稲川淳二のつぶやき怪談 2016年11月24日投稿分

明治の頃のいい話風な怖い話
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稲川淳二 @Junji_Inagawa

俥屋さんが、お店に顔を出して、 「お待たせしましたぁ」

2016-11-24 22:21:09
稲川淳二 @Junji_Inagawa

俥屋さんとは、今の運転手さんですね。 それで飲み屋に金を払って、2人で俥に乗ったんです。

2016-11-24 22:21:37
稲川淳二 @Junji_Inagawa

俥といっても、当時の俥は人力車ですよ。

2016-11-24 22:21:56
稲川淳二 @Junji_Inagawa

人が引いて走る、リヤカーの、 おおきいようなヤツですよね。 上に黒い幌なんかあるやつ。

2016-11-24 22:22:30
稲川淳二 @Junji_Inagawa

たまに、古い街並みが売りものの街角や、 観光地なんかで見かける、人力車ですよ。

2016-11-24 22:23:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

観光客を乗せたり、記念写真なんかに、 使われていますよね。

2016-11-24 22:23:28
稲川淳二 @Junji_Inagawa

その人力車に、お父さんと少年が乗ったんです。

2016-11-24 22:23:56
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「行き先はね、○○だよ」って告げると、 俥屋さんは、 「へ―いっ、わかりやしたぁ」

2016-11-24 22:24:30
稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、空からは、 雨がサ―ッ、と降っているから、 乗っている人の上に、黒い幌を被せたわけですよ。

2016-11-24 22:25:02
稲川淳二 @Junji_Inagawa

黒い幌は、 今のオープンカーの、折り畳みの屋根と、 同じような形なんです。

2016-11-24 22:25:33
稲川淳二 @Junji_Inagawa

背中の方から頭の上まで、 黒い幌を被せて雨を防ぐわけです。

2016-11-24 22:25:59
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで俥屋さんは、人力車の轅を持って、 「あらよっ!」 かけ声と共に、タッ、タッ、タッ、 と走りだしたんです。

2016-11-24 22:26:38
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのうちに、 ドンドン周りが暗くなってきた。 雨もだんだん強くなる。

2016-11-24 22:27:05
稲川淳二 @Junji_Inagawa

乗ってる方は、 幌があるから濡れないし、気持ちがいいんです。

2016-11-24 22:27:31
稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも俥屋さんが、雨に濡れながら、 懸命に走っているのを見て、

2016-11-24 22:27:56
稲川淳二 @Junji_Inagawa

子供ながらに、 (あ―あ、俥屋さんて、雨の中、大変だなぁ)

2016-11-24 22:28:20
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(こんな雨の中、人を乗っけて、 一生懸命走ってるなんて、大変なしょうばいだなぁ) と思ったんです。

2016-11-24 22:28:59
稲川淳二 @Junji_Inagawa

前には小さい提灯をつけて、 明かりにしながら走っている。

2016-11-24 22:29:27
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが今で言うと、 車のライトの役目をして、足下を照らしているんです。

2016-11-24 22:29:58
稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、提灯の中に入れているのが、 ロウソクの炎だから、薄暗く照らす程度ですよ。

2016-11-24 22:30:25
稲川淳二 @Junji_Inagawa

その明かりを頼りに、 タッ、タッ、タッ、 と夜道を駆けて行くんです。

2016-11-24 22:30:55
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのうちに俥屋さんの、 タッ、タッ、タッ、 と聞こえている足音と混じって、

2016-11-24 22:31:37
稲川淳二 @Junji_Inagawa

後ろから、 カッ、コッ、カッ、コッ、 と細かな足音がしだしたんです。

2016-11-24 22:31:58
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(あれっ、なんだろ?) と考えたんです。子供もお父さんも、

2016-11-24 22:32:50
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