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attakamosirenai
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そんなことは知っていた。分かっていた、という表現のほうが正しいだろうか。だが、やはり無力だ。自分の日常を守りたいと思っていたが、それを叶えられるほどの強さなどなかった。いや、向こうが好きなときに好きなだけ自由に好き放題できるのだから、守るなど不可能だったのかもしれない。
2016-11-22 23:56:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
叶わないことを、きっとどうにかなるはず、どうにかならなくてもどうにかしなければ、と考え続けてきた。だが、そろそろ認めざるを得まい。自分では、自分の日常は守れない。ああ、なんと非力な青少年。ベタな漫画であれば巻き返すシーンが続くような、そんな陳腐なワンシーン――
2016-11-23 00:00:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「前を見なさい。目を逸らさずにまっすぐ見据えなさい、そして息を吸いなさい! 現実から目を逸らしてはいけません。主の無力を認めなさい! そして――それでもなお、立て!」
2016-11-23 00:06:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「その手は飾りか? その足は、その目は、その頭は! 手前の弓は、弦を切るために与えたわけではない! 背筋を伸ばせ! 前を見ろ、目を逸らすな、受け止めろ! さあ答えよ!――貴公が守ると決めたものは、なんなのだ!」
2016-11-23 00:12:22![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
背筋を伸ばした。瓦礫が散らばる足元は不安定で、気を配らなければふらつくだろう。 手のひらをひとたび握った。手の中になにかがあるわけではない。なにも見えないが、握りしめた手は掴んでいた。 足で地を踏みしめた。地に足がつく感覚は、先程までと比べて過ごしやすさがまるで違う。
2016-11-23 00:21:25![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
前をしっかりと見据える。決して平穏な光景ではない。毎日のように通う学び舎の瓦礫が地に落ち、空気の中に粉塵が舞い散っている。 そして、大きく息を吸い込んだ。
2016-11-23 00:23:32![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「――ありがとなアーチャー。お陰で目が覚めた」 「礼など不要。もとより手前が力を貸したのは、前を見続ける主です」 「……それも、そういえばそうだったな。やべー、今のおれホントかっこわるいわ」
2016-11-23 00:26:05![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
死んだと思った。守るべき日常、自分の一部である日常を守れなかったという事実。そんな自分など、死んだのとさほど変わりないだろう、と。……だが、そうではない。違うのだ。違ったのだ。
2016-11-23 00:29:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
守れなかったのは力不足だからだ。そんなことははじめから分かっていたではないか。戦いの中で痛感したのだ。自分ではこの戦争を勝ち抜けない、と。分かっていたのにいざ目にして、気が動転してしまったのがだめだった。その瞬間はまるで世界が終わったようにすら思えて、頭が働かなくなってしまった。
2016-11-23 00:32:43![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
自分の弱さはこれで明確に形を取って現実になった。だが、それが終わりではないと――それですべてが終わったわけではないと、それこそはじめから分かっていたではないか!
2016-11-23 00:34:43![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
気づいてみれば、それまでが馬鹿らしくなるようなくだらないことだった。無力で、戦争の勝ち目もなく、それでもこの弓を取ったあの日を思い出し、今まさに戻ってきた。ならばこそ、今から取るべき行動も、あの日から変わりはしない。
2016-11-23 00:40:28![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
完璧に守るなんて不可能だ。そんなことができる戦闘力なんてない。けれどまだなくなってはいない。自分の日常はまだここで息をしている。息をしているなら――死んではいない!
2016-11-23 00:43:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ここは、おれの居場所だ」 矢を番え、弓を引き絞る。キリキリと軋む音を響かせて構えたのち、甲高く風を切って放たれた一矢は瞬間、校舎からもうもうと煙を立ち上らせている空に勢いよく吸い込まれ――刹那。周辺で破壊活動を行う異形のことごとくに、速度をそのままに深く突き刺さっていた。
2016-11-23 00:59:49![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
雨のように無作為にではなく、間違いなくその場にいる敵を狙い撃つような軌道。一撃で仕留められるほどの致命的な威力こそないものの、各々に深く食い込んだそれは威嚇射撃や士気低下といった確かな影響を及ぼしていた。それらを一瞥し、もう一度矢を構える。
2016-11-23 01:10:16![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
>長距離射撃よりは短中距離の乱戦に強い。軍師としての才覚からかキャスター適性も持ち合わせており、立ち回りと速射で戦場を支配する。だがその本領は防衛戦。守るものがあるなら、絶対に負けない。 twitter.com/michiRu183/sta…
2016-11-23 01:20:26![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
カシハラさん(@yotaiztl) 中の人/敏腕生徒会長 クラスカード/アーチャー 長距離射撃よりは短中距離の乱戦に強い。軍師としての才覚からかキャスター適性も持ち合わせており、立ち回りと速射で戦場を支配する。だがその本領は防衛戦。守るものがあるなら、絶対に負けない。
2016-11-20 19:32:43