Side Story 5 伊58は仕事を選べない

脳内妄想艦これSS 独自設定注意 詳細は此方を参照http://www65.atwiki.jp/team-sousaku/pages/18.html
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

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2016-11-13 22:04:07
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__ どうあがいても ブラック企業 __

2016-11-13 22:04:27
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__ Side Story 5 伊58は仕事を選べない __

2016-11-13 22:04:50
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS5-1「ふわ~あぁ」 伊58の向かいの席で伊19が大きく伸びをする。 これにより、羽織ったパーカーの下の胸が否応なしに伊58に主張を行ってくる。最近幾度となく見せつけられている光景…最初は少しイラッとしたが、既に何とも思わない。 「退屈なのね」 彼女達には今、仕事が無い。

2016-11-13 22:05:53
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SS5-2 別に『艦娘』という職を失った訳では無い。(そもそも職なのか?) …出撃命令が来ないのだ。 これまでは年中無休で出ていた出撃指示は、もうかれこれ2週間途絶えている。 大規模作戦前の節制でもなく、出撃自体が出来ない訳でも無い。 ただただ、伊58達のチームに任務が来ない。

2016-11-13 22:08:37
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SS5-3「むぅう、確かに前は休みたい休みたいと言ってたけど、こうも働いていないとタダ飯食いをしているような気がしてしまうから不思議でち…」 伊58は、複雑な気分でスプーンに乗せた昼食のカレーを見つめる。 「(やっぱりあの任務の後からどうもおかしいでち)」

2016-11-13 22:12:20
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SS5-4 心当たりはある。2週間前の最後の任務だ。 出撃場所はいつもと同じオリョール海だったが、そこで彼女達は明らかに異質な存在と交戦し、居合わせた艦隊にその事について口止めまでされた。 伊58達はその艦隊の指示通り任務中の出来事は一切報告していない。 4人全員がそれを守った。

2016-11-13 22:13:58
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SS5-5 しかしその直後から、どうもおかしな事が起き始めた。 ゴーヤ達の所属する佐伯の鎮守府の提督が妙におどおどとした様子を見せるようになり、伊26はあれ以来うわの空になっている姿をよく見かけるようになった。そして何より、あれ程出撃頻度の多かった伊58のチームが2週間出撃0だ。

2016-11-13 22:17:59
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SS5-6「(ゴーヤ達が見たアレは、見ちゃいけないようなヤバいものだったんじゃないでちか…?)」 カレーをいち早くかき込み、伊58は食器を手に席を立つ。 「ふぇっ?ゴーヤ、今日は食べるの早いのね」 「ゴーヤはちょっと情報を集めてくるから…イクは先に部屋に戻っててほしいでち」

2016-11-13 22:20:31
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SS5-7「ふぁいふぁーい、了解なのねー」 口いっぱいにカレーを頬張り、伊19が伊58の背中に向かってプリン用のティースプーンを振る。…行儀が悪いが、つっこむ気は起きない。今、頭のメモリは余計な方向に回したくは無かった。 「(でも、どうしたら良いやら…見当がつかないでち)」

2016-11-13 22:23:13
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SS5-8 食器を片付けながら考えた末に、彼女はまず過去の分も含めた掲示物や新聞、雑誌などの紙媒体からチェックしてみる事にした。迂闊に人に聞けないのであれば、この辺りから入るのが妥当だろう。 あれだけ巨大な怪物なのだ、何かしらの記事があってもおかしくはない。 …と思ったのだが…

2016-11-13 22:26:07
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SS5-9「(うーん、ハズレでちか…)」 一月程前まで遡れるだけ遡ってみたが、それらしい物は見つからない。 「(となると、行われた任務の履歴とか?ううん…提督や大淀さんに聞くのはちょっとマズい気がするでち…)」 伊58が悩んでいると、ふと窓の外、掲示板の前が騒がしい事に気が付く。

2016-11-13 22:28:44
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SS5-10「うぁっ」 読み物に集中していて気付かなかったが、もの凄い人だかり、いや艦娘だかり?が出来ている。しかも、何やら皆して怪訝な顔やら、驚いた顔だ。 「あ!でっち!大変ですって!」 何事かと部屋を出た伊58に気付き、呂500がぱたぱたと走りよって来た。 「てーとくが!」

