クリスマスエドエュマ

途中で小説になるのだわ 中途半端なのだわ やっぱり地上で書くとダメなのだわ
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mkbt @mkbt

死者のやることだ、どうせ無駄なことだ、この身も、その行為もすべてうたかたの夢だ。それはわかってる。彼の「うたかたの夢」のために書いてやるのがよいのだろう。だが、それはデュマ自身がやりたくないのだ。死んだ身でも、亡霊の身でも、固執するものは未だにある。これがそれだった。

2016-12-25 01:49:14
mkbt @mkbt

「俺の父になってくれないのか」 「わりいな、慕うのは勝手だ。愛されるのも歓迎してやる。お前を個人として見てやるのも悪くはない。だが、お前を「モンテ・クリスト伯」として見ることはできねえよ」 そう言うと、エドモンは黙った。黙って、拘束を解いた。そして、監獄の夢はおわる。

2016-12-25 01:50:46
mkbt @mkbt

気付けばクリスマスの騒乱が聞こえる。ここは作家どもの部屋か。戻れたのだ。 「なんだ、いたのか」 アンデルセンが話しかける。 「ああ、ちょっと気晴らしに散歩してた」 エドモンのことは言わなかった。 「そうか」アンデルセンは気づいたようだったが、何も言わなかった。それでいい。

2016-12-25 01:52:37
mkbt @mkbt

「エドモン・ダンテス」というサーヴァントは、それ以来カルデアから姿を消した。 アヴェンジャーを名乗る無名の英霊だけがのこされた。 ただ復讐を煽り、助け、人を導く復讐の神。もはや希望せよなどとは叫ばない、復讐鬼。 そうであるという核と名を失った、可能性の復讐鬼。

2016-12-25 01:54:28
mkbt @mkbt

エドモン・ダンテスの名は忘れられた。ただアンデルセンとデュマだけが気づいていた。 同室だったジャンヌ・オルタにあいつの名前知ってるか、と尋ねると首を横に振られた。「アヴェンジャーってクラス名しか知らないわよ。何、確かにフランス人みたいだけど知ってるわけないでしょ」と返された。

2016-12-25 01:57:01
mkbt @mkbt

それでおわりだった。 アヴェンジャーはこちらに近寄ろうともしなかった。近づくとどこかに消える。 ただ、時折視線をかんじる。 振り返ると、黒い影がちらりとみえることがある。 それだけだった。

2016-12-25 01:58:08