ストーム・イナ・ユノミ #2
(あらすじ:ヨグヤカルタでサンズ・オブ・ケオスのニンジャを殺したニンジャスレイヤーの存在を、シャドウトレース・ジツの力で看破した危険な存在あり。その名はアモクウェイブ)
2016-12-28 23:02:35(その後、ニンジャスレイヤーはサンズ・オブ・ケオスのニンジャであるトラップマスターをシュギ・ジキ部屋に追い詰め、これを仕留めた。同時刻、ピザ・タキに奇妙な訪問者の姿があったが……)
2016-12-28 23:04:24「注文すんの、しねえの?」タキは商品のケモコーラの栓を開けた。自分で飲むのだ。来訪者はクククと笑った。「別に、してもしなくてもいいんだよ」「ア?意味がわからねえ。病院は隣のブロックだ。間違えんな。見えるか?ゴクゴク、おい見えるか?ゴクゴク」タキは飲みながら通りを指差した。 1
2016-12-28 23:07:59「……そこの列は……」男はタキの手を掴み、グイと曲げて、オーブンに列をなす者達を指差させた。「……何だね?」「めんどくせえアホが来やがった」タキが言った。そして付け加えた。「あ、すまねえな。心の声と接客トークが逆になっちまった」「ンフフフフ!面白い」「ハハハハハ」 2
2016-12-28 23:10:40ペキ。と音がして、タキの手首がおかしな角度に曲がった。男が、折った。「俺が訊きたいのは……」男はグイグイとその指を動かし、なおオーブンに列為す客を指差させた。「アイエエエエエ!」「俺が訊きたいのはさ。あの列は何だ?ッて事……」「アイエエエエエエ!」「うるさいなあ、フフフフ」 3
2016-12-28 23:14:34「アイエエエエエ!」タキは絶叫し、首を振った。男は手を離さない。「やれやれ」「またタキだ」「やってるな」客は口々に囁き合い、苦笑した。「アイエエエエエ!何……しやがる!」「だから、そこの列、何?」「アイエエエエ!」「話にならない……」男は舌打ちし、椅子から立った。 4
2016-12-28 23:17:14「そこの!」「アバーッ!」「列は!」「アバーッ!」「何だ」「アバーッ!」「……ッて話なんだけど」男はタキの手を掴んだまま、リズミカルにスリケンを投擲し、オーブン前に並んでいた三人のこめかみを一人一人撃ち抜いて即死させた。「見ろ。全員死んじゃってワケがわからない」「アイエエエ!」5
2016-12-28 23:20:56ガタタ、と音をたてて、客が一斉に席を立った。男に銃を向けたのが二人。「アバーッ!」「アバーッ!」眉間を撃ち抜かれて死ぬ。そして出口へ飛び出そうとしたのが一人。「アバーッ!」後頭部を撃ち抜かれてうつ伏せに倒れ込む。そのワザマエ、もはや明らかにニンジャである事がわかった。 6
2016-12-28 23:24:35「て……てめェ」脂汗を垂らしながら、タキが男を見た。「ニンジャ……」「イヤーッ!」「アバーッ!」タキの身体がぐるりと回転しながら浮き上がり、カウンターに背中から叩きつけられた。「殺してない、殺してない……」男はようやくタキから手を離した。「俺の名前を知りたいか?」「畜生……」7
2016-12-28 23:28:22男は帽子を脱いでカウンターに置き、肩をすくめ、それからアイサツした。「ドーモ。アモクウェイブです」「ア……ア」タキが痙攣しながら呻いた。店内の生き残り客たちは攻撃も逃走も行う事ができず、凍りついて事態を見守っている。 8
2016-12-28 23:30:34既に彼は紫色を表面に波打たせる紺色のニンジャ装束姿となり、顔には鋼鉄のメンポを装着していた。「ンンン」彼は目を閉じ、力を込めた。客が息を呑んだ。店内に突如、ノイズで形作られたニンジャのストップモーションが出現したのだ。タキは痙攣している。アモクウェイブは客を見る。「知ってる?」9
2016-12-28 23:33:57客は三人残っていた。震えながら首を振った。アモクウェイブは目を細めた。そして言った。「に。ん。じゃ。す。れ。い。やー。知ってる?」「知らね……」「知……」客たちが呻いた。アモクウェイブは首を振った。「いいや」歩いていき、二人の頭をかち合わせて殺し、最後の一人を頭突きで殺した。10
