流星☆ハレーション【渡先輩ハピバ2016二次会？会場】お誕生日記念SS

にゃごったー＠流星☆ハレーション公式 @nyagotter

『私の声が、聞こえるのですか』 小さく頷いたあなたは、まっすぐに私のところへやってきました。私が収められている、埃の積もったガラスのショーケースの前へ。[15] #ryusei_hpb

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『私の名はキルリネス。あなたは私の声が聞こえる。つまり、あなたのご先祖様……ということになるでしょう』 「石がしゃべってる？」 『私はアニマ。アニマは死ぬと魔石へと姿を変えるのです』[16] #ryusei_hpb

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「僕のご先祖様は、石なの？」 『ふふ……少しずつ語りましょう。あなたがどんな存在なのか。あなたはなぜ、何のためにこの世に生まれてきたのか』[17] #ryusei_hpb

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あなたは素直にうなずきました。何の疑いもなく、純粋な好奇心から。これから私があなたに、どんな残酷なことを要求するのか知りもしないで。まるで疑いもせず……真っ白で穢すのをためらわれる産毛のような、あなたでした。[18] #ryusei_hpb

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「石は、泣くの？」 『……なんですって？』 「泣き声が聞こえたんだ。だからここに降りてきたんだ。お父様は、だめだって言っていたけど」[19] #ryusei_hpb

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掃除のおばさんが休憩中に、こっそり入ったんだ。そう告白しながら、あなたはばつがわるそうな顔をして、階上の足音を聞き逃さないようにと気を配っていましたね。[20] #ryusei_hpb

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「すごく悲しい泣き声が聞こえたから、心配になったんだ。キルリネスは、泣いていたの」 『泣いていませんよ。私はずっと眠っていたのですから』 「じゃあ、寝言だね」[21] #ryusei_hpb

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部屋の隅に走って行ったあなたは、見つけた小さな木箱を持ち上げて、私のガラスケースの下に置きました。それを足場にすることで、やっと私のアニマストーンを覗き込むことができたのです。[22] #ryusei_hpb

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あなたは、微笑んでいました。顔立ちの整ったあなたが精一杯微笑むと、キリリと吊り上った眉が柔らかく溶けました。 「会いたい、会いたい……。誰かに会いたいって、すすり泣いていたんだよ」[23] #ryusei_hpb

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『……きっと、あなたに会いたかった』 「僕に？」 小首をかしげたあなたは、ショーケースに積もる埃を袖で拭ってくれました。私の見えない涙を、あるいは流した涙の痕を、確認しようとするかのように。[24] #ryusei_hpb

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『果たすべき任務があります。火竜キルリネスの子孫である、あなた自身の命をもって果たさねばならない任務が……』 私の祈りが。彼女の願いが。 『すべては、あなたにかかっているのです』[25] #ryusei_hpb

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長い睫毛をしばたたかせたあなたは、そのまま私の言葉を待ってくれました。 アンネのアニマストーンを探し出し、その命を持ってアンネをこの世に甦らせなさい。[26] #ryusei_hpb

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あなたは任務のために死ぬ。 それが、火竜の子の定めなのです……。[27] #ryusei_hpb

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＊＊＊ 　 あなたは日に日に成長していきました。 そしてまた、あなたは大変賢い子供でした。 いつしか足場の木箱は必要なくなり、代わりに足の高い椅子が置かれましたね。[28] #ryusei_hpb

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あなたはそこに座って、私の収められたショーケースを見下ろしながら、色んなことを教えてくれたものです。 ここが暖かな海辺の町であること。 雪国のように猛烈な吹雪が春まで続くこともなく、藁で囲ってやれば薔薇の花さえ冬を越せるということ。[29] #ryusei_hpb

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そう……私はあなたのおかげで、子孫たちが住まいを移したことを初めて知ったのです。[30] #ryusei_hpb

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あなたはまた、空が好きでしたね。 特に飛行機という乗り物に関しては、何時間でも熱弁をふるってくれることがありました。 飛行機の役割、飛行機の構造、飛行機の活躍……それらを聞くたびに、この地球にも「竜」が生まれつつあるのだと思ったものです。[31] #ryusei_hpb

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機械仕掛けの物言わぬ竜は、さぞや役に立つことでしょう。 主の命を果たすことなく連絡を絶ったり、命の炎尽きることもなく、裏切ることだってしないでしょう……。[32] #ryusei_hpb

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「ねえキルリネス。彗星ってどんなものか知ってる？」 鞄を背負ったまま、息を弾ませて階段を下りてきた１０歳のあなたは、白い肌を紅潮させて私に問いかけました。[33] #ryusei_hpb

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「彗星はね、流れ星と違って、ずーっと夜空を飛んでるんだ。ずっとだよ？　すごいんだ！」 『ええ……汚れた雪玉のようなものです。凍りついた宇宙の塵が、太陽風に煽られて尾を引き、空を渡り続ける。そういうものです』[34] #ryusei_hpb

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「なぁんだ……」 あなたは少しがっかりしたような顔をしました。 もちろん、知らぬ顔をして話を聞いてやることもできたのですが、あなたは喋り出すと止まらないことがよくありましたからね。[35] #ryusei_hpb

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「じゃあ、じゃあ、ハレー彗星って知ってる？　これは知らないでしょ」 『ハレー彗星……』 その名を、再び耳にすることになろうとは。思い出が鈍い痛みとなって、私の魂を揺すぶりました。[36] #ryusei_hpb

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「ハレー彗星はすごく大きくて明るい彗星で、宇宙をグルグルと永遠に旅するんだ。地球にも来るよ。７５年とか、そのくらいの間隔で必ず来るんだよ」 『……覚えています。あの時はとんだ騒ぎになったものでした』[37] #ryusei_hpb

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「ええ～これも知ってるの？　じゃあ、彗星を見たことあるんだね」 僕はまだないけどっ。と、悔しそうに頬を膨らませたあなたが、なんだかおかしくて。私は少しだけ余裕を取り戻すことができました。[38] #ryusei_hpb

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『いいえ。私も彗星を見たことはありません。見そこなってしまいました』 「どうして？」[39] #ryusei_hpb