2016-11-13 22:31:59
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SS5-11『提督の異動』…突然伝えられたこの情報に、鎮守府は右へ左への大騒ぎとなった。所属の艦娘からすれば、事実上自分達が後任の提督に丸ごと引き継がれる事になるのだから当然である。 執務室には人も艦娘もひっきりなしに出入りし、あれよあれよという間に時間が過ぎていく。

2016-11-13 22:34:04
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SS5-12 そして、遂に正式な『交代』の行われるその日。 「おーおー、今日も窓から人の流れを見てると面白いのね」 伊19が眼下に行き交う人の波を眺め、呑気な台詞を口にする。 あまりに急な異動の話に、鎮守府内では出所も分からぬ噂も飛び交った。 真相は結局の所分からない。

2016-11-13 22:39:32
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SS5-13「そろそろ時間でち。ほら、イクもろーも新入りも、準備するでちよ」 伊58の号令に、伊19がきょとんとした顔をする。 「え?」 「全く…『え?』じゃないでち。今日は新任の提督がこの後挨拶する事になっているから…ほら、新入りも!いつまでぼーっとしているでち!」

2016-11-13 22:44:48
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SS5-14「ふぇっ!?あっ、えーと、ごめんなさい!」 伊58に肩を叩かれ、伊26も漸く我にかえって準備を始める。 「ねー、でっち…最近ニム、ちょっと変ですって」 「うん…分かってるでち。そっちも何とかしないと…」 あれ以降、鎮守府内の仕事に振り回されて、ほぼ進展が無い。

2016-11-13 22:50:54
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SS5-15「(あれが新しい提督?)」「(何だか怖そうな人…)」「(前の提督よりマシなんじゃない?)」集まった艦娘達の列から、ひそひそと声が漏れ聞こえてくる。 演壇の脇に控えている厳格な雰囲気を纏った初老の男性…その人が、次の提督なのだろう。 「(もっと若いイメージだったでち)」

2016-11-13 22:57:12
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SS5-16「(失礼します。伊58様、ですね?)」 そんな事を頭の中で考えていると、列の後方に並んでいた伊58に海兵の一人と思われる男が小声で話しかけてきた。 「(ん…何でちか?)」 「(提督がお呼びです。前任ではなく、彼方の鋳延提督が。お部屋を指定されていますので、此方へ…)」

2016-11-13 23:02:29
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SS5-17「(新任の提督が?ゴーヤに?)」 彼がこれから着任演説を始めようというこのタイミングで呼び出されるというのも変な話だ。 訝しがりながらも伊58は海兵の後に従い、着任式の列を抜け出した。 そのまま案内に従って歩き…着いたのは、敷地内でも一際人の出入りの少ない『物置』。

2016-11-13 23:07:24
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SS5-18「…ホントーにこんな部屋で合ってるんでちか…?」 「…はい、間違いございません。暫くここでお待ちを。提督をお連れします」 海兵はそう言い残すと、伊58を残し部屋から出て行った。 「…はぁ」 窓から差し込む光の中に浮かび上がるホコリの量が、この部屋の汚れ加減を物語る。

2016-11-13 23:12:04
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SS5-19「(変な話じゃ…ない…よね?)」 言われるままに付いてきたものの、今更になって不安になる。こんな場所ではもしもの時に周りに助けも求められない。もし出て行くのなら今の内か… 「失礼します」 「ひゃい!?」 そう思った時には、既に先程の海兵が戻って来ていたのだった。

2016-11-13 23:16:04
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SS5-20「提督をお連れしました。それでは私はこれで…」 海兵が下がり、代わりに大柄な男が狭い物置に入って来る。先程式典の演壇脇に居た男だ。名前は… 「キミが伊58君か」 「…はい」 男は海兵が部屋から出ると、部屋の入り口を後手に『施錠』する。 「『鋳延 碌陽』だ、宜しく頼む」

2016-11-13 23:21:46