ツイッター小説 お気に入りセレクト 2011/02/25

Gabb-- @itisnot

彼はとても奇妙な顔をしてこの部屋の一部、宙を見ている。「ここだけ空気が吸えないんだ」言って口を突き出す。頬が内側に引っ込むが、なるほど耳を近づけてみても風の音がしない。触れてみると必要以上に無風の変な違和感。形は球。大きさはどうやら徐々に増していっているようだ。 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 野球場の外壁に書かれた断片的な小説を私達は読む。その書き手が死んでしまったことを私達は知っている。けれどいつの間にか新しい文字が記されている。小さくてみじめな、死人そのものみたいな文字列を読み終えると私達は壁から目を逸らす。さっさと死ねよ、と恋人が呟く。

layback @laybacks

人を保存するには干すのが一番。あーだめだめ、そこは硬いから。目を刺すんだよ。そう。後頭部に向けてね。少年は鉄の棒を男の右目に突き刺す。まだ生きていたのか男の体は急にぶるぶると震え出す。ゼリー状の眼球が地面に零れ落ちる。丘の上では完成した目刺しが春風に揺れている。 #twnovel

ひのもと　和義 @khinoxyz

耳が痒かったので、耳掻きで耳掃除をする。ダイヤモンドが出て来た！宝石商へ持って行くと、本物だと言う！それから毎日、耳掻きでダイヤモンドを掘っていた。大金持ちになる・・・最近、記憶が曖昧になってきた！でも、記憶が曖昧なぐらいかまわない！人生とは曖昧なもの #twnovel

without mercy @without_mercy

嘘か本当か適当なことしか言えない私は、あなたに嘘のような本当の気持ちを伝えたけれど、あなたの返事が嘘か本当かも自信が持てない私だから、このつないでいる手の温もりさえ疑ってしまうと告げるのだけれど、それでも良いとあなたが言うから私はもっと曖昧な世界へ堕ちていく。 #twnovel

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 薄暗い川縁を歩いていると、ふと、自分の顔を思い出せないことに気づき、鏡を求めるが持っていないし、どこにもない。それならば、と川を覗き込んではみるが、水面には何十人もの虚ろな顔が浮かび上がるので、どれが自分か区別がつかない。あるいは、すべてが自分なのかもしれない。

とおる6th @windcreator

月が薄くなっていく。漆黒の空は次第に青く。眠っていた街が、少しずつ音を取り戻していく。新聞配達の次に早く起きた職人は、炉に火を入れ、固いパンをかじりながら工房を行ったり来たり。無意識が、朝のリズムを作る。外、風と空気の味を確かめ、今日の材料を選ぶ。一日が始まる。 #twnovel

うみのえび @beetbood

#twnovel「宇宙を手に入れろ！」「まずは何から用意する？」「永遠を手に入れよう！　それが一番重要だ！」「乗る場所ならなんでもいい、それは大した問題じゃない」小さな熊とピエロが話している中、大きい犬は首をひねります。「――きみたちはそう言うけれど、永遠って一体なんなのさ？」

夢名 七志 @mumei7c

テーブルの上には美味そうな肉が置かれた。ご丁寧に鉄板に乗せられて油の焼ける匂いが食欲をそそる。手づかみでは熱いだろう。騎士たる者は勇気を見せろの意味なのか。躊躇する頭に師の声が響く「ルーク、フォークを使え」私は火傷する事も無く満足を得た。『ステーキウォーズより』 #twnovel

かなりひこくま @kanarihikokuma

#twnovel 朝、自分に起された。びっくりしたけど職場には行かない訳にはいかなし僕は着替えて駅へと向かった。そうしたら、いるわ、いるわ、町中、僕だらけ。ドッペル・マイ・タウンだ！こうした状況では出社しても仕方ないんじゃないか？と思えた。とりえず部屋に帰ってお茶でも飲もう。

@K_Ichida

#twnovel あらゆる世界は無限にパラレルに広がっている。自分がどこにいるか考えた時点で自分のいる世界が決まる。自省しなければどこの世界にも属さない妖精でいられる。うつろな淡い夢のような存在。だが、妖精であり続けるのは難しい。妖精でいたいと思った瞬間、世界が固定される。

すわぞ @suwazo

#twnovel 「ねぇ白ウサギ、広場にいっぱい落ちてるあの赤黒い小さなものは何？」「あれは肉だよアリス」「厭な匂いがするわ」「仕方ない。シンデレラは滅多にいないから。あれはシンデレラになりきれない、でも硝子の靴が履きたい、たくさんの女の子たちが削り落としていった踵の肉だよ」