキってそれ、どっちの意味?」 「んふふー……どっちって?」 俺の耳元で突然小声で囁くものだから、がぜんそっちの意味にしか思えなくなってくる。
2016-10-28 23:04:51桃と石けんを混ぜたような甘い匂い、そしてあさなさんから伝わってくる身体の温かさ。ここが死後の世界でも全然いいや。 そっと細身の身体を抱き返したところで、鍋が噴きこぼれそうになっているのが目に入る。 「あさなさん、火止めないと」 「わー! ごめん!」
2016-10-28 23:05:07俺から離れたあさなさんが、慌ててコンロのスイッチを押して火を止めた。 「セーフっ! もう少しで頑固な汚れになっちゃうところだった」 「もし汚したら……汚れがとれるまで舐めて掃除してもらうから」 それは冗談のつもりだったのだけど、
2016-10-28 23:05:13「えー! お鍋やコンロなんか舐めても面白くないよー。それより、わたしは君のを舐めたい」 まるでアイドルのCDのジャケット写真のようにキメ顔でウィンクされた。 「もう……すぐそういう話に持っていく」 「と言いつつ、ちょっとドキッとしたね? したね?」
2016-10-28 23:05:20否定できないのが悔しい。現に、昨日舐めてもらったことを思い出して、少し反応しかけている。 「むむっ、これは事件の香り!」 「事件って?」 「ほら、ここに凶器があるでしょ? えっち警察だ! 着ているものを脱げー!」
2016-10-28 23:05:26俺の股間に手をあてて、えっち警察と化したあさなさんが詰め寄ってくる。 「えん罪だ! 脱がして罪をねつ造する気だ!」 「……朝搾り、しないの?」 「ちょ、いきなり素にならないで」 「君、朝ご飯よりも先に抜き抜きしてほしいって思ってるよね?」
2016-10-28 23:05:33「お、思ってませんよ……」 「敬語」 「うぅっ……思ってないよ」 反射的に否定してしまうのは、認めるのが恥ずかしかったからだろうか。 「それじゃあ、なんで硬くなってるのかなー?」
2016-10-28 23:05:42もぞもぞと寝間着の上から、その部分がまさぐられる。 口ではどう言ったところで、そこはどうしようもなく、反応してしまっていた。 「……身体は正直なんで」 まさに、口ではそう言ってても身体は正直。そういう状態だった。 「お口も正直なほうが、わたしは好き」
2016-10-28 23:05:59ずいっ、とあさなさんが胸にもたれかかってくる。手は、あそこにあてたまま。 「ほら、聞こえる。どくんどくんって、君の音が聞こえる」 「……っ」 「えっちなことしたくて、ドキドキしてる」 「う……」
2016-10-28 23:06:07「君の声で聞かせて。わたしに、気持ちいいことしてほしいって。搾られたいって」 「あさなさんに……気持ちよく朝搾りされたい……」
2016-10-28 23:06:32降参するしかなかった。もとより、断る理由もないのに反射的に否定した俺がバカだった。くだらない男のプライドなんて、火山に指輪と小人と一緒に投げ捨ててしまえ。 「んふふー♪」
2016-10-28 23:06:39にへへ、と心の底から楽しそうに笑う。 「下、脱がしちゃうね」 「うん……」 どくどくどくと、股間に血が集中していく。あさなさんの手で、気持ちよくされることを身体が期待している。
2016-10-28 23:06:48「……しょっ、と」 大きくなったそこに引っかかりながらも、下半身の寝間着がずり下ろされた。 「あはは、今日はまた一段と大きいなー」 天を突くようにそそり立つあそこを見て、あさなさんは嬉しそうにしている。 「今日もいっぱい、搾ってあげるからね」
2016-10-28 23:07:08言って、俺のそこにしなやかな指を絡ませた。 「キス、しよっか」 大事なところを握ったまま、あさなさんが俺を見つめる。その顔がどんどん近づいてきて―― 「ちゅっ」 湿り気を帯びた唇が重なった。空いている方のあさなさんの手が、俺の首に回され、もっと、とねだるように力が入る。
2016-10-28 23:07:19「ちゅっ、んっ、ちゅちゅっ」 触れて互いの感触を確かめて、1回離れてもう一度触れ合う。優しい接触は、脳を麻痺させる。唇と唇がくっつくだけ。なのに、見える世界がパステルカラーのフィルターを通したかのように淡く見える。 「はぁ、んっ、ちゅ、ちゅむむ……」
2016-10-28 23:07:28