診断ゲーログ　黄昏町の怪物　終了済み

エコー之助 @dan_okamoti

@tsgrTL 橋を一歩出ると、夜は街の姿をしていた。雑踏の音が突然耳に入ってくる。それまでシンとしていた耳が痛かった。 じわり、じわりと、この街のことを思い出す。周りを見渡すと、沢山の人が行き交い、沢山の人が様々な表情で、どこかへ向かい、立ち止まり、話していた。いつもと同じだ。

エコー之助 @dan_okamoti

@tsgrTL ふと、手を見る。そこには、ずっと前になくしたはずの自分の手があった。尾に触れようとした手が空を切る。顔や頭をさすっても、獣の耳も、ふたつ目の口も無い。 振り返ると、あの奇妙な世界への橋は消えて、雑踏が続いている。 あの場所の景色や人が、早送りで思い出された。

エコー之助 @dan_okamoti

@tsgrTL 不思議と、懐かしい。だが、もう二度と行きたくはないなのだ。 さあ、帰ろう。 駅へ向かい、改札を定期券で通過する。電車に揺られながら町の景色を眺め、明日の仕事のことを考えていた。窓ガラスに映る自分の顔は、見慣れているはずなのに妙に落ち着かない。どうしたっていうんだ。

エコー之助 @dan_okamoti

@tsgrTL 腕時計を見ると、7月18日22時50分。少し遅くなりすぎた。目を閉じて、うとうとする。そして、ふと思い出した。自分がさっきまで化け物の姿をしていたことを。 そうだ、忘れそうになっている。自分の罪も苦しみも手放して、何もなかったように生きていこうとしている。

エコー之助 @dan_okamoti

@tsgrTL このまま眠ってしまえば、きっと忘れてしまう。覚えていたとしても夢だったと思うのだろう。抗い難く開かなくなったまぶたに手をやりながら、意識は泥のように沈み込む。 「終点です、起きてください、この電車はこの後回送となります」駅員に起こされてしかたなく起きる。

エコー之助 @dan_okamoti

@tsgrTL 「せっかく戻ってこられたんだから、今度は死なないように気をつけてくださいね」 妙なことを言われた。振り返ると駅員は他の客を起こしていた。さっきのは駅員じゃなかったのか。なら、誰が？ 突然、頭に少女の顔が浮かび、理由は分からないが、彼女の言葉のように思えた。

エコー之助 @dan_okamoti

@tsgrTL それからずっと後に、頭に浮かんだ少女を見つけたが、運命も何もなく、ただ日々を必死に、堅実に過ごしている。 時折見る夢に、妙な懐かしさを覚えながらも。 おわり。