しありえ

はち公。 @funkastic_8er

26 気づいたら･･･ 「あ･･･」 思わず平手打ちしてて 『っ痛･･･』 痛みで顔を歪めた信ちゃんに すぐにでも詫びたいのに 「悪いのは･･･信ちゃんやん！ なんも話してくれんと･･･ 急にこんな大事な事･･･！！！」 思いとは裏腹に 彼を責めた #しありえ

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27 これぐらいの悪態をついても いつもの信ちゃんなら ピシャッと叱りつけて それから･･･許してくれるのに ･･･その日の信ちゃんは 赤くなった頬を擦りながら 私を･･･睨みつけた 『そんなんゆーなら･･･お前だって 俺には何にも言わんかったやんか』 #しありえ

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28 「え･･･」 『相談ってなんやねん 毎日毎日、彼女迎えに行ったら 他の男と仲良さそーに喋ってて こっちは気ー狂いそうやったのに』 あ 『俺には話せんくて すばるに話す相談ってなんなん？』 あ、あ 『人の事どーこーゆー前に 自分のした事省みぃよ？』 #しありえ

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29 これ ほんとに 怒ってる 『もう、限界。 こんなん、もう辞めよ？ 俺はお前がどんなに止めても ここ、出てくから それが許されへんゆーなら なんでも話せる すばるんとこでも行けや。』 やだ それ、やだ そう言いたいのに 金縛りみたいに動けなくて #しありえ

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30 『ほな。さいなら』 私を残して 背中を向けて 遠ざかっていく信ちゃんを 見つめて 泣くしかできなかった ･･･そうか 自分ばかり苦しいと思ってたけど 「信ちゃんも･･･苦しかったんや」 そんな事を こんな段階で気づく私は 「アホやんか･･･」 #しありえ

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31 ────その日を境に 信ちゃんは 朝迎えに来てくれなくなって 私は気まずくて 乗る電車を1本早めた 部活が終わっても 迎えに来てくれなくなって 私は･･･待つのをやめた そうやって 私達は･･･終わった #しありえ

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32 信ちゃんを失って迎えた冬は 今までで一番寒く感じた 《大丈夫か？りえ？》 すばるは優しくしてくれたけど 私が欲しいのはそれじゃない その事はよく分かっていて 《俺･･･お前の事が･･･》 「ごめん、すばる」 すばるを 受けとめる事もできなかった #しありえ

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33 ･･･そんなこんなで 受験にも追われ 気づくと･･･ 3月を迎えていた 「卒業･･･かぁ」 当日になっても なんか実感なくて 日々に信ちゃんがいない それ以上に 失うものなんか 何も無いように思えた #しありえ

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34 卒業式を終えて チラと中庭に視線を落とすと 「あ･･･信ちゃん」 サッカー部の冬の大会にも貢献した 彼の周りには 男女問わず人が群がっていて 《人気者やなぁw》 気づいたら隣にいたすばるが その光景を見て笑った 「ほんまやねぇw」 #しありえ

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35 その後おとずれた 沈黙に耐えきれず 「すばる･･･なんか色々ごめんね」 思わず謝った 《何がw》 「いっぱい優しくしてくれたのに 気持ちに･･･応えられなくて」 そしたら すばる、ぶって笑って 《調子にのんなアホw もう、なーんも思ってへんよw》 #しありえ

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36 私の鼻を 潰すみたいに摘む 「いったぁ！！」 《ぶはっは！！》 「もぉ！！」 思わず笑うその空気は 少し前みたい 《安心せぇ。俺は友達やw》 「うん･･･ありがと」 その一言に 酷く救われた 「さ、帰ろーかな」 そう言って歩き出すと #しありえ

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37 《あ、せや。友達のりえちゃんに １個ええ事教えたろか》 「ん？」 《ひなのこと。》 「え･･･」 《あいつ、明日引っ越すらしいで》 ドキッ･･･ 「は、早いんやね」 《新しい環境に 慣れるためやってよ アイツらしいわwww》 「確かにwww」 #しありえ

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38 そうか 明日で 学校ですれ違う事も この街で偶然見かける事も それすら無くなるんだ それが 卒業するって事なんだ 「きっつーw」 堪らず苦笑いする私に すばるは優しく笑って 《あほ。 素直になるなら･･･今やで？》 なんて #しありえ

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39 素直になる？ 「いまさら？」 何から素直になればいい？ あの時頬を叩いた事 謝ればいい？ 何も相談しなかった事 謝ればいい？ 《アホやなぁ。 今でも好きや。 それでええやんかw》 今でも･･･好き 好き だけど 「離れるんだよ？」 #しありえ

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40 《せやけどw お前にはひなしか 合わんのちゃうか？ そんで･･･ひなも･･･》 「そんなわけないよw」 《言い切るなぁw》 「だって、見てみ？」 私は眼下の信ちゃんを指さした 「第二ボタン、無くなってる」 《それが？》 #しありえ

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41 「昔約束してん 信ちゃんの第二ボタンは 全部うちにちょーだいって。 小学校も、中学校も･･･もらった でも、今の信ちゃんには もう、第二ボタンないもん」 《それは･･･》 「私との約束なんか もう忘れたんよw 私がどんなに好きでも･･･意味無い」 #しありえ

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42 言ってて 悲しくなってきた 「じゃあね！すばる！」 私はそう言って すばるの前から逃げ出した （この恋には意味が無い） そう言い聞かせた （きっとそのうち もっと好きな人が現れる） そう言い聞かせた ･･･なのに （なんで） #しありえ

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43 何をしてても どこに居ても そこには信ちゃんとの思い出があって 「っ痛ぁ！」 ぼーっと歩いててぶつかった 家の柱には 信ちゃんと背くらべした跡があったり 「･･･ここも」 階段には 8段目から飛び降りるのに失敗して 泣いてる信ちゃんがいた #しありえ

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44 自分の部屋にすら 『りえ･･･あんな？ 幼なじみ辞めて 俺を、彼氏にせーへんか？』 そう告白してくれた 思い出が詰まってる 「くっそ」 泣きたくて突っ伏したベッドには 『りえ･･･痛ないか？』 初めての行為の後 心配そうに抱きしめてくれた彼がいた #しありえ

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45 「意味無いんだって！こんな感情！」 そう思いたいのに 涙が溢れてきて （この感情を何とかして） そう 身体が叫んでた 「何とかしてって･･･ こっちの台詞だよ･･･」 泣いて泣いて 泣き疲れて 気づくと私は そのまま眠っていた･･･ #しありえ

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46 気づくと 夜は明けていた 「う･･･」 泣きまくったせいか 目が腫れぼったい 「おはよぉ･･･」 喉が渇いてリビングに下りたら ［あぁ、りえ。これ、信五君から］ 何食わぬ顔で お母さんが 小さな封筒を私にくれた 「へ？信ちゃん？来たの？」 #しありえ

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47 ［来たわよ？引越し前に挨拶って あんた呼んだのに全然起きないから それだけ渡しといてってよ］ なにそれ 「起こしてよ！！！」 声を荒らげつつ 慌てて封筒を開ける ･･･するとそこには 「･･･あ」 小さな 学ランのボタン それと、走り書き #しありえ

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48 【約束のもんや 要らんかったら、捨てぇ】 その一言で 確信に変わる 「第二･･･ボタンやんか」 信ちゃんは 忘れてなんかなかった 「そんなん･･･ゆーてよ」 また この繰り返し 「そっか、私がなんも言わんから 信ちゃんもなんも言えんなら･･･」 #しありえ

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49 そうだ 似た者同士の私達だから 「それなら･･･私が言えばいい」 私は ボタンとメモを握りしめて ［りえ！？どこ行くん！？］ 家を飛び出し 駅に向かった （信ちゃん！信ちゃん！） 名前を何度も呼んだ （電車！すぐ乗んな！） そう願った #しありえ

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50 慌てて履いてきたサンダルが 今にも脱げそうで うまく走れないけど 「っしゃ･･･着いた」 何とか着いた駅の前 呼吸を整える間もなく 改札に向かった （信ちゃん･･･） ホームを見回したら 一番奥のホームに 信ちゃんが見えた 「信ちゃん！！！」 #しありえ