2016-12-28 23:37:38アモクウェイブはカウンター上で痙攣するタキを振り返った。「いやあ、全員殺してしまった。こいつら、友達かね?常連かね?繁盛店かね?」「は……繁盛店」「そこで見栄を張らないでいい。サンズ・オブ・ケオス、知ってる?」「知……」「うん。知ってるな。その顔」「知……」「知っている」 11
2016-12-28 23:42:20アモクウェイブはケモコーラの瓶を取り、親指で栓を飛ばし、ノイズで形成されたニンジャに寄りかかって、メンポ呼吸孔からコーラを飲んだ。首筋をコーラが垂れた。「こいつはニンジャスレイヤー。名前も分かる。便利なジツなんだ……。ニンジャスレイヤーは、お前の店の……何だろうな。客か?」12
2016-12-28 23:45:27「て、てめェ……オレの店に手を出して、ソウカイヤのニンジャが黙ってねえ……」「ははは。ソウカイヤ」アモクウェイブはコーラをグイグイと飲んだ。「あんまり詳しくないんだが、じゃあ、お前を口封じで殺さなきゃまずいかね?」「ソウカイヤが黙ってねえところだが、何でも話すから助けてくれ」13
2016-12-28 23:50:15「いやいや。いいのか。友達を売るなよ」「客じゃねえし友達でもねえ」「いや、なにか繋がってるッて考えるのが自然なわけだよ」アモクウェイブは苦笑した。先ほど同様にキアイを込めると、彼の背後のノイズ・ビジョンは消え、奥へ向かう後ろ姿が生じた。「ほらな……店はこの階だけだろ?なのに」14
2016-12-28 23:53:53「奴は狂人だ……オレは脅されて、搾取されてるんだ。何でも話すから……」「友達は大事なんだ」アモクウェイブは諭すように言った。「お前のその態度はちょっと不快だ……」「友達は大事です!」タキが反応したが、アモクウェイブは無視して持論を開陳する。「友達っていうのは宝だよ」 15
2016-12-28 23:56:57「ニンジャスレイヤーはサツガイってやつの命を狙ってる!サンズ・オブ・ケオスはサツガイに会った連中の集まりだって事を奴は掴んでる。ときどきオレのところに……その……」タキは「オレにハッキングさせて構成員の」と言おうとして言葉を飲み込んだ。それでは自分に累が及ぶと思ったのだ。16
2016-12-29 00:00:53「サンズ・オブ・ケオスは……なんていうか……」アモクウェイブは遠い目をした。「共有……かな……体験のね……。サツガイね。そう。情報を交換したり、連絡を取り合って、一緒に旅行をしたり……バーベキューをしたり。いいだろ」「いいです」「気楽な関係で、お互いに支配も被支配も無くてさ」17
2016-12-29 00:04:13「気をつけてください」タキは呻いた。「サンズ・オブ・ケオスの方々は狙われています。マジに。何人も殺してるんです」「うん」アモクウェイブは頷いた。「気になってさ。普段から連絡取り合ってる事もないんだけど、どうも最近……居る奴が居ない。違和感。ジェイドマムシ=サンも?」「はい」18
2016-12-29 00:09:28「悲しい」アモクウェイブは笑った。「一度、奴にテルヤケをご馳走になった事がある。ペントハウスでね。ネオサイタマにはほとんど来たことが無いから、今回、帰りに会いに行こうと思ったのにな」「トラップマスター……=サンを殺しに行っています。今」「へえ、そうか。本気なワケだ」「はい」 19
2016-12-29 00:13:11「あのさ、なんで俺達を狙う?」アモクウェイブは目を輝かせた。「ウチにはいろんな奴がいる。組織もバラバラ。ただの私的な集まりだ」「サツガイじゃないッスかね。奴に恨みがあるんだと思うンだけど」「何にせよ……」アモクウェイブは息を吐いた。「消しとかないといけないな。アブナイから」20
2016-12-29 00:19:39