フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #1 「大風穴」

1話 「英雄たちの遺産」まとめ http://togetter.com/li/1020459 2話「バケグモ大進撃」まとめ http://togetter.com/li/1024051 登場人物紹介: 続きを読む
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「フォビドゥンフォレスト妖怪図鑑・1」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1056785

2016-12-07 01:23:16
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「フォビドゥンフォレスト・主要用語集」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1057440

2016-12-09 00:37:24
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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト登場人物紹介(主要人物1)」 togetter.com/li/1020993

2016-12-15 00:38:52
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内陸の山村、風科(かざしな)。北側には禁忌の森と呼ばれる広大な森がある。その森の奥の奥、最奥部。極彩色に輝く木々が虹色の葉を広げ、絶えず流動する地面を流れていく。中には流されまいとする様に、深く根を張ったり、根をヤスデの脚めいて蠢かせてその場に留まるモノもある。 1

2016-12-15 23:32:38
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空には5枚の翼を持つ双頭の鳥や列車の様な長さの蠕虫が舞い、複数の太陽が分裂と結合を繰り返す。空の色は青と赤、黒と白とが常に入り乱れ、腐水で混ぜ合わせた油絵具を連想させる。激しい空間の捻れが見せるこの悪夢キャンバスを直視すれば、三半規管と色彩感覚が数秒で壊滅的に狂うだろう。 2

2016-12-15 23:38:47
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川だけは美しい清水かと思えば、見る間にヘドロの如く淀み、熱した廃油の様に沸き、再び澄んでいく。魚に似た甲殻類がこの隙に残した卵は淀んだ水の中で孵り、育ち、清水で次世代を残して死ぬ。早ければ一分で世代が巡る。単に命の循環が早いのか時間自体が歪んでいるのかを知る者はいない。 3

2016-12-15 23:44:17
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この異様な風景の中でさえ異彩を放つのは、光る木々が取り囲む漆黒の沼、或いは穴である。風科大風穴。日本中から押しやられ凝縮した邪気の吹き出し口であり、それ自体も邪気で出来ている。文字通り地の底まで続く穴でありながら、固体であり液体であり、気体でさえある。森の歪みの源だ。 4

2016-12-15 23:56:36
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邪気が空間を歪め、その歪みごと絶えず穴の形が変動している為、大きさは確定出来ない。幅が百m程かと思えば、数分後には十kmになるくらいは普通で、森全体の面積を超えることさえ珍しくはない。この収縮に加えて蜃気楼のような幻影を纏い、更に邪気が直接五感を幻惑する。観測は至難の技だ。 5

2016-12-16 00:03:53
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沼の縁からは波飛沫の如くに、数億の妖怪が絶えず発生しては即座に波に飲まれ、或いは周りの妖怪に吸収され消えていく。この目まぐるしい蠱毒を抜け出たモノだけが、個を確立して周囲の森へと離れていくのだ。その更に一部が森の浅い層へと向かい、やがて討伐者達と戦うことになる。 6

2016-12-16 00:10:01
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この日、この狂気の森に挑む者がいた。大風穴から充分に離れた位置で大樹の横で二人、立ったまま軽く寄りかかり休息している。太さと長さが貨物車両3両分ほどのこの大樹は地中に深く根を張って流れる土に抵抗するタイプである。動かない大樹は大抵こちらだ。 7

2016-12-16 00:22:30
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細くて走る木では休めない。岩場などでも固定ポイントはあるが探すのが難しい。必然的に一番安全確実な休息所がこの様な大樹なのだが、人間が近づけば無数の枝や共生妖怪達に襲われる。この二人も数分前に無傷で返り討ちにしたところだ。樹からすれば今は喉元に刃を突きつけられている状態だ。 8

2016-12-16 00:36:05
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「流石に今日はキラッと帰りましょう。もう食料と水がキッカリ一日分を切りました」 金髪の女性が食料袋の中身を相方に見せつける。レトルトの夕食が一回分と軽食が一食、2リットルの水ボトルが一つとあとは菓子が少々だけだった。今から迷わず真っ直ぐ帰れれば、辛うじて保つ程度の量だ。 9

2016-12-16 00:48:57
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彼女の全身はボディスーツの上から機械装甲に包まれ、超自然の森に有っては一際異彩を放つ。特に目を引くのが、男児の頭ほどもある胸だ。その上から纏う装甲は薄手ながら、この胸を更に一回り大きく見せるには充分だった。体の輪郭の出るスーツと併せ、男なら目のやり場に困る状態である。 10

2016-12-16 00:53:48
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だが彼女の相方、藤宮涼平は特にそれを意識することなく平然と、しかし申し訳無さげに答えた。 「そうだな…すまん。だが最後にもう一度だけ挑戦させてくれ」 「本当にシュタンと最後ですよ。私の食料まで分けてあげてるんですから言うことは聞いて貰います」 「本当にすまんな」 11

2016-12-16 01:02:23
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「冗談です。私にとっては食事は嗜好品ですからね」 彼女、ガイア・クレーバーンは人間ではない。ハイインテリジェントゴーレム…表世界の言葉で言えば、人工知能を搭載したアンドロイドである。魔術師世界でも希少な存在である彼女は、風科の外から製作者の博士共々貸与された客分である。 12

2016-12-16 01:05:23
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フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #1 「大風穴」 実況タグ: #禁森実況

2016-12-16 01:07:43
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彼等のいる最奥部は常人はおろか、並の魔術師でも生存が困難な環境である。大風穴や妖怪達に対抗する戦闘力も必要だが、それ以前にこの場にいるだけでも邪気に体が害され死に至る。機械であり高性能フィルターも装備するガイアと、風科で最高の耐魔力を持つ涼平だからこそ侵入できるのだ。 13

2016-12-16 22:58:01
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禁忌の森の邪気は「レベル」という指標で表され、入口付近が常人が定住できるレベル0で、その後、この大風穴に近づくにつれ邪気が濃くなり、耐性のある者が少なくなる。今の風科でこの最奥部・レベル5で活動出来るのは数名、強豪妖怪に対抗出来る戦闘力を併せ持つのは実質彼等2名だけだった。 14

2016-12-16 23:11:09
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「しかし、涼平」 三分の一ほどのチョコ味のレーション(固辞したが無理に渡された)を美味しそうに食べたガイアが問いかける。 「我々の目的はレベル4をスパッと調査するだけだった筈です。レベル5の調査も必要でしょうが、何ゆえ期間をキューンと延長してまで危険を侵すのです?」 15

2016-12-16 23:19:22
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元々日曜昼には帰路に就き、翌朝には帰る予定だったが、今はもう火曜の夕方だ。レベル4で泊まり、数度に渡って大風穴への接近を試みては、穴の収縮と妖怪の群れに阻まれて撤退していた。もっとも最初から、余力を残しつつこれらの障害のデータを取るための突撃ではあったのだが。 16

2016-12-16 23:32:46
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「理由があるのならお話しください。このガイア・クレーバーン、シャキンとお聞きします」 ガイアはドン!と胸を叩く。涼平は視界の端で揺れる二つの塊には目もくれずにガイアの瞳を見つめ返す。暫し考えてから口を開いた。 「実はな、大風穴にこれを投げ込んでデータを取る様に頼まれた」 17

2016-12-16 23:38:52
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涼平はラグビーボール大のカプセルの様な白い金属容器を取り出して見せた。両側は半球状になっており、中心には分割線がある。半球の下部にはLEDランプとダイヤルが見え、それらの下に書かれた文字は、手彫りの跡にマジックペンで塗られている。規格品ではなく、手作りであることが伺われた。 18

2016-12-16 23:46:49
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博士の助手も務めるガイアは、魔術師の道具にも詳しい方では有るのだが、流石にコレでは何の装置であるかは分からない。だが敢えて容器の正体も測定すべきデータが何かについても聞かなかった。 「普通にポイッと投げれば良いのですか?」 「真ん中で分割して、左半分を穴へ放り投げれば良い」 19

2016-12-16 23:56